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転変
第98話 繋がる点と点②
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「……モロクだ」
「え……?」
「何かご存知ですか、ベルナールさん。」
ここまで静かに話を聞いていた警備隊員が口を開く。
………
「はい。実は、私と協力者数名で別の事件の黒幕と思われる組織を追っているのですが……その組織の紋章が、この男の腕に描かれているものと同じです。」
「なるほど……それが"モロク"という組織ということですか。」
「はい。モロクについてはまだ詳細を調査中ですが、今回の件も踏まえると、何か目的を持って動いているのは間違いないでしょう。」
「モロクについて、現時点で分かっていることを教えて頂いてもよろしいですか?」
「はい。まず……」
私は大司教様やエドガス様との会話で得られた情報を、頑張れば誰でも手に入りそうな範囲で伝えた。エドガス様くらいの年代になるとある程度知っていることもあるようだが、この警備隊員はそれに比べると若いので、知らないのも致し方ない。
「なるほど……」
警備隊員は考え込む。
「……わかりました、情報提供ありがとうございます。こちらの方でも調査を進めましょう。その"協力者"の方々が誰なのかお教えいただく事はできますか?できることなら今日我々もその方々と連携しておきたい。」
彼の言い分はもっともだ。
「おそらく大丈夫だと思いますが、一応向こうの了承も得たいので、本人らに確認して、問題なさそうなら本人たちから皆さんに直接連絡してもらえないか頼んでみます。」
協力者のメンツがメンツなので、軽々しく素性を話す訳にはいかない。
「ありがとうございます、助かります。私たちでもわかったことがあれば、なるべく早急にお伝えします。」
警備隊員は丁寧に頭を下げる。
「では、今日はもう遅いですから、お帰りください。もしものこともありますので、寮まで警備隊の方でお送りいたします。」
すると、奥で待機していた警備隊員が立ち上がる。彼が送ってくれるのだろう。
「わかりました。お願いします」
モロクの動向がわからない以上、移動の1つにも警戒する必要がある。ノアさんもいることだし、私はお言葉に甘えることにした。
─────────
「大変なことになっちゃったね……」
寮まで無事帰還した私達は、もう夜遅いので、女子寮の自分たちの部屋へと向かっていた。
「そうだね。まあでも、警備隊も最優先で捜査してくれるみたいだし、心配いらないよ。」
「うん……あ、そうだ。ベークマン君のお見舞い行ってきたんだよね?大丈夫だった……?」
ノアさんは少し不安そうな声を出す。
「うん、大丈夫そうだったよ。むしろ元気すぎて暴れてた。」
「そっかあ……よかった……」
ノアさんはふーっと息を吐き、安堵の表情を浮かべる。普通"暴れてた"とか言ったらむしろ引きそうだが、本気でベークマンの安否を心配していたのだろう。
「ノアさんもお見舞い行ってあげなよ。喜ぶ……かは分かんないけど、ベークマンも自分が助けた子の安否くらいは知りたいかもしれないし。」
「うん!……あ、私の部屋ここなんだ!じゃあまた明日、おやすみ!」
「うん、おやすみ……あ、ノアさん」
「ん?なに?」
「これから1週間くらい、ひとりで外出しないようにできる?ベークマンのお見舞いも、誰かと一緒に行って欲しいんだ。理想はロペス先生かな。」
「分かった、証人だから狙われるかもしれないもんね!」
「うん……ごめんね、よろしく。」
「……?」
私はそのままノアさんと別れ、自室へと向かった。
「え……?」
「何かご存知ですか、ベルナールさん。」
ここまで静かに話を聞いていた警備隊員が口を開く。
………
「はい。実は、私と協力者数名で別の事件の黒幕と思われる組織を追っているのですが……その組織の紋章が、この男の腕に描かれているものと同じです。」
「なるほど……それが"モロク"という組織ということですか。」
「はい。モロクについてはまだ詳細を調査中ですが、今回の件も踏まえると、何か目的を持って動いているのは間違いないでしょう。」
「モロクについて、現時点で分かっていることを教えて頂いてもよろしいですか?」
「はい。まず……」
私は大司教様やエドガス様との会話で得られた情報を、頑張れば誰でも手に入りそうな範囲で伝えた。エドガス様くらいの年代になるとある程度知っていることもあるようだが、この警備隊員はそれに比べると若いので、知らないのも致し方ない。
「なるほど……」
警備隊員は考え込む。
「……わかりました、情報提供ありがとうございます。こちらの方でも調査を進めましょう。その"協力者"の方々が誰なのかお教えいただく事はできますか?できることなら今日我々もその方々と連携しておきたい。」
彼の言い分はもっともだ。
「おそらく大丈夫だと思いますが、一応向こうの了承も得たいので、本人らに確認して、問題なさそうなら本人たちから皆さんに直接連絡してもらえないか頼んでみます。」
協力者のメンツがメンツなので、軽々しく素性を話す訳にはいかない。
「ありがとうございます、助かります。私たちでもわかったことがあれば、なるべく早急にお伝えします。」
警備隊員は丁寧に頭を下げる。
「では、今日はもう遅いですから、お帰りください。もしものこともありますので、寮まで警備隊の方でお送りいたします。」
すると、奥で待機していた警備隊員が立ち上がる。彼が送ってくれるのだろう。
「わかりました。お願いします」
モロクの動向がわからない以上、移動の1つにも警戒する必要がある。ノアさんもいることだし、私はお言葉に甘えることにした。
─────────
「大変なことになっちゃったね……」
寮まで無事帰還した私達は、もう夜遅いので、女子寮の自分たちの部屋へと向かっていた。
「そうだね。まあでも、警備隊も最優先で捜査してくれるみたいだし、心配いらないよ。」
「うん……あ、そうだ。ベークマン君のお見舞い行ってきたんだよね?大丈夫だった……?」
ノアさんは少し不安そうな声を出す。
「うん、大丈夫そうだったよ。むしろ元気すぎて暴れてた。」
「そっかあ……よかった……」
ノアさんはふーっと息を吐き、安堵の表情を浮かべる。普通"暴れてた"とか言ったらむしろ引きそうだが、本気でベークマンの安否を心配していたのだろう。
「ノアさんもお見舞い行ってあげなよ。喜ぶ……かは分かんないけど、ベークマンも自分が助けた子の安否くらいは知りたいかもしれないし。」
「うん!……あ、私の部屋ここなんだ!じゃあまた明日、おやすみ!」
「うん、おやすみ……あ、ノアさん」
「ん?なに?」
「これから1週間くらい、ひとりで外出しないようにできる?ベークマンのお見舞いも、誰かと一緒に行って欲しいんだ。理想はロペス先生かな。」
「分かった、証人だから狙われるかもしれないもんね!」
「うん……ごめんね、よろしく。」
「……?」
私はそのままノアさんと別れ、自室へと向かった。
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