乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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第111話 作戦

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時を遡ること、2週間前。

「……わかった。じゃあ、色々と対策立てないとね。現時点で考えてることはある?」

「では、私の方から再び説明させていただきます。まず、敵勢力の索敵と非幹部の確保は、第2騎士団の者たちに行わせます。」

「第2騎士団……生徒たちと一緒に現地まで行ってくれるってことかな?」

「いえ、彼らは前日から現地で行動してもらう予定です。その方が準備時間も増えますから。」

「なるほど。でもそれだと、モロクの人間が警戒して逃げちゃって、捕まえられない可能性がない?」

「もちろん逃げ出す者もいるでしょう。しかし、今回こちらが送る戦力は、幹部以上を確保するには不十分です。ある程度以上の力を持つ者は、気にせず襲撃を決行するでしょう。」

「そういうことね、わかった。索敵はどうやってやるの?」

「それは、これらの魔導具を使います。」

ランドルドはソファの端に置いてあった大きな箱をテーブルの上に載せ、蓋を開ける。

「メインは3種類で、1つ目は小型で持ち運び可能な電話、2つ目は対象者の居場所が分かる地図、3つ目は呪力を視るための眼鏡です。」

「眼鏡で呪法師を見つけて、地図と電話で他の人に知らせようってことね。」

「その通りです。しかしそれぞれの魔導具には欠点もありまして……」

「欠点?」

「ええ、まず地図ですが、対象者にはこれを持たせる必要があります。」

そう言ってランドルトが取り出したのは、ピンポン玉くらいの大きさの透明な石だった。

「このサイズの石を敵にバレずに持たせることはほぼ不可能ですので、地図で追えるのは実質味方だけです。」

「じゃあ、地図を使うにはこの石を騎士たちに持たせて、さらにその騎士に敵の自分からの位置を教えてもらう必要があるってことね。」

「その通りです。そして眼鏡の方は、単純に精度が良くないので、呪力量が少なすぎると反応しません。逆に、幹部以上の呪力量の多い者は、その優劣の区別は難しいと思われます。」

「うーん……まあ、幹部は目視でも確認してなんとか区別をつけるしか無いかな。むしろ、呪力が少ない場合の方が厄介だね。」

「はい。そういう者は実力からして、事情を知っている我々が遅れを取ることはあまりないでしょうが、他の生徒が襲われると厄介です。」

「……じゃあ先生と生徒にも協力者をいくらか頼んで、キャンプ場の警備を手伝ってもらおうか。信用できる人にだけ頼めば混乱も起きづらいでしょ?」

「誰を協力者にするつもりだ。」

ラクアが尋ねる。

「個人的な偏見強いけど……ロペス先生と、アランとマリーかな。ロペス先生とアランはベークマンが襲われた件でちょっと事情知ってるし、マリーもシャーロット嬢の素性を探るのに一役買ってもらったから。」

「ふむ……いいだろう。」

「では、ロペス先生の方には私から連絡しておきましょう。アゴーニ様とスオーロ嬢には、カナ様からお願いできますか?」

「うん、分かった。……となると後の大きな問題は、幹部の対処をどうするか、だね。」

「先日捕らえた男と、例の御方から頂いた情報を照らし合わせると、幹部はボスを含めて6人いるそうです。捕らえた男がそのうちの1人でしたから、残りは5人となります。」

"例の御方"というのは、大司教のことだ。

「じゃあ、ボスと髭面の男以外にもまだ3人いるってことね。」

「はい。とはいえその3人は比較的戦闘能力が低い上、最近はモロクの活動自体に懐疑的だったようです。」

「じゃあ、そもそも来ない可能性もあるってことね。もし来た場合、騎士団だけで対処できると思う?」

「戦力的には可能かと。」

「ふむ……じゃあ基本的には騎士団に任せよう。となるとやっぱり、ボスと髭面の男が来た場合の対処の話になってくるね。」

「……ボスは、俺が請け負う。」

すると、ラクアが口を開く。

「私は髭面の男かな。じゃあ」

「お、お待ちください!」

ランドルトが慌てた様子で会話に割り込む。

「お2人とも、直接戦われるおつもりですか!危険すぎます!」

「でも、そういう作戦でしょ?」

「確かにいざというとき戦闘になる可能性も考慮はしていますが……あくまで我々は囮で、騎士に対処させる前提で……!」

「勝てないよ、騎士たちじゃ。」

「それならなおのことです!騎士が勝てない相手に、戦闘経験のない我々が挑むなど無謀です!」

「近年の騎士団の役回りは警備や災害支援が主で、戦闘経験が乏しいのは奴らも同じだ。であれば魔力量の高い我々の方がまだ勝機はある。」

「……」

ランドルトは開きかけた口を固く閉じ俯く。本人も薄々感じていたことではあるのだろう。

「……エルマー。」

ラクアは座ったまま軽く前かがみになり、ランドルトと視線を合わせる。

「俺と、お前自身の力を信じろ。」

「……はい。」

ランドルトは小さく頷いた。

「決まりだね。」

「他に懸念点はあるか。」

ラクアは私に視線を移す。

「えっと、懸念点というか、お願いが1つあるんだけど……」

「言ってみろ。」

「ジークが危ない目に合わないようにしてほしいんだ。そしてできれば、彼を今回の件に関わらせないようにしてほしい。特に、私がやろうとしていることには、ね。」
 

「ちなみに、それには何か理由が?」

ランドルトが少し首を傾げる。

「ごめん、詳細はちょっと話せない。言えるのは、ジークを守ることが私の一番大きな目的だからってことだけ。」

「……分かった。ジーク・ロバンの安全は保障しよう。」

「ありがとう、ラクア。」

 

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