乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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新学期

第90話 各々の成長①

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ある日の放課後。

「始めるぞ」

私はラクアとランドルト、そしてジークと共に、第二魔法演習場へと来ていた。ここは、魔術学院の生徒は予約すれば自由に使うことが出来る。

なぜここにいるかと言うと、剣術指南会の後に早速アランと剣を買いに行ったらしく、それの試し斬りをしたいとの事だった。

ラクアが選んだのは、右手用のショートソードと、左手用のダガーである。"ショート"ソードと言うと短剣かと思うだろうが、あくまでロングソードとの対比であり、ダガーと比べれば充分長い。

色々考えた結果、左右で剣のサイズを変えることにより、ショートソードで主体の攻撃、ダガーで防御や追い打ちという役割分担をして手数や戦法の幅を広がりを持たせるという、剣術部の部長と同じスタイルにしたようだ。まあ、普通の人が下手に手を出すとこんがらがるだけだろうが、ラクアならそのうちものにできるだろう。

とはいえ、どんなに才があってもいきなり剣を変えてはい強いとは中々ならない。ラクアはどうやらあれからまた何回かアランと手合わせして挫折を味わったらしく、他の面々とも手合わせをして、一度自分の戦い方を見直すことにしたようだ。それでその面々に選ばれたのが我々というわけである。

正直ラクアがジークを呼んだのは意外だったが、なんやかんや言って実力は認めているということなのだろう。

「じゃあ王子様、まず僕からでいいかな?」

「ああ。……その前に、"王子様"はやめろ。ラクアでいい。」

「分かった、ラクア!」

それにしてもラクアがジークにこんな提案をするとは意外である。"王子様"と呼ばれるのが嫌だっただけかもしれないが。

というか、ラクアがジークに対して通常運転で接してるの違和感すごいな……いや、まあ指摘はしないでおこう。

さて、今回はラクアの訓練がメインなので、試合形式ではなく、ジークと私が1人ずつラクアに仕掛け、都度改善点を考えるという形式で進めていくらしい。

まずはジークからである。

「えっと、ラクアは魔法使わないけど、僕は使って良かったんだよね?だからえーっとー……」

ジーク、いくら試合じゃないからといって、ちょっとのんびりし過ぎじゃないか?

「……全力で来い。」

「分かった!」

ダッ!!

ラクアの言葉を聞くが早いか、ジークは風魔法で加速しラクアに斬り掛かる。

キィィィィン!!!

ジークの長剣とラクアのダガーがぶつかる。

ブン!!

「わっ!」

その次の瞬間、ラクアがダガーでジークの剣をいなしつつ大きく踏み込み、ショートソードで追撃した。ジークは驚きつつもしゃがんで回避する。

「ウインドキャノン!!」
「っ!!」

体制を崩したジークが、すかさず下から魔法を放つ。

ラクアはすかさず防御したものの、後方に吹っ飛ばされる。

ザザッ!!

だが、すぐに着地し、再び剣を構える。

カン!ガッ!!ガガッ!!

再び剣戟が始まる。

そういえば、この2人ってなんやかんやで魔術大会では戦わなかったんだよな?ラクアは団体戦に出なかったし、個人戦では私に準決勝で敗れてジークとは当たらなかった。

だからあまり2人の力関係は分からなかったのだが、風魔法で加速したジークとラクアはややラクアが押されているものの割といい勝負だ。とすると、相性もあるだろうが、剣術の腕自体はラクアの方が上なのだろう。

「ねえ、やっぱりラクアだけ魔法使えないルールってゲームバランス悪くない?剣術の訓練を重視したいのは分かるんだけど、それならこっちも魔法使わない方がいいんじゃ?」

私は見学しながらランドルトに訊ねる。

「ラクア様が勝とうとしていればそうなのでしょうが……今回はむしろ、自分が不利な状況から、どれだけ粘れるかを見たいのでしょう。」

「おお、なるほど。」

相変わらずストイックだな。

ラクアもこれだけ実力があるのだから、ジークにあんな食ってかかる必要は無いと思うが……まあ、確かに剣術や魔法での攻撃だけでなく、防御・回避・回復までできるジークと比べてしまうと、総合力という点で劣等感を感じてしまうのは仕方がない。私でも思うところはあるし。

ザザッ!!

そうこうするうちに、両者が大きく後ろに下がる。

「……ひとまずこんなところか。」

「分かった!」

ラクアの呼びかけに、ジークが元気よく返事をし、剣を鞘に収めた。

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