乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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第103話 手がかり③

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「捕まえた男は、モロクの今後の予定についてなんて言ってたの?」

「どうやら今からちょうど2週間後、共和国のスパイに扮したモロクのメンバーが、一斉に魔術学院の生徒を襲撃する予定だったようです。」

「襲撃……学院の敷地内に侵入するってこと?」

「おや、ご存知ないですか。2週間後は、1年生の林間学校の日です。」

「林間学校……そういえば先生が言ってた気がするな。確か、王国北部の湖まで行くんだっけ?」

王国の北部はあまり開発が進んでおらず、馬車で小一時間移動すればそこは広大な森林地帯である。また、今回向かう湖は王都から馬車で半日ほどの場所にあり、周りを1週するのに歩きで半日はかかるほどの大きさだ。

「ええ。昼はフィールドワーク、夜はテントで一泊し、翌日の朝には出発予定です。」

「自由行動が多いうえに野宿か……そのときモロクが来たらひとたまりもないね。」

「おっしゃる通り、警備体制が整っており強固な魔法結界が張られている学院の敷地と違い、外ではどうしても隙ができます。戦力先生達もそれなりにはいますが、モロク相手に被害を出さないというのは厳しいでしょう。」

「うーん……」

私は少々考え込む。

「……こっちがモロクの思惑に気付いた今、モロクは予定通り動くと思う?林間学校での襲撃がボスの指示だったのなら、指示が取り下げられて襲撃が決行されない可能性も……」

「その可能性は低いだろう。」

ここで、今まで静かに話を聞いていたラクアが口を開く。

「高魔力の子どもをターゲットにしている以上、林間学校が恰好の狙い目であることに変わりはない。この機を逃さず実行に移す者は多いだろう。しかし、奴らがボスの指示なしで連携を取れるとは思えん。組織というより、複数の個による襲撃を警戒したほうがいいだろう。」

「確かにそうか……林間学校自体無くすことはできない?」

学院の外に大量の生徒が一度に出ることは、モロクに対し餌を撒いているようなものだ。この状況で林間学校を開催するのはかなりリスキーだ。

「ラクア様の権限の元であれば、可能か不可能かでいえば可能です。しかし、中止に対し理由を説明すれば余計ナ混乱を招きますし、しなければ生徒たちの親……貴族たちから反感を買うでしょう。それに、林間学校がなくなれば、次はいよいよモロクの動向がつかめなくなる恐れがあります。それよりは……」

「林間学校を餌にしておびき寄せて、今回でケリをつけようってことね。」

私はラクアの方に視線を移す。

「ああ。」 

ラクアは強い決意の籠った目で真っ直ぐに私を見据え、首を縦に振る。リスクは承知の上、か。

「……わかった。じゃあ、色々と対策立てないとね。現時点で考えてることはある?」

「では、私の方から再び説明させていただきます。まず……」

その後、ランドルトから林間学校の詳細な日程や、現時点でのモロク迎撃へ向けた計画について説明を受けた。

それを踏まえて3人で詳細を詰めていった。

──────────

「さて、とりあえずこんなものかな。残りは各々の課題ということで。」

私は座っていたラクアの向かいのソファから立ち上がる。

「ああ。」

「じゃあ、また何かあったら連絡してね。」

私は部屋を出ようと扉に手をかける。

「ベルナール。」

すると、ラクアに呼び止められた。この人、私の名前覚えてたんだ……

「ん、なに?」

「今更だが……今回の件、ここで降りるつもりはないか。」

ラクアは、再び真剣な眼差しで問いかける。

「……ほんとに今更だね。ここまで来たら引き返すつもりはないよ。」

「それはお前自身の意志で、だな。」

「……」

なるほど。私が首を突っ込みすぎた手前、戻るに戻れなくなってないか確認してくれたってことね。

「うん、もちろん。」

計らいはありがたいが、私の意志は揺るがない。

「……そうか。では引き続き頼む。」

「うん、それじゃあ。」

私は部屋をあとにした。
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