5 / 122
婚約破棄されました
第5話 可愛い義妹
しおりを挟む
「おいしかったわ」
そういうと私は立ち上がった。
「あら、どこへ行くの?」
「えっと、少し用事がありますの」
そう言って私はダイニングを後にした。そして今向かっているのはリナの寝室だ。
いや、お節介なのは分かっている。分かってはいるけどどうにも気になってしまう。それに割と家族全員私の味方をしてくれそうな勢いなので(父と兄が"味方"と言っていいのかは微妙なラインだけど)、1人くらいリナのことを心配したってバチは当たらないはず。そもそも今の状況作ったの私だし。
そうこうしているうちにリナの寝室の前にたどり着いた。
コンコンッ!
「リナ、起きてる?」
「………」
「リナ…?」
あれ、寝てるのかな。
「開けちゃうわよー」
「ま、待ってください!」
あ、起きてた。ドア越しにリナの声が聞こえた。
「どれくらい待てばいいかしら?」
「え?いや、あの、その…」
うんそうだよね、待てばいいって問題じゃないよね。でもここで引き下がったらこの子一生出てこない気がする。
「やっぱりもう開けるわね」
「え…!」
ガチャッ!
半ば強引にドアを開けると、そこには顔に泣きじゃくった跡があり、髪はボサボサのままのリナの姿があった。思ったより酷い状態。そんなに思い詰めるようなことってあったっけ。
「あの…シェリーお姉様…」
リナは私に目も合わせずワナワナ震えている。とりあえずドアの前で突っ立っているのもあれなので、リナの寝室に入りドアを閉めてから室内のソファーに誘導し、横並びに座る。他人の寝室に勝手に入るなって?ごもっともだけど今は許してよ。
「どうしたの?リナ。ほら、ゆっくりでいいから思ってること話してみて。何言っても怒らないから。」
私はリナを抱きしめ背中をゆっくり撫でてあげる。するととりあえず震えは消えた。
しばらくすると、それまで黙って抱きしめられていたリナが口を開いた。
「…3日ほど前に、オスカル殿下から婚約しようと言われたんです。そのときはとにかく嬉しくて、舞い上がって…だから、ちゃんと確認してなかったんです。"シェリーお姉様と私、2人共と結婚なさるんですよね"って。」
「うんうん」
……うん?
「それで、昨日の舞踏会でオスカル殿下がシェリーお姉様に婚約破棄するって仰ったとき、初めてそのことを知ったんです。だから…っううっ…グスッ……ごめんなさいっ…こんなことになるなんて!」
あー…
…状況を整理しよう。
私はてっきりリナは元から私が婚約破棄されるのは知っていて、そのうえでオスカル殿下と結婚しようとしていたけど、後になって自分の行動を反省しだしたんだと思っていた。それならこちらも企みはある訳だし痛み分けになってちょうどいいだろうと思っていたんだけど…
実際はどうだ。リナは私と一緒に嫁入りするつもりだったと言うでは無いか。
確かに今回の場合、オスカル殿下に私と結婚するメリットはあまり無いけどデメリットもほとんどない。むしろ"婚約破棄した"という事実があると、真実と関係なしに変な噂が飛んで色々と面倒だから普通は避ける。そのためリナが勘違いしていたのもうなずける。
…要するに、完全にオスカル殿下の伝え忘れが原因?
正直前からオスカル殿下は馬鹿だなと思っていたけど、まさかここまでとは…いや、私も人のことは言えないか。
「あのね、リナ。あなたが謝ることなんて1つもないの。だって…」
私はリナに父には話さなかったことまで洗いざらい話した。出来れば隠し通すつもりだったけど、さすがにこんなになっているリナを前にして取り繕うのはあくどすぎる。
「そう…だったのですね…」
「ごめんね、こんなことになって…」
「いえ…グスッ…シェリーお姉様が大丈夫なら良かったです…」
うう、この子は何ていい子なのだろう。自分の恋心のためなら私のことは気にしなくなるだろうと考えていた私が甘かった。
罪悪感に打ちひしがれながら、優しい親と可愛い義妹に囲まれて自分は幸せ者だなと思った私であった。
そういうと私は立ち上がった。
「あら、どこへ行くの?」
「えっと、少し用事がありますの」
そう言って私はダイニングを後にした。そして今向かっているのはリナの寝室だ。
いや、お節介なのは分かっている。分かってはいるけどどうにも気になってしまう。それに割と家族全員私の味方をしてくれそうな勢いなので(父と兄が"味方"と言っていいのかは微妙なラインだけど)、1人くらいリナのことを心配したってバチは当たらないはず。そもそも今の状況作ったの私だし。
そうこうしているうちにリナの寝室の前にたどり着いた。
コンコンッ!
「リナ、起きてる?」
「………」
「リナ…?」
あれ、寝てるのかな。
「開けちゃうわよー」
「ま、待ってください!」
あ、起きてた。ドア越しにリナの声が聞こえた。
「どれくらい待てばいいかしら?」
「え?いや、あの、その…」
うんそうだよね、待てばいいって問題じゃないよね。でもここで引き下がったらこの子一生出てこない気がする。
「やっぱりもう開けるわね」
「え…!」
ガチャッ!
半ば強引にドアを開けると、そこには顔に泣きじゃくった跡があり、髪はボサボサのままのリナの姿があった。思ったより酷い状態。そんなに思い詰めるようなことってあったっけ。
「あの…シェリーお姉様…」
リナは私に目も合わせずワナワナ震えている。とりあえずドアの前で突っ立っているのもあれなので、リナの寝室に入りドアを閉めてから室内のソファーに誘導し、横並びに座る。他人の寝室に勝手に入るなって?ごもっともだけど今は許してよ。
「どうしたの?リナ。ほら、ゆっくりでいいから思ってること話してみて。何言っても怒らないから。」
私はリナを抱きしめ背中をゆっくり撫でてあげる。するととりあえず震えは消えた。
しばらくすると、それまで黙って抱きしめられていたリナが口を開いた。
「…3日ほど前に、オスカル殿下から婚約しようと言われたんです。そのときはとにかく嬉しくて、舞い上がって…だから、ちゃんと確認してなかったんです。"シェリーお姉様と私、2人共と結婚なさるんですよね"って。」
「うんうん」
……うん?
「それで、昨日の舞踏会でオスカル殿下がシェリーお姉様に婚約破棄するって仰ったとき、初めてそのことを知ったんです。だから…っううっ…グスッ……ごめんなさいっ…こんなことになるなんて!」
あー…
…状況を整理しよう。
私はてっきりリナは元から私が婚約破棄されるのは知っていて、そのうえでオスカル殿下と結婚しようとしていたけど、後になって自分の行動を反省しだしたんだと思っていた。それならこちらも企みはある訳だし痛み分けになってちょうどいいだろうと思っていたんだけど…
実際はどうだ。リナは私と一緒に嫁入りするつもりだったと言うでは無いか。
確かに今回の場合、オスカル殿下に私と結婚するメリットはあまり無いけどデメリットもほとんどない。むしろ"婚約破棄した"という事実があると、真実と関係なしに変な噂が飛んで色々と面倒だから普通は避ける。そのためリナが勘違いしていたのもうなずける。
…要するに、完全にオスカル殿下の伝え忘れが原因?
正直前からオスカル殿下は馬鹿だなと思っていたけど、まさかここまでとは…いや、私も人のことは言えないか。
「あのね、リナ。あなたが謝ることなんて1つもないの。だって…」
私はリナに父には話さなかったことまで洗いざらい話した。出来れば隠し通すつもりだったけど、さすがにこんなになっているリナを前にして取り繕うのはあくどすぎる。
「そう…だったのですね…」
「ごめんね、こんなことになって…」
「いえ…グスッ…シェリーお姉様が大丈夫なら良かったです…」
うう、この子は何ていい子なのだろう。自分の恋心のためなら私のことは気にしなくなるだろうと考えていた私が甘かった。
罪悪感に打ちひしがれながら、優しい親と可愛い義妹に囲まれて自分は幸せ者だなと思った私であった。
0
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる