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転変
第107話 準備
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「いやあ、豊作豊作!」
ジークはかごから溢れるばかりの山菜類を抱え、ご満悦の様子である。
「そうだね。途中から林間学校というより、市場の職場体験みたいになってたけど……いや最初に変なことし始めたの私だけどね。」
「まあまあ、僕ら班員2人居なかったから、仕方ないってことで!」
「そうだね。」
「そういえば、2人はどこだろう?マリーそんなに具合悪かったのかな?」
「うーん、どうだろう。もしかしたら、別行動で食材探しに行ってるかも。そもそも、私達の場所ちゃんと伝えてなかったし。」
「あ、それもそっか……じゃあきっとそうだね!」
「うん。」
……
今は夜の拠点となるキャンプ場まで移動中だが、まだ距離があるにも関わらず話が途切れる。
「……ねえ、カナ?」
「ん?」
「その……もし言いづらいことなら無理に言わなくていいんだけどさ、何か僕に隠してることない?」
「……どうしてそう思ったの?」
「なんとなくなんだけど……最近ラクアとかアランとかとよく真剣な顔で話してるところ時々見かけるから……それにこの前の期末テスト、調子よくなかったでしょ?」
実は、今から1週間ほど前、私達は2回目の期末テストを迎えていた。
結果はジークは学年3位だったのに対し、私の結果は前回の2位から大きく下がり15位だった。
「ああまあ、期末テストに関しては前回がたまたま調子良かっただけだよ。」
「うーん……そうなのかもしれないけど……」
ジークはどうやらあまり納得がいっていないようだ。
「とにかく、無理だけはしないでね?」
「うん、分かったよ。」
そうこうするうちに、キャンプ場が見えてきた。
「おーい!」
すると、私達をみつけたアランが小走りでやってきた。
「アラン!マリーは大丈夫だった?」
ジークが問いかける。
「おう!十分休めたって言うから、一緒に近場で山菜だけ取ったあと、料理の準備始めて待ってたぜ。」
「助かるよ。」
「で、何とってきたんだ?……お、この魚うまそうだな!しかもでけえ!」
「カナがとってくれたんだ!水魔法でザバーンと!」
「流石だなあ……よし、じゃあ料理は任せとけ!」
「わーい!」
「そしたら、ちょっとだけやることあるからこれ任せてもいい?」
私は手に持っていた食材をアランに渡す。
「おお、いいぜ。じゃあジーク、料理の手伝いだけ頼んだ!」
「うんわかった!」
「多分1時間くらいはかかるから、カナさんはそれまで自由にしてていいぜ。」
アランがニカっと笑う。
「わかった、ありがとう。じゃあお言葉に甘えて休憩してくるよ。」
私は食材の調理をアランたちに任せ、一人で私達のクラスのテントとは別方向に移動した。
───────────
「お疲れ様です、ベルナールさん」
私はキャンプ場から100mほど離れた場所まで移動すると、その場にいた人物に声をかけられた。彼は鎧を纏い、黒縁の眼鏡をかけている。
「お疲れ様です。今のところ問題はありませんか?」
「はい。現時点では5名発見し、うち3名は我々で確保しました。残りの2名は"リスト"にあった人物である可能性が高いため、接触はせず尾行させています。」
「なるほど……尾行している2人は、具体的に誰か検討はついていますか?」
「恐らく一人は、ベルナールさんが以前接触した男です。もう一人は不明ですが、呪力量が捉えた3名に比べ突出しているため、幹部以上の存在で間違いないと思われます。」
「分かりました。では、2人の大まかな位置を教えていただいてよろしいでしょうか?」
「はい。」
騎士は手に持っていた地図上で動いている点を見ながら、2人のいる方角と距離を教えてくれた。
「他に敵勢力がいる可能性はあると思いますか?」
私は騎士に尋ねる。
「組織だった襲撃でない以上、判断が難しいですが……もとのモロクの勢力を考えると、5人だけというのは違和感が拭えません。まだ息を潜めている者がいると考えておいたほうが良いと考えます。」
「なるほど、ありがとうございます。それでは、引き続きよろしくお願いします。」
「承知いたしました。」
騎士は敬礼し、その場を立ち去る私を見送った。
ジークはかごから溢れるばかりの山菜類を抱え、ご満悦の様子である。
「そうだね。途中から林間学校というより、市場の職場体験みたいになってたけど……いや最初に変なことし始めたの私だけどね。」
「まあまあ、僕ら班員2人居なかったから、仕方ないってことで!」
「そうだね。」
「そういえば、2人はどこだろう?マリーそんなに具合悪かったのかな?」
「うーん、どうだろう。もしかしたら、別行動で食材探しに行ってるかも。そもそも、私達の場所ちゃんと伝えてなかったし。」
「あ、それもそっか……じゃあきっとそうだね!」
「うん。」
……
今は夜の拠点となるキャンプ場まで移動中だが、まだ距離があるにも関わらず話が途切れる。
「……ねえ、カナ?」
「ん?」
「その……もし言いづらいことなら無理に言わなくていいんだけどさ、何か僕に隠してることない?」
「……どうしてそう思ったの?」
「なんとなくなんだけど……最近ラクアとかアランとかとよく真剣な顔で話してるところ時々見かけるから……それにこの前の期末テスト、調子よくなかったでしょ?」
実は、今から1週間ほど前、私達は2回目の期末テストを迎えていた。
結果はジークは学年3位だったのに対し、私の結果は前回の2位から大きく下がり15位だった。
「ああまあ、期末テストに関しては前回がたまたま調子良かっただけだよ。」
「うーん……そうなのかもしれないけど……」
ジークはどうやらあまり納得がいっていないようだ。
「とにかく、無理だけはしないでね?」
「うん、分かったよ。」
そうこうするうちに、キャンプ場が見えてきた。
「おーい!」
すると、私達をみつけたアランが小走りでやってきた。
「アラン!マリーは大丈夫だった?」
ジークが問いかける。
「おう!十分休めたって言うから、一緒に近場で山菜だけ取ったあと、料理の準備始めて待ってたぜ。」
「助かるよ。」
「で、何とってきたんだ?……お、この魚うまそうだな!しかもでけえ!」
「カナがとってくれたんだ!水魔法でザバーンと!」
「流石だなあ……よし、じゃあ料理は任せとけ!」
「わーい!」
「そしたら、ちょっとだけやることあるからこれ任せてもいい?」
私は手に持っていた食材をアランに渡す。
「おお、いいぜ。じゃあジーク、料理の手伝いだけ頼んだ!」
「うんわかった!」
「多分1時間くらいはかかるから、カナさんはそれまで自由にしてていいぜ。」
アランがニカっと笑う。
「わかった、ありがとう。じゃあお言葉に甘えて休憩してくるよ。」
私は食材の調理をアランたちに任せ、一人で私達のクラスのテントとは別方向に移動した。
───────────
「お疲れ様です、ベルナールさん」
私はキャンプ場から100mほど離れた場所まで移動すると、その場にいた人物に声をかけられた。彼は鎧を纏い、黒縁の眼鏡をかけている。
「お疲れ様です。今のところ問題はありませんか?」
「はい。現時点では5名発見し、うち3名は我々で確保しました。残りの2名は"リスト"にあった人物である可能性が高いため、接触はせず尾行させています。」
「なるほど……尾行している2人は、具体的に誰か検討はついていますか?」
「恐らく一人は、ベルナールさんが以前接触した男です。もう一人は不明ですが、呪力量が捉えた3名に比べ突出しているため、幹部以上の存在で間違いないと思われます。」
「分かりました。では、2人の大まかな位置を教えていただいてよろしいでしょうか?」
「はい。」
騎士は手に持っていた地図上で動いている点を見ながら、2人のいる方角と距離を教えてくれた。
「他に敵勢力がいる可能性はあると思いますか?」
私は騎士に尋ねる。
「組織だった襲撃でない以上、判断が難しいですが……もとのモロクの勢力を考えると、5人だけというのは違和感が拭えません。まだ息を潜めている者がいると考えておいたほうが良いと考えます。」
「なるほど、ありがとうございます。それでは、引き続きよろしくお願いします。」
「承知いたしました。」
騎士は敬礼し、その場を立ち去る私を見送った。
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