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新学期
第86話 剣術指南②
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私がマリーに目配せすると、マリーは軽くうなづいた。どうやら意味を理解してくれたらしい。
「シャーロット嬢、本日は私のお誘いに乗ってくださりありがとうございます。」
即座に王子様モードに切り替えたラクアが、シャーロット嬢に反応する。それを見たロンは、少し変な顔をした。気持ちはよく分かる。
「こ、こちらこそ!ラクア様にお誘いいただいて嬉しいです!」
シャーロット嬢は深々と頭を下げた後、恥ずかしそうに顔を赤らめている。これは、想像以上にラクアにゾッコンらしい。
「失礼いたします、シャーロット様。こちら、カナ・ベルナール様とそのご学友もおりますので、ぜひご挨拶させていただければと思います。」
こちらに気がついていないシャーロット嬢を見かねて、ランドルドがこちらに話を振ってくれた。ナイス、ランドルト。
「あ、ごめんなさいカナ様!私ったら、周りがよく見えなくなってしまって……」
「いえ、大丈夫ですよ。お久しぶりですね。」
「はい、お久しぶりです!」
シャーロットはそう言うと、アランとマリーの方へ向き直る。
「えっと、私はシャーロット・ソルードと申します!カナ様のお友達様、よろしくお願いいたします!」
「はい、よろしくお願いします!あ、アランっていいます!」
「お初にお目にかかりますわ、シャーロット嬢。私、スオーロ男爵家の次女、マリーと申します。」
マリーは丁寧にお辞儀をする。シャーロットもそれにつられ、慌ててお辞儀する。
「ふふ、そんなに固くなる必要ありませんわ。同年代同士、仲良くしましょう。」
マリーはニコッと微笑み返す。
「はい!」
シャーロットの顔がパーッと明るくなる。
「それでは、お互いの挨拶も済んだようですので、剣術指南の方に入らせていただきます。男性陣はこちらへ、ご見学の女性陣はあちらのお席へどうぞ。」
誘導されるまま、各自ぞろぞろと移動を始める。私はどうすればいいか分からずオロオロしていると、ラクアに肩を叩かれ顎で"行くぞ"とジェスチャーされたので、そちらについて行った。
私が男性陣に同行していることについて、案内役の騎士は少し不思議そうな顔をしたが、それ以降は特に気にとめていないようだった。
「ではまず、皆さん同士で試合を行って貰います。魔法は使用不可、武器は持参いただいたものでも、そちらに置いてあるものでも構いません。勝ち負けをつけたい訳ではありませんので、力量がおおよそ分かれば頃合いを見てお止めします。」
どうやら、指南より先に試合をやるらしい。
「5人いらっしゃいますので、2人ずつに分かれて、1人は騎士の誰かとやってもらいましょう。分け方はお任せしますが、出来れば強さの近い方同士だと嬉しいです。」
今いるのは、私、アラン、ラクア、ロン、ランドルトの5人だ。魔法無しの、純粋な剣での強さで言うと……
「おい、アラン……だったか。俺と組まないか?」
すると、ラクアがアランに声をかける。
「……!ああ、いいですよ!俺も王子とちょっと戦ってみたかったですし!」
「決まりだな。それと、ラクアでいい。敬語も必要ない。」
「おう、了解ラクア!」
アランは元気よく返事をする。
「じゃあ、ラクアとアランが2人で組んで……」
「私は少々力不足ですから、ベルナール様とロン様のおふたりで組んでください。」
ランドルトが提案する。
「そう……?じゃあ、そうしようか。」
「決まったようですね。では、そちらのおふたりから先にお願いします。」
ーーーーーーーーーーーーー
「それでは、始めてください。」
一通り準備も終わり、アランとラクアの試合が始まった。
魔術大会のときとは打って代わり、どちらも速攻はかけず様子を伺っている。
ちなみに2人が使っているのは各々持参した武器だ。アランは魔術大会のときに屋台で買ったミスリルとオリハルコンの合金で出来た剣を、ラクアはおそらく鉄製の長剣を使っている。
2人とも真剣な顔つきだが、比較的リラックスしているアランに比べ、ラクアは少し緊張しているようにも見える。
ジリッ……
ダッ!!
ラクアが片足を少し後ろにずらしたタイミングで、アランが一気に飛び出した。
キィィィィン!!
双方の剣を思い切りぶつかる。
ガン!カッ!ギィィィ!!
魔術大会のときとは異なり実況も歓声をあげる観客もいないため、金属の重くぶつかり合う音だけが空間に鳴り響く。
「わあ……!」
おや1人だけ、声を上げる者がいたようだ。
カッ!ガッ!!
一件互角に見えるが、ラクアはジリジリと後ろに下がっていっており、若干疲れの色が見え始めている。一方、アランは試合開始時と特別変わった様子はない。
「……!」
ここでラクアの剣が弾かれ、体制を崩す。アランがすかさず追撃するが、ラクアは上手いこと後ろに飛んで回避した。
「そこまで!」
ここで、騎士により終了の合図がなされた。
「シャーロット嬢、本日は私のお誘いに乗ってくださりありがとうございます。」
即座に王子様モードに切り替えたラクアが、シャーロット嬢に反応する。それを見たロンは、少し変な顔をした。気持ちはよく分かる。
「こ、こちらこそ!ラクア様にお誘いいただいて嬉しいです!」
シャーロット嬢は深々と頭を下げた後、恥ずかしそうに顔を赤らめている。これは、想像以上にラクアにゾッコンらしい。
「失礼いたします、シャーロット様。こちら、カナ・ベルナール様とそのご学友もおりますので、ぜひご挨拶させていただければと思います。」
こちらに気がついていないシャーロット嬢を見かねて、ランドルドがこちらに話を振ってくれた。ナイス、ランドルト。
「あ、ごめんなさいカナ様!私ったら、周りがよく見えなくなってしまって……」
「いえ、大丈夫ですよ。お久しぶりですね。」
「はい、お久しぶりです!」
シャーロットはそう言うと、アランとマリーの方へ向き直る。
「えっと、私はシャーロット・ソルードと申します!カナ様のお友達様、よろしくお願いいたします!」
「はい、よろしくお願いします!あ、アランっていいます!」
「お初にお目にかかりますわ、シャーロット嬢。私、スオーロ男爵家の次女、マリーと申します。」
マリーは丁寧にお辞儀をする。シャーロットもそれにつられ、慌ててお辞儀する。
「ふふ、そんなに固くなる必要ありませんわ。同年代同士、仲良くしましょう。」
マリーはニコッと微笑み返す。
「はい!」
シャーロットの顔がパーッと明るくなる。
「それでは、お互いの挨拶も済んだようですので、剣術指南の方に入らせていただきます。男性陣はこちらへ、ご見学の女性陣はあちらのお席へどうぞ。」
誘導されるまま、各自ぞろぞろと移動を始める。私はどうすればいいか分からずオロオロしていると、ラクアに肩を叩かれ顎で"行くぞ"とジェスチャーされたので、そちらについて行った。
私が男性陣に同行していることについて、案内役の騎士は少し不思議そうな顔をしたが、それ以降は特に気にとめていないようだった。
「ではまず、皆さん同士で試合を行って貰います。魔法は使用不可、武器は持参いただいたものでも、そちらに置いてあるものでも構いません。勝ち負けをつけたい訳ではありませんので、力量がおおよそ分かれば頃合いを見てお止めします。」
どうやら、指南より先に試合をやるらしい。
「5人いらっしゃいますので、2人ずつに分かれて、1人は騎士の誰かとやってもらいましょう。分け方はお任せしますが、出来れば強さの近い方同士だと嬉しいです。」
今いるのは、私、アラン、ラクア、ロン、ランドルトの5人だ。魔法無しの、純粋な剣での強さで言うと……
「おい、アラン……だったか。俺と組まないか?」
すると、ラクアがアランに声をかける。
「……!ああ、いいですよ!俺も王子とちょっと戦ってみたかったですし!」
「決まりだな。それと、ラクアでいい。敬語も必要ない。」
「おう、了解ラクア!」
アランは元気よく返事をする。
「じゃあ、ラクアとアランが2人で組んで……」
「私は少々力不足ですから、ベルナール様とロン様のおふたりで組んでください。」
ランドルトが提案する。
「そう……?じゃあ、そうしようか。」
「決まったようですね。では、そちらのおふたりから先にお願いします。」
ーーーーーーーーーーーーー
「それでは、始めてください。」
一通り準備も終わり、アランとラクアの試合が始まった。
魔術大会のときとは打って代わり、どちらも速攻はかけず様子を伺っている。
ちなみに2人が使っているのは各々持参した武器だ。アランは魔術大会のときに屋台で買ったミスリルとオリハルコンの合金で出来た剣を、ラクアはおそらく鉄製の長剣を使っている。
2人とも真剣な顔つきだが、比較的リラックスしているアランに比べ、ラクアは少し緊張しているようにも見える。
ジリッ……
ダッ!!
ラクアが片足を少し後ろにずらしたタイミングで、アランが一気に飛び出した。
キィィィィン!!
双方の剣を思い切りぶつかる。
ガン!カッ!ギィィィ!!
魔術大会のときとは異なり実況も歓声をあげる観客もいないため、金属の重くぶつかり合う音だけが空間に鳴り響く。
「わあ……!」
おや1人だけ、声を上げる者がいたようだ。
カッ!ガッ!!
一件互角に見えるが、ラクアはジリジリと後ろに下がっていっており、若干疲れの色が見え始めている。一方、アランは試合開始時と特別変わった様子はない。
「……!」
ここでラクアの剣が弾かれ、体制を崩す。アランがすかさず追撃するが、ラクアは上手いこと後ろに飛んで回避した。
「そこまで!」
ここで、騎士により終了の合図がなされた。
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