乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

文字の大きさ
上 下
109 / 115
転変

第109話 王族と騎士 side ジーク

しおりを挟む
「はーいみなさん!もうすぐキャンプファイヤーが始まります!参加希望者はキャンプ場の中央まで集まってくださいね~」

食事を終えてから1時間ほど経ち、キャンプファイヤーが始まろうとしていた。

「うーん……」

「ん、どうしたジーク?」

唸っているジークを見かね、アランが声をかける。

「カナとマリー、遅いなーって思って……」

「あ、ああ、そういやそうだな?……2人とも他クラスの方にでも顔出してるんじゃねえか?なんやかんや顔広そうだしな。」

「うーん、そうかな……」

ジークは依然として納得がいっていない様子である。

「……はどうなっている。」

「はい……は、順調……」

「……?」

すると、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

ジークは声のする方を向くと、そこには真剣な顔で颯爽と歩くラクアとランドルトの姿があった。

「ごめんアラン、僕もちょっと用事できちゃった!」

「あ、おいジーク!?」

ジークは、次の瞬間には2人の元へと駆け出していた。

───────

「ハア……ねえ、ラクア、ランドルト!」

ジークは2人のもとまで追いつくと、少し息を切らしながら呼び止めた。

「……何の用だ。」

ラクアは一瞬眉をひそめてから、落ち着いた口調で答える。

「ねえ、カナがどこにいるか知らない?食事が終わった辺りから姿が見えないんだ!」

「残念ながら、我々はお会いしていませんね。食事後というとせいぜい1時間ほどしか経っていませんし、他のご友人の元へと行かれているだけなのでは?」

続いてランドルトが答える。

「いや……うん、そう考えるのが普通なんだけど……ここ1, 2週間くらい、カナの様子がちょっとおかしいんだ……だから心配で……」

「……」

ジークの語気は弱まり、下を向く。

一方のランドルトは返答に困り、ラクアの顔色を伺う。

「人間、調子の悪くなることぐらいあるだろう。」

再びラクアが口を開く。

「そうなんだけど……ねえ、2人は何か知ってるんじゃない?何か隠してることはない?」

ジークはラクアとランドルトを真剣な眼差しで見つめる。

「はあ、全く……」

ラクアは大きくため息をつく。

「ラクア様、」

「問題ない。」

ランドルトはラクアを静止しようとしたが、ラクアはさらにそれを遮る。

「大元の約束をたがえるつもりはない。」

「……わかりました。」

2人は小声でやり取りをする。

「……?」

ジークは2人の会話の内容が聞き取れなかったようで、少し訝しげに2人を伺う。

「カナ・ベルナールは、現在我々とある敵勢力を退けるための協力関係にある。」

「敵勢力……?」

「詳細を外部の人間に話すわけにはいかないが、結論から言えば、今夜その敵勢力から学院の生徒が襲撃される可能性がある。我々はこれを迎撃し、連中を捕らえる予定だ。」

「そんな危ないことを、3人だけで?」

「無論、協力者は他にもいる。……貴様の父親の部隊とかな。」

「それって、第二騎士団の人たちも来てるってこと?気が付かなかった……」

「混乱を避けるため、生徒には接触しないよう命令してある。」

「そっか……でも、それなら騎士団の人たちに全部任せればいいんじゃない?あの人たちならきっと……」

「残念ながら、それだけでは不十分であると考えています。」

ここで、ランドルトが発言する。

「騎士団は本来、国家間の戦争等、大規模な戦闘を想定して訓練されています。ですから今回のような、少数による奇襲にはかえって対応しきれない可能性が高いのです。」

「その抜け・・を補うためには、ターゲットとなっている我々自ら対処するのが確実だと判断した。」

「それは……分かったよ。じゃ、じゃあ、カナは何をしてるの?危ないことしてない?」

「……奴の主な役割は魔力視等を用いた索敵だ。よほど運が悪いか、自ら突っ込みにでも行かない限り、敵に接触することは無い。」

「……」

「そっか……なら良かった……」

ジークは胸を撫で下ろす。

「と言う訳で、気は済んだだろう。キャンプ場に戻れ。」

ラクアはそう言うと、キャンプ場とは反対方向に足を向け、歩き出す素振りを見せる。

「ま、待って!」

ジークは再び2人を呼び止める。

「……まだ何かあるというのか。」

ラクアはジークを睨みつける。

「……っ!」

ジークは一瞬怖気づくが、すぐに気を取り直す。

「ラクアにも役割があるんでしょ!だったら僕にもそれを手伝わせて!」

「却下だ。話にならん。」

ラクアは先程の比較的穏やかな態度とは一転、吐き捨てるように言う。

「なんでよ!学院の生徒が狙われててそれを阻止するっていうなら、僕だって」

「俺の役割は他とは訳が違う……!何も知らない貴様には関係の無いことだ!」

ラクアはさらに声を荒らげる。

「分かってるよ!王族だから、他の生徒とはさらに別の理由で狙われてるんでしょ!だからそれを逆手にとって、自ら囮になって脅威を減らすつもりでいる……違う?」

「……っ!」

ラクアは、ジークからの想定外に鋭い指摘に言葉を詰まらせる。

「だったら、僕だって無関係じゃないよ……だって、こう見えても騎士団長の息子だよ!確かに、今は全然騎士になるための勉強はできてないし、お父さんからも仕事について教えてもらえてないけど……でも、同い年の君達がこうして頑張ってるのに、黙って見てることなんてできないよ!」

ジークはじっとラクアの目を見る。

「……」

ギリッ

ラクアは歯ぎしりをする。

「ラクア様……」

ランドルトは心配そうにラクアを見つめる。

「……分かった。」

ラクアは肩の力を抜き、観念した様子で口を開く。

「ただし、条件が2つある。1つは、俺の命令は必ず従うこと。もう1つは、貴様自身の命を最優先にすることだ。我々に貴様の安否を100%保証する力は無い。だから自力で死んでも生き抜け。」

「……!うんありがとう、約束するよ!」

ジークはパーッと目を輝かせる。

「……では、先を急ぐぞ。時間が迫っている。」

こうして、ラクア、ランドルト、ジークの3人は、森の奥地へと消えていった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜

ネリムZ
ファンタジー
 唐突にギルドマスターから宣言される言葉。 「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」  理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。  様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。  そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。  モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。  行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。  俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。  そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。  新たな目標、新たな仲間と環境。  信念を持って行動する、一人の男の物語。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

僕と精霊 〜魔法と科学と宝石の輝き〜

一般人
ファンタジー
 人類が魔法と科学の力を発見して数万年。それぞれの力を持つ者同士の思想の衝突で起きた長き時に渡る戦争、『発展戦争』。そんな戦争の休戦から早100年。魔法軍の国に住む高校生ジャン・バーンは精霊カーバンクルのパンプと出会いと共に両国の歪みに巻き込まれていく。

処理中です...