上 下
29 / 122
研究員見習いになれました

第29話 他の課のお手伝い

しおりを挟む
「失礼します。」
「ん?ああジョセフくん、待ってたわ!」

私はジョセフさんにつれられて、人間魔法課の方たちの手伝いに来ていた。ちなみにエリオット様は騎士団に戻るとのことなので、そのまま解散して今はいない。

「あら、そっちのはどなた?」

最初に迎え入れてくれた、薄紫の髪に濃い紫色の瞳の女性に聞かれる。研究所で女性は初めて見た…!

「昨日から捜査課に配属になったシェルシェーレ・シュバルツです、よろしくお願いします!」
「ああ、あなたが例の面白い新米さんね!話はダグラスさんから聞いてるわ。」

面白いって…一体何を聞いたんだろう。

「私は捜査課の課長のエリーザ・アインホルンよ、よろしくね!」

この人が課長さんか!

「はい、よろしくお願いします!」

「それで、エリーザさん。私たちは何をすればよろしいですか?」

ジョセフさんが質問する。

「あ、そうだったわね。とりあえずそこの死にそうになってる人達に言われた通りに動いてくれるかしら?」

エリーザさんの目線を追うと、人間魔法課ここの所員と思われる人達が、憔悴しょうすいしきった様子で机に向かっていた。

確かにこれは猫の手も借りたい状態だろうな…

「はい、わかりました!」

――――――

「終わっったー!!」

1人が大声をあげた。日もすっかり沈んだ頃、ようやく仕事が終わったのだ。私とジョセフさんもその間ずっとお手伝いをしていた。

やたらと忙しいのは溜め込んでいた予算申請の書類の提出期限が迫っているかららしく、お手伝いの内容も実験の補佐というより書類の整理や書類の数字があっているかの確認、雑用などが多かった。

少し拍子抜けはしたけど、こういう頭をあまり使わない仕事も割と好きなので問題ない。

「いやいや、皆さんありがとうございました!」

人間魔法課の方が私とジョセフさん、エリーザさんに向かって言う。

「困ったときはお互いさまよ。」
「また何かあれば呼んでください。」
「楽しかったので良かったです!」

「そう言っていただけると嬉しいです。それにしてもシェルシェーレさん、随分と経理の仕事に慣れているようでしたが…」

ん?別に遅くも無いと思うけど、言うほど早くもなかったような…?

私が首を傾げると、その人はそのまま言葉を続ける。

「…その、女性でこういうことができる方って、エリーザさん以外にあまり見なかったもので…」

あーそういう。確かにこの手の仕事は"男の仕事"だもんな…

「時々父の仕事を手伝っているので、そのときに覚えたんです。」
「なるほど、そうでしたか。」

「なあに?女がお金の管理しちゃダメって言うの?」

ここへエリーザさんが口を挟む。

「いえいえ、決してそういう訳では!ただ普通いないじゃないですか、女性でこういう方って。」
「あら、私たちは普通・・じゃないって?」
「あ、いや、そうではなく…」

エリーザさんに詰められてその人は口ごもってしまった。

社交界に比べると教養のある女性への偏見が少ないこの研究所でも、多少の違和感を感じる人は一定数いるみたいだな。

…まあそんなことはどうでも良くて、仕事が終わったなら研究室の見学でもさせて貰えないかな、などと考えている私であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

もう、いいのです。

千 遊雲
恋愛
婚約者の王子殿下に、好かれていないと分かっていました。 けれど、嫌われていても構わない。そう思い、放置していた私が悪かったのでしょうか?

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...