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新学期
第85話 剣術指南①
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週明けの放課後。
「カナ様、少しよろしいでしょうか。」
教室から出てすぐの廊下で、ランドルトに呼び止められた。
「ああうん、どうしたの?」
「実は明日の放課後、王城にて剣術指南会があるのですが、よろしければカナ様もご参加いただけないかと思いまして。」
「剣術指南会?」
「ええ、定期的に外部の子どもを呼んで、騎士団員をはじめとした有志による剣術指南と、王城の一部施設の見学会を行っております。」
職業体験みたいな感じか……?
「へえ、そんなものが。せっかくだから行こうかな。」
やることはそれなりにあるものの立て込んでいるという程では無いし、剣術指南には純粋に興味がある。
「良かったです。よろしければ、ご友人もぜひお誘いください。」
「分かった。呼ぶのは誰でもいいの?」
「ある程度身元の分かる方であれば問題ありません。少なくとも、学院の生徒であれば大丈夫でしょう。……ちなみにラクア様も参加予定なのですが、ロン・ソルード様と、その妹君であるシャーロット嬢をお呼びしていました。」
「……そっか、じゃあ適当に同級生で興味のありそうな人を連れていくよ。」
「はい、それではまた明日。」
「うん。」
そういうと、ランドルトは自分の教室へと戻って行った。
さて、誰を連れていこうか……
ーーーーーーーーーーーー
「それでは訓練場まで移動しますので、付いてきてください。」
翌日。私たちは王城での剣術指南会に参加していた。
ちなみに、私がこの会に誘ったのは誰かというと……
「訓練場、楽しみね!」
「騎士団の訓練場って、うちの道場とか学院のとどう違ぇんだろうなー」
マリーとアランである。前日にいきなり呼んで来られるか心配だったが、2人とも来てくれた。アランに至っては、わざわざ部活を休んできてくれたらしい。
「そういや、ジークは呼ばなかったんだな?」
「ああうん、呼ぼうか迷ったんだけど、よくよく考えたら騎士団長の息子を騎士団の見学会に呼ぶって変な感じだなと思って。」
「……そういやそうだった。」
ちなみに2人を呼んだ理由は、純粋に剣術指南(もしくは見学)に興味がありそうだったからだ。それに加え、マリーにはある頼み事をしてある。
「それで、お目当てのご令嬢というのはどちらにいらっしゃるの?」
マリーが小声で私に尋ねる。
「まだ顔を見せていないから、訓練場にいるのかも。見つけたら知らせるよ。」
「分かったわ。」
"お目当てのご令嬢"というのは、シャーロット嬢のことである。
今日来たのには、会に参加する以外にもう1つ目的がある。それは、ソルード侯爵の子であるロンとシャーロット嬢に探りを入れることである。
私やラクアの見立てでは、お茶会の一件に加担しているのはソルード侯爵だけであり、兄妹2人は関与していないと見ている。
しかしこれはあくまで肌感であり、なにか証拠がある訳ではない。それに仮に関与していなくても、2人からなにか得られる情報もあるかもしれない。
とはいえ、学院の生徒であるロンはともかく、妹のシャーロットは接触できる機会が少ない。
そこで、今回のこの会だ。最初は私が何故招待されたのかピンと来ていなかったが、ラクアが2人を招待したと聞いて合点がいった。
ただ、私も年頃のご令嬢から上手く情報を引き出せる自信が無い。そのため、マリーに詳細は伏せた上で、"シャーロット嬢から話を聞いて、なにか隠し事がありそうか探って欲しい"とだけお願いしてある。マリーは、理由も聞かず快く引き受けてくれた。ありがたい限りだ。
しかし、先程までの王城の見学会にはロンしかおらず、シャーロット嬢の姿は無かった。恐らく、剣術指南の見学だけするつもりなのだろう。
ちなみに、ロンはラクアやランドルトと一緒にいる。
「さて、ここが訓練場になります。」
そうこうするうちに、訓練場へと到着した。
訓練場は学院のコロシアムと同じくらいの大きさで、壁際には槍や剣が大量に置かれている。また、訓練場を囲む壁には観覧スペースがあり、高い位置から訓練の様子を見られるようになっていた。
「ロンお兄様、それにラクア様!」
すると、廊下の反対側からピンク色のドレスを着た少女がメイドを連れて小走りでやってきた。
シャーロット嬢だ。
「カナ様、少しよろしいでしょうか。」
教室から出てすぐの廊下で、ランドルトに呼び止められた。
「ああうん、どうしたの?」
「実は明日の放課後、王城にて剣術指南会があるのですが、よろしければカナ様もご参加いただけないかと思いまして。」
「剣術指南会?」
「ええ、定期的に外部の子どもを呼んで、騎士団員をはじめとした有志による剣術指南と、王城の一部施設の見学会を行っております。」
職業体験みたいな感じか……?
「へえ、そんなものが。せっかくだから行こうかな。」
やることはそれなりにあるものの立て込んでいるという程では無いし、剣術指南には純粋に興味がある。
「良かったです。よろしければ、ご友人もぜひお誘いください。」
「分かった。呼ぶのは誰でもいいの?」
「ある程度身元の分かる方であれば問題ありません。少なくとも、学院の生徒であれば大丈夫でしょう。……ちなみにラクア様も参加予定なのですが、ロン・ソルード様と、その妹君であるシャーロット嬢をお呼びしていました。」
「……そっか、じゃあ適当に同級生で興味のありそうな人を連れていくよ。」
「はい、それではまた明日。」
「うん。」
そういうと、ランドルトは自分の教室へと戻って行った。
さて、誰を連れていこうか……
ーーーーーーーーーーーー
「それでは訓練場まで移動しますので、付いてきてください。」
翌日。私たちは王城での剣術指南会に参加していた。
ちなみに、私がこの会に誘ったのは誰かというと……
「訓練場、楽しみね!」
「騎士団の訓練場って、うちの道場とか学院のとどう違ぇんだろうなー」
マリーとアランである。前日にいきなり呼んで来られるか心配だったが、2人とも来てくれた。アランに至っては、わざわざ部活を休んできてくれたらしい。
「そういや、ジークは呼ばなかったんだな?」
「ああうん、呼ぼうか迷ったんだけど、よくよく考えたら騎士団長の息子を騎士団の見学会に呼ぶって変な感じだなと思って。」
「……そういやそうだった。」
ちなみに2人を呼んだ理由は、純粋に剣術指南(もしくは見学)に興味がありそうだったからだ。それに加え、マリーにはある頼み事をしてある。
「それで、お目当てのご令嬢というのはどちらにいらっしゃるの?」
マリーが小声で私に尋ねる。
「まだ顔を見せていないから、訓練場にいるのかも。見つけたら知らせるよ。」
「分かったわ。」
"お目当てのご令嬢"というのは、シャーロット嬢のことである。
今日来たのには、会に参加する以外にもう1つ目的がある。それは、ソルード侯爵の子であるロンとシャーロット嬢に探りを入れることである。
私やラクアの見立てでは、お茶会の一件に加担しているのはソルード侯爵だけであり、兄妹2人は関与していないと見ている。
しかしこれはあくまで肌感であり、なにか証拠がある訳ではない。それに仮に関与していなくても、2人からなにか得られる情報もあるかもしれない。
とはいえ、学院の生徒であるロンはともかく、妹のシャーロットは接触できる機会が少ない。
そこで、今回のこの会だ。最初は私が何故招待されたのかピンと来ていなかったが、ラクアが2人を招待したと聞いて合点がいった。
ただ、私も年頃のご令嬢から上手く情報を引き出せる自信が無い。そのため、マリーに詳細は伏せた上で、"シャーロット嬢から話を聞いて、なにか隠し事がありそうか探って欲しい"とだけお願いしてある。マリーは、理由も聞かず快く引き受けてくれた。ありがたい限りだ。
しかし、先程までの王城の見学会にはロンしかおらず、シャーロット嬢の姿は無かった。恐らく、剣術指南の見学だけするつもりなのだろう。
ちなみに、ロンはラクアやランドルトと一緒にいる。
「さて、ここが訓練場になります。」
そうこうするうちに、訓練場へと到着した。
訓練場は学院のコロシアムと同じくらいの大きさで、壁際には槍や剣が大量に置かれている。また、訓練場を囲む壁には観覧スペースがあり、高い位置から訓練の様子を見られるようになっていた。
「ロンお兄様、それにラクア様!」
すると、廊下の反対側からピンク色のドレスを着た少女がメイドを連れて小走りでやってきた。
シャーロット嬢だ。
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