乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

文字の大きさ
上 下
86 / 115
新学期

第86話 剣術指南②

しおりを挟む
私がマリーに目配せすると、マリーは軽くうなづいた。どうやら意味を理解してくれたらしい。

「シャーロット嬢、本日は私のお誘いに乗ってくださりありがとうございます。」

即座に王子様モードに切り替えたラクアが、シャーロット嬢に反応する。それを見たロンは、少し変な顔をした。気持ちはよく分かる。

「こ、こちらこそ!ラクア様にお誘いいただいて嬉しいです!」

シャーロット嬢は深々と頭を下げた後、恥ずかしそうに顔を赤らめている。これは、想像以上にラクアにゾッコンらしい。

「失礼いたします、シャーロット様。こちら、カナ・ベルナール様とそのご学友もおりますので、ぜひご挨拶させていただければと思います。」

こちらに気がついていないシャーロット嬢を見かねて、ランドルドがこちらに話を振ってくれた。ナイス、ランドルト。

「あ、ごめんなさいカナ様!私ったら、周りがよく見えなくなってしまって……」 

「いえ、大丈夫ですよ。お久しぶりですね。」

「はい、お久しぶりです!」

シャーロットはそう言うと、アランとマリーの方へ向き直る。

「えっと、私はシャーロット・ソルードと申します!カナ様のお友達様、よろしくお願いいたします!」

「はい、よろしくお願いします!あ、アランっていいます!」

「お初にお目にかかりますわ、シャーロット嬢。わたくし、スオーロ男爵家の次女、マリーと申します。」

マリーは丁寧にお辞儀をする。シャーロットもそれにつられ、慌ててお辞儀する。

「ふふ、そんなに固くなる必要ありませんわ。同年代同士、仲良くしましょう。」

マリーはニコッと微笑み返す。

「はい!」

シャーロットの顔がパーッと明るくなる。

「それでは、お互いの挨拶も済んだようですので、剣術指南の方に入らせていただきます。男性陣はこちらへ、ご見学の女性陣はあちらのお席へどうぞ。」

誘導されるまま、各自ぞろぞろと移動を始める。私はどうすればいいか分からずオロオロしていると、ラクアに肩を叩かれ顎で"行くぞ"とジェスチャーされたので、そちらについて行った。

私が男性陣に同行していることについて、案内役の騎士は少し不思議そうな顔をしたが、それ以降は特に気にとめていないようだった。


「ではまず、皆さん同士で試合を行って貰います。魔法は使用不可、武器は持参いただいたものでも、そちらに置いてあるものでも構いません。勝ち負けをつけたい訳ではありませんので、力量がおおよそ分かれば頃合いを見てお止めします。」

どうやら、指南より先に試合をやるらしい。

「5人いらっしゃいますので、2人ずつに分かれて、1人は騎士の誰かとやってもらいましょう。分け方はお任せしますが、出来れば強さの近い方同士だと嬉しいです。」

今いるのは、私、アラン、ラクア、ロン、ランドルトの5人だ。魔法無しの、純粋な剣での強さで言うと……

「おい、アラン……だったか。俺と組まないか?」

すると、ラクアがアランに声をかける。

「……!ああ、いいですよ!俺も王子とちょっと戦ってみたかったですし!」

「決まりだな。それと、ラクアでいい。敬語も必要ない。」

「おう、了解ラクア!」

アランは元気よく返事をする。

「じゃあ、ラクアとアランが2人で組んで……」

「私は少々力不足ですから、ベルナール様とロン様のおふたりで組んでください。」

ランドルトが提案する。

「そう……?じゃあ、そうしようか。」

「決まったようですね。では、そちらのおふたりから先にお願いします。」

ーーーーーーーーーーーーー

「それでは、始めてください。」

一通り準備も終わり、アランとラクアの試合が始まった。

魔術大会のときとは打って代わり、どちらも速攻はかけず様子を伺っている。

ちなみに2人が使っているのは各々持参した武器だ。アランは魔術大会のときに屋台で買ったミスリルとオリハルコンの合金で出来た剣を、ラクアはおそらく鉄製の長剣を使っている。

2人とも真剣な顔つきだが、比較的リラックスしているアランに比べ、ラクアは少し緊張しているようにも見える。

ジリッ……

ダッ!!

ラクアが片足を少し後ろにずらしたタイミングで、アランが一気に飛び出した。

キィィィィン!!

双方の剣を思い切りぶつかる。

ガン!カッ!ギィィィ!!

魔術大会のときとは異なり実況も歓声をあげる観客もいないため、金属の重くぶつかり合う音だけが空間に鳴り響く。

「わあ……!」

おや1人だけ、声を上げる者シャーロットがいたようだ。

カッ!ガッ!!

一件互角に見えるが、ラクアはジリジリと後ろに下がっていっており、若干疲れの色が見え始めている。一方、アランは試合開始時と特別変わった様子はない。

「……!」

ここでラクアの剣が弾かれ、体制を崩す。アランがすかさず追撃するが、ラクアは上手いこと後ろに飛んで回避した。

「そこまで!」

ここで、騎士により終了の合図がなされた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜

ネリムZ
ファンタジー
 唐突にギルドマスターから宣言される言葉。 「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」  理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。  様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。  そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。  モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。  行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。  俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。  そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。  新たな目標、新たな仲間と環境。  信念を持って行動する、一人の男の物語。

魔法適正Fランクの落ちこぼれ魔法使い、Sランクの魔力蓄積量とスキル《魔力操作》で最強です!

沢谷 暖日
ファンタジー
私の夢は『強くてカワイイ最強の魔法使い』になることだった。 けど学園卒業を目前の『鑑定の儀』で私は出鼻をくじかれることになる。 魔法適正全属性 Fランク。そんなんじゃ、魔法使いにすらなれるはずがない。 ──え? 魔力蓄積量はSランク!? それに、私の天啓《スキル》は『魔力操作』? あぁ、じゃあ私、最強かもしれない。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

僕と精霊 〜魔法と科学と宝石の輝き〜

一般人
ファンタジー
 人類が魔法と科学の力を発見して数万年。それぞれの力を持つ者同士の思想の衝突で起きた長き時に渡る戦争、『発展戦争』。そんな戦争の休戦から早100年。魔法軍の国に住む高校生ジャン・バーンは精霊カーバンクルのパンプと出会いと共に両国の歪みに巻き込まれていく。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...