乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

文字の大きさ
上 下
87 / 115
新学期

第87話 剣術指南③

しおりを挟む


それからしばらく経ち、私を含めた残りの3人も試合も終え、私たちは各々フィードバックをもらっていた。

私に関して言えば、まあ細かなところは色々とあるのだが、1番の問題としては攻撃に意識がいってしまい、防御が手薄になりがちであることを指摘された。通りで魔術大会のときにやたらとみぞおちに攻撃を食らった訳だ。

「なあ、ラクア?」

一通りフィードバックを受け終え、そろそろこの会も終わりになる頃、アランがラクアに声をかけた。

「何だ。」

ラクアが応える。

「お前、その剣じゃない方がいいんじゃないか?」

「……どういう意味だ。」

アランの突然の発言にラクアが聞き返す。

「今より軽くて短い剣の方がいいと思うんだよ。もっと言うと、剣2本持った方がいいんじゃねえかって思ってる。」

「なぜそう思う。」

「いやなんつーか、今のままでもいいっちゃいいんだけど、どうにも剣がお前に追いついてない・・・・・・・・・・・・感じがするんだよな。」

「……」

「それってつまりどういうことだ?」

話を聞いていたロンが口を挟む。

「えーとうーんと……あそうだ!カナさんなら分かるんじゃ??」

「え、私?」

急に話を振られ驚く。

参ったな、授業以外では基本的に〘水惑刀〙ありきで練習してるから、あんまりそういったことは意識してなかったんだが……

「……おそらくアランが言いたいのは、"ラクアが想像してる剣の動き"と、"実際の剣の動き"との間に解離かいりがあるってことじゃないかな。」

「そう!多分そうだ!」

アランが相打ちを打つ。いや多分って。

「えーと……?」

ロンはまだピンときていないようだ。

「具体的には、ラクアの使ってる剣は比較的長くて重いから、どちらかと言うとスピードよりリーチとか威力重視で、繰り出せる手数も少ない。だけどラクアは思考スピードが速い分、頭の中で瞬時に次の手を考えられる。なのに剣の取り回しが悪いせいでそれを実行できてないから、"剣がラクアに追いついてない"ってこと……かな?」

アランの方を見ると、もげるのではと思うほど首をブンブン縦に振っている。どうやら正解のようだ。

「でもさ、今は1本を両手で持ってるけど、せっかく軽くて短い剣にしても、2本を片手ずつに持ったら重くて取り回し悪くなるんじゃ?」

ロンが再び質問する。

「んーそう言われるとどうなんだ?それに関しても勘だからな……」

「実際はこんな単純な足し算にはならないと思うけど、例えばそれぞれの手の手数が0.6倍になったとしても、両手の手数を合わせれば1.2倍になるから、全体で見れば手数が増える可能性は十分あるんじゃないかな。ラクア次第だけど、試してみる価値はあると思うよ。」

「ふむ……」

ラクアが一連の話を聞いて考える。

「……では、もしそうする場合は、具体的にどのような剣が適していると思う。」

どうやらアランの提案に前向きらしい。ラクアは融通が効かないように見えて、意外に人の意見を聞き入れることが多い。まあそれと、自分でも剣が合っていないことは薄々気がついていたのだろう。

「うーんそうだなあ……学院で支給されるのはどんなのがあったっけ?」  

魔術学院では、入学時に全員に剣が支給される。支給時は、各々自分に合ったものを数種類の中から1つ選ぶことになる。

「私が今持ってるやつが1番短くて軽いやつだと思うよ。」

私はアランに自分の剣を手渡す。

「うーん……まあ軽いっちゃ軽いけど、思ったほど変わんねえな……つか、長え。」

アランは軽々と片手で剣を振って感触を確かめる。

ちなみにこの1番軽いやつでも、私は剣に振り回されている。最近はいくらかマシになってきたが。

「そもそも学院の授業で教えられてる剣術って、両手で剣を持つ前提だからね。片手で持つような軽いものは用意してないんだと思うよ。」

前世の西洋剣術だと、むしろ片手剣で盾を持つのが主流だと聞いたことがあった気がするが、こちらの世界は魔法や魔導具などの盾以外の防御手段が多いため、両手が主流である。逆に、両手で盾を持って攻撃は魔法のみという人もいるらしい。

「じゃあ、他所よそで揃えるしかねえな。ちょうどおすすめの武器屋があるんだけど……って、王族なら剣くらい探せばいっぱい持ってるか?」

「剣自体は確かにあるが、装飾品ばかりで実戦で使えるものは少ない。それに、武器屋には興味がある。」

「おおまじか!じゃあ一緒に行こうぜ!」

「ああ。」

そんなこんなで、剣術指南会は終了した。

……この間ずっと黙って話を聞いていたランドルトが、同期生と仲睦まじく(かは微妙なところだが)話しているラクアの様子を、まるで子どもの成長を見守る親のような慈愛に満ちた表情で見ていたことは、そっと心にしまって置くとしよう。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜

ネリムZ
ファンタジー
 唐突にギルドマスターから宣言される言葉。 「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」  理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。  様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。  そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。  モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。  行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。  俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。  そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。  新たな目標、新たな仲間と環境。  信念を持って行動する、一人の男の物語。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

僕と精霊 〜魔法と科学と宝石の輝き〜

一般人
ファンタジー
 人類が魔法と科学の力を発見して数万年。それぞれの力を持つ者同士の思想の衝突で起きた長き時に渡る戦争、『発展戦争』。そんな戦争の休戦から早100年。魔法軍の国に住む高校生ジャン・バーンは精霊カーバンクルのパンプと出会いと共に両国の歪みに巻き込まれていく。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...