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何かと不穏です
第55話 エリオット様の手紙
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「…と言うわけで、何かのついでで良いので調べて貰えると助かります。」
「おう、了解!」
再びの休日、私はルーカスお兄様に頼み事をしていた。
というのも、例の私に関する噂について、ルーカスお兄様にも調べるのを手伝ってもらおうとしているのだ。
ルーカスお兄様は同年代での交友関係の広さは貴族の中でもトップクラス(ただし男性限定)なので、何かしら手がかりを持ってきてくれるに違いない。
さて、これで今出来そうなことはやったし、自分自身でも探りを入れつつ様子をみるとしよう。
まあ案外何もせずとも噂が収まるかもしれないけど。
「そういや、またシェリー宛に手紙が来てたぞ?いつものところに置いておいたからな!」
「ありがとうございます、確認しておきます。」
私はダイニングまで行き、私宛の手紙を回収する。自分以外宛の手紙が来た場合は重要なものを除いてここに置いておくのが我が家のルールだ。
手紙の送り主はエリオット様だった。
遠征に行ってからというもの、エリオット様は1週間に1回くらいのペースで私に手紙を送ってくる。
最初に手紙を見たときは何か調査で分からないことがあったのかと思ったけど、いざ手紙の中身を確認すると仕事とは直接無関係な、友人に送るような他愛のない内容だった。
具体的には "クラウゼ領に到着した" とか "シェリーは元気にしてるか" とか "なにか困り事はないか" とか "無理はするなよ" とかそんな内容だ。
私は今まで無理をした覚えはないんだけど、まあこれは手紙の定型文として書いたんだろうな。
それにしても私にだけ手紙を書くとは考えづらいし、他の女の子にも書いてるのか…?
だとすれば相当な労力と努力量だな…私の手紙には仕事の内容が割と詳しく書かれているけど、秘匿義務がある以上さすがに同じ内容を女の子達には書いてないだろうし、きっと一人一人違う内容を書いているに違いない。
さてそれは置いておいて、何かしら返事を書かないと。
何を書くか…研究所の仕事は概ねいつも通りだし、普段と違うことと言えば私の悪い噂が広まってることくらい…
いや、それを書くのはやめておこう。エリオット様関係ないし。
私は筆を取り、前回同様とにかく当たり障りのない文章をスラスラと書いていく。
そして書いた手紙を封筒に入れ、郵便局まで持ってきた。
ちなみにちょっとした伝達事項ならシュバルツ家専属の伝書バトに持たせればいいけど、今回のように封筒に入れて送る場合は伝書フクロウが必要だからそうはいかない。お父様が伝書フクロウを持っているけど、あれは基本公文書とかを送る用で、私の私的な手紙のために借りるのは忍びないのでやめておいた。
「さてと…」
私は郵便局に入ろうとする。
「あれ?あ、シェリーちゃんだ!」
すると、私の名前を呼ぶ女性の声が聞こえてきた。この声は確か…
「…セレナさん?」
「うん、久しぶり!」
忘れかけていたけど、セレナさんはいつぞやエリオット様と食事に行ったときにたまたま会った、エリオット様の"女の子"の中の1人だ。
一見友好的に見えるけど、前回会ったときは耳打ちで"勘違いするなブス"と言ってきたり、"アバズレが…"と呟いたりしていたので、全然そんなことは無い。
「何してたの?」
「知人から頂いた手紙の返事を書いたので、それを送ろうと思っていたところです。」
"エリオット様" という単語は避けながら答える。
「ふーん…ちょっと見せて!」
「あっちょっと!」
セレナさんは私から手紙を取り上げてマジマジと見る。その際"エリオット様へ"という文字もガッツリ見られてしまった。
「…はあ?何よこれ!?」
まあそうなりますよね…
―――――― 続く
「おう、了解!」
再びの休日、私はルーカスお兄様に頼み事をしていた。
というのも、例の私に関する噂について、ルーカスお兄様にも調べるのを手伝ってもらおうとしているのだ。
ルーカスお兄様は同年代での交友関係の広さは貴族の中でもトップクラス(ただし男性限定)なので、何かしら手がかりを持ってきてくれるに違いない。
さて、これで今出来そうなことはやったし、自分自身でも探りを入れつつ様子をみるとしよう。
まあ案外何もせずとも噂が収まるかもしれないけど。
「そういや、またシェリー宛に手紙が来てたぞ?いつものところに置いておいたからな!」
「ありがとうございます、確認しておきます。」
私はダイニングまで行き、私宛の手紙を回収する。自分以外宛の手紙が来た場合は重要なものを除いてここに置いておくのが我が家のルールだ。
手紙の送り主はエリオット様だった。
遠征に行ってからというもの、エリオット様は1週間に1回くらいのペースで私に手紙を送ってくる。
最初に手紙を見たときは何か調査で分からないことがあったのかと思ったけど、いざ手紙の中身を確認すると仕事とは直接無関係な、友人に送るような他愛のない内容だった。
具体的には "クラウゼ領に到着した" とか "シェリーは元気にしてるか" とか "なにか困り事はないか" とか "無理はするなよ" とかそんな内容だ。
私は今まで無理をした覚えはないんだけど、まあこれは手紙の定型文として書いたんだろうな。
それにしても私にだけ手紙を書くとは考えづらいし、他の女の子にも書いてるのか…?
だとすれば相当な労力と努力量だな…私の手紙には仕事の内容が割と詳しく書かれているけど、秘匿義務がある以上さすがに同じ内容を女の子達には書いてないだろうし、きっと一人一人違う内容を書いているに違いない。
さてそれは置いておいて、何かしら返事を書かないと。
何を書くか…研究所の仕事は概ねいつも通りだし、普段と違うことと言えば私の悪い噂が広まってることくらい…
いや、それを書くのはやめておこう。エリオット様関係ないし。
私は筆を取り、前回同様とにかく当たり障りのない文章をスラスラと書いていく。
そして書いた手紙を封筒に入れ、郵便局まで持ってきた。
ちなみにちょっとした伝達事項ならシュバルツ家専属の伝書バトに持たせればいいけど、今回のように封筒に入れて送る場合は伝書フクロウが必要だからそうはいかない。お父様が伝書フクロウを持っているけど、あれは基本公文書とかを送る用で、私の私的な手紙のために借りるのは忍びないのでやめておいた。
「さてと…」
私は郵便局に入ろうとする。
「あれ?あ、シェリーちゃんだ!」
すると、私の名前を呼ぶ女性の声が聞こえてきた。この声は確か…
「…セレナさん?」
「うん、久しぶり!」
忘れかけていたけど、セレナさんはいつぞやエリオット様と食事に行ったときにたまたま会った、エリオット様の"女の子"の中の1人だ。
一見友好的に見えるけど、前回会ったときは耳打ちで"勘違いするなブス"と言ってきたり、"アバズレが…"と呟いたりしていたので、全然そんなことは無い。
「何してたの?」
「知人から頂いた手紙の返事を書いたので、それを送ろうと思っていたところです。」
"エリオット様" という単語は避けながら答える。
「ふーん…ちょっと見せて!」
「あっちょっと!」
セレナさんは私から手紙を取り上げてマジマジと見る。その際"エリオット様へ"という文字もガッツリ見られてしまった。
「…はあ?何よこれ!?」
まあそうなりますよね…
―――――― 続く
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