乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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転変

第95話 転変

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剣術指南会から1週間ほどたったある日の放課後。私は寮間にあるラウンジで、アランに勉強を教えていた。

前回の期末テストの際、直前に詰め込んで勉強することの大変さを学んだアランは、こうして定期的に私に教えを乞うようになった。

私は私で度々アランやジークに剣術を教わっているのもあり、私は快く引き受けている。

「おいアラン、大変だ!」

そんなとき、ある男子生徒がラウンジへ駆け込み、アランを大声で呼んだ。彼はたしか、剣術部の部員だ。

「おおルイ、どうしたんだ?そんなに慌てて。」

「ブ、ブラムのやつが、瀕死の重体だって……!!」

ベークマンが……!?

「は!?……ブ、ブラムは今どうしてんだ!?」

「ロペス先生から聞いたんだけど、王城の横のデカい病院あるだろ、そこに運ばれたらしい……!」

「まじかよ……誰か見に行ったか?」

「いや、少なくとも部員はまだだ!それに、あいつの親戚も住んでる場所遠いからすぐには来られないと思うし……」

「じゃあ俺らで見に行くしかねえか……すまねえカナさん、そういう訳で急用できちまった。」

「ううん、気にしないで。……えっとお邪魔でなければなんだけど、私も付いていっちゃまずいかな?」

「……!いいぜ、一緒に行こう!」

こうして、私たちはベークマンの安否を確認すべく、病院へと向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「ここだ!」

剣術部員のルイの案内で、私たちはベークマンのいる病室の前まで来た。

「よう、お前ら!」

すると、病室の前にはロペス先生と警備隊が2人おり、医者と思しき人物と会話していた。

「おおルイ、来たか!あとはアランと……ベルナールも来たのか!」

ちなみに、ロペス先生は剣術部の第三顧問である。本人は剣術が専門では無いのであまり普段の練習には顔を出さないが、大会等のイベントの際はよく面倒を見ているらしい。

「ロペス先生、ブラムは大丈夫なのか?」

アランが尋ねる。

「とりあえず死んではねえよ。状態としては……あー、なんつーか……」

言い淀むほど悪い状態なのか。

「ま、マジか……」

同じことを考えたのか、アランの顔が青ざめる。

「まあ、とにかく中入って確認してみろ。」

ロペス先生に促され、我々3人は病室へと入る。するとそこにいたのは、弱々しくベッドに横たわるベークマン……

ガッ!!ガンッ!!!

「チキショーー!!!」

「な、ブラム!?」

……ではなく、鎖でベッドに縛り付けられ、大声で叫びながら暴れ回るベークマンの姿があった。もはや、ベークマンよりもベッドの安否の方が心配である。

「えーと?」

これ、どうすれば良いんだろう。

「はあ……」

ルイは、安堵か呆れか頭を抱え、大きくため息をする。

「クソが!!あの野郎ぜってえぶっ殺す!!」

ベークマンはこちらに気がついているのかいないのか分からないが、ずっと暴れ続けている。

「おいブラム!落ち着けって!!」

アランがベークマンを止めに入る。

「ああ!?……おお、アランじゃねえか!これどうにかしやがれ!!」

「あー、まずなんで鎖で繋がれてんだ?」

「そんなことはどうでもいいだろ!とりあえずこれ解け!」

「えー……」

アランはどうするべきか分からずオロオロする。

「……それ、ベークマンが暴れるからお医者さんがやったんでしょ?だとしたら、私たちの判断じゃどうにもできないよ。」

ふと病室の外にいる医者の方へ視線を移すと、祈るかのように怯えながらこちらを凝視している。

「ああ!?ふざけんな、俺患者だろうが!!」

急にこの状況で正論言うのやめてくれ。笑っちゃうから。

「それに、なんでか知らねえけど魔法使えねえんだよ、どうにかしろ! 」

まず、病院で魔法を使おうとしないで欲しい。しかも君の魔法、破壊力に全振りしたやつばっかりだから。

「この鎖、鉄と少量の魔封石の固溶体で出来てるよ。だから、鎖で縛られてる限りは魔法使えないからね。」

「だーー!!」

ベークマンはとにかくイライラしているらしく、駄々っ子のようにジタバタする。ただし、それから伝わる振動は猛獣並だ。

「解放して欲しかったら、こうなった経緯を説明して。それかせめて暴れるのをやめて。」

「これが暴れずにいられるか!!」

「じゃあ、しょうがない。行こう、アラン、ルイ。」

私は2人の背を押し、病室の出口へと向かう。

「おい待て!……だーわかった!!暴れねえから解放しろ!!」

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