乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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新学期

第92話 各々の成長③

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「行っちゃった……」

ジークがつぶやく。

「ねえ、ラクアはなにをそんなに怒ってたの?」

「多分、私の魔力量が急に増えてたからだと思うよ。」

「魔力量……?あ、魔力視で視たのか!今いくつなの?」

「410。」

「4……え?だって、神の啓示のときって270とかだったよね!?何したの!?僕まだそれにも追いついてないのに!」

「王都に専門図書館あるでしょ?そこにある魔術書に、魔力量を底上げする方法が書いてあって、それを試したんだよ。」

「それ、大丈夫なやつ??」

ジークが疑いの目を向ける。

「最初は死にかけた。」

「ダメじゃん!」

「でも、それ以降はむしろ調子いいよ。」

「それ1周回ってハイになってない!?」

「いや、そっちじゃなくて、ちゃんと大丈夫な方だよ。」

「ほんとに?」

ジークが私の両肩を掴み、こちらを凝視する。

「う、うんほんとに。」

「我慢してないよね??」

さらにジークが詰め寄る。ちょっと怖い。

「うん。」

「……分かった、信じるよ……ちなみに、どういう方法なの?」

「体内の魔力を全部放出して、ひたすら耐える。」

「思ったより脳筋プレイ!というか、体内の魔力全部出すなんて無理でしょ?人間は魔力が無いと死んじゃうよ?」

「ああまあ、厳密には完全な0じゃなくて、5くらいはどうしても残るよ。」

「い、いやそれでもさ……!だって、魔力量が20とか30の人でも病気がちになってまともに動けないって聞くよ?それを5だなんて!」

「そこは、多分私の体質が特殊なんだと思う。」

私が見つけた文献には、何十年も前の、倫理観が今よりだいぶアレだった頃の魔力増加実験について書かれていた。

その実験は、被験者に限界まで魔力を放出させ(これはコツをつかめば誰でも出来るし、魔道具でもできる)、ほぼ空にした状態でできるだけ耐え、限界になったら魔力を魔力ポーションで回復するというものだった。

魔力は、基本的に空気中に存在する魔素を無意識に吸収して回復する。逆に、魔力を放出すれば体内の魔力は減る。これは呼吸と近い現象と言える。

そして生物には、魔力肺と呼ばれる空気中から魔素を吸い上げ魔力に変え、体内に蓄える仕組みがあるらしい。仕組みというのは、実体がある訳ではなく、概念的なものだからである。

つまり、魔力の放出と吸収を繰り返して魔力肺を鍛えてやれば、魔力の最大量増加が見込めるという訳だ。

しかし、くだんの実験には致命的な欠点があった。それは、魔力を空にしたことが原因で、被験者の半分が死亡したということ。そして、生き残った半分もその危険性に見合わない魔力量しか増加しなかったということである。

この世界における魔力と魂は、お互いを動かしお互いに動かされる表裏一体の存在だ。そのため、魔力が無いことはすなわち魂の崩壊、死を意味する。

だから、魔法が使えるかどうかによらず、生物は必ず魔力を有しているし、魔力無しでは生きられない。

数値の目安としては、魔力10以下で10秒程度耐えて即魔力ポーションを飲んでギリ死ぬかどうかくらいらしい。

だが、それはあくまでこの世界のことわりだ。

私の精神部分、すなわち魂はここの世界のものでは無い。そして前世の魂は……そもそも魂があるかどうかという議論があるが、いずれにせよ魔力が動力源では無い……はずである。

このことから私は1つ仮説を立てた。私であれば魔力を限りなく0にした状態で長時間保ち、その対価に見合う魔力を手に入れることが出来るのではないか、と。

この仮説は当たりだった。

最初は今までとの感覚のギャップで吐きそうだった。……というか実際吐いた。大丈夫な場所で。

だが魔力無しで過ごすなど、前世の20年間からやっている事だ。慣れればなんてことは無い。

私はキープする時間を10秒、30秒、1分、5分……と増やしていき、最終的には丸1日中できるようになった。

とはいえ、日中は授業やら今日みたいな用事やらで魔力が無いと困るため、やっているのは基本寮に戻ってから朝起きるまでの間だ。

それでも文献では最大10秒程度しかできていなかったものを、1日の半分近く、2ヶ月もの間続けたのだ。差は歴然である。

そんなこんなで今に至るという訳だ。
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