乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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第108話 最後の晩餐

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「あ、カナ!料理できたよ!」

私がキャンプ場へと戻ると、ジークが出迎えてくれた。私はジークに手を引かれ、自分たちの斑のテーブルへと導かれる。

「カナ!」

テーブルまで行くと、アランと一緒に紙皿を並べているマリーの姿があった。

「マリー、体調は大丈夫そう?」

「ええ、バッチリよ!何も問題は無いわ。」

「そう、それは良かった。」

「よーし、カナさんも来たことだし、晩飯にしようぜ!」

「うん」

こうして、キャンプ場での夕食の時間となった。テーブルには魚のアクアパッツァや山菜の揚げ物を始めとした、豪勢な料理が並んでいた。とても学生のキャンプの料理とは思えない。実際にここまで豪華な料理を用意しているのは我々くらいなようで、他の斑の生徒たちがチラチラとこちらを伺っている。

「それじゃあ、カナも来たことだしたべよっか!」

こうして、豪華な晩餐が始まった。

「すっごい美味しい!流石だねアラン!」

ジークは目の前の料理を次々紙皿に取っては、一瞬で口へと運んでいく。

「へっ、まあな。」

アランは満更でもなさそうな反応だ。

「アランって、お菓子作りだけじゃなくて料理もうまいんだね。」

「ん?ああ、元々道場のまかない作ってるおふくろの手伝いし始めたのがきっかけだからな。むしろ菓子作りはあとから始めたんだよ。」

「なるほど、そういうことだったんだ。」

「カナ、こっちも美味しいよ!食べる?」

すると、隣に座っていたジークがパスタの載った皿を差し出してきた。ちなみに麺や米、調味料等は事前に用意して持ってきたものである。

「うん、いただくよ。」

私はジークの持つお皿からいくらか自分の紙皿に取り分け、そのまま口に運んだ。

「うん、おいしい。」

「良かった!実はね、これ僕が作ったんだ!」

「ジークが?……なんでもできるね、ジークは。」

「ヘヘっ……それほどでも~」

ジークは満更でもなさそうだ。

「でも、これジェノベーゼだよね?私は好きだけど、キャンプの料理にしてはチョイスがちょっと渋くない?」

ちなみにジェノベーゼは、バジルソースで味付けしてある緑色のやつである。私はこのジェノベーゼがパスタの中ではかなり好きだ。

「それはえっと……カナが喜ぶんじゃないかと思って……」

ジークはやや消え入りそうな声で、少し目をそらして答える。そういえば、好きな食べ物の話をしたときにそんなことを話した気がする。

「……ありがとう、嬉しいよ。」

「……!良かった!」

ジークは顔を上げ、ニコッと笑う。

そのやり取りを、アランとマリーは暖かく、しかし若干複雑な表情で見守っていた。

────────

「ふう、もうお腹いっぱい!」

「ええ、どれも美味しかったわ!」

「ごちそうさま。……さて」
 
豪華な料理の数々を残さず平らげ、片付けの時間となった。

「じゃあ色々準備してもらったし、片付けは私がやろうかな。」

「お、頼んだ!」

ジャー

私は席を立ち、皿洗い用の桶に水を貯める。

「あ、じゃあ皿運ぶのだけ……」

「ああいや、問題ないよ。ただちょっと離れといてもらえる?まだちょっと慣れてないから濡れちゃうかも。」

「……?」

アランとマリーは不思議そうに、ジークは何かを察したのかニコッと笑ってから後ろに下がる。

「よっと」

カチャカチャカチャ!

私は3人が近くにいないことを確認すると、魔法で水を操り、テーブルの上の皿をまとめてすくい上げる。

そして、魚の骨や僅かな食べ残しはゴミ箱へと捨て、食器を桶に入れ、洗剤を足して水流を作って洗う。

「すっげー便利!羨ましい!!」

アランが声を上げる。

「でしょ。」

私は2分ほどで食器を洗い終え、乾燥用の棚に綺麗に並べた。

「よし……えっと、このあとは自由時間だったよね?」

「ええ。あとは、任意参加でキャンプファイヤーがあるわ。」

「そうか……ごめんマリー、一瞬いい?」

「……ええ、もちろんよ!」

私はマリーを連れ、キャンプ場の端の方へと移動した。

「……」

───────────

「ごめんねマリー、わざわざ呼び出して。」

「謝ることなんて1つもないわ。……それで、例の件についてよね?」

「うん、現時点で何か気づいたことはある?」

「そうね……今のところ目立った動きはないように思うわ。ただ、なんとなく見られてるような感覚があったのよね……この眼鏡で確認しても何も見えなかったけれど。」

「うーん、それはちょっと怖いね。ターゲットの中には潜伏能力に長けてる人間もいる可能性があるから。まあ、トラップと警備は用意してあるから、それで防げるはずだけど……」

「警戒するに越したことはないわね。1人の力だと限界はあるけれど……アランさんもいるし、やれることはやってみるわ!」

マリーは軽くガッツポーズをしてみせる。

「ありがとう、助かるよ。じゃあ、そろそろ戻ろうか。」

「ええ。……ねえカナ、私達は事情をすべて知っている訳ではないけれど……どうか無理はしないでね。」

「うん、わかってる。」
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