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新学期
第83話 不穏な存在①
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バレンタインから数日後、私はエドガス様の屋敷にお邪魔していた。
「いやはやしかし、こんなに早く呪力視を習得するとはのう。」
紅茶を淹れながらエドガス様が切り出す。
「はは、自分でもびっくりです。とはいえ、まだ大分不安定なので、実用段階ではないですが……」
「一度できてしまえばあとは時間の問題じゃ。焦ることはないじゃろう。」
「はい。」
これまでも何度か通い、無事に呪力視の要領を掴むことが出来た。だが、より精度をあげるために、まだしばらくお世話になることだろう。
「ところで、お茶会の一件について、なにか進展はあったかのう?」
「ああ、それが……」
私は、ジークの父親である騎士団長に協力を仰いだこと、ラクアとの話し合いの中でソルード侯爵が容疑者に挙がっていることを告げた。
「ほう、ソルード侯爵が。それで、それ以降殿下や伯爵から追加の情報は無いと。」
「はい。調査は進めているようなのですが、やはり他国が絡むと慎重に動く必要があるようです。」
「ふむ……」
エドガス様は少々考え込む。
「……エドガス様の方で、なにか新たにわかったことはありますか?」
私はエドガス様が何か思うところがある様子なのを察し、尋ねてみる。
「ふむ……関係あるかは分からないのじゃが、預かった魔法銃に関して少々気になることがあってのう。」
「気になること?」
「実際に見てもらった方が早いじゃろう。少し待っておれ。」
そういうと、エドガス様は研究室へ向かい、しばらくして紙切れを持って戻ってきた。
「魔法銃に何か痕跡でもないかと調べておったら、隠し紋章が見つかってのう。」
「隠し紋章ですか?」
「ふむ。組織のシンボルマークなんかを、物や場所に特殊な方法で隠して付けておくんじゃよ。そうすることで、味方同士の痕跡を、自分たちだけが認知できるという訳じゃ。」
「それをよく見つけられましたね?」
「長年生きていると色んな悪知恵もついつい覚えてしまってのう。もしやと思い調べてみたんじゃ。まあ、かなり古い手法で隠されておったから、かえって見つけるのに手間取ってしまったがね。」
「なるほど……それで、その隠し紋章というのはどのような絵だったんですか?」
「それが、これなんじゃが……」
すると、エドガス様が先程持ってきた紙切れを見せる。どうやら、魔法銃に描かれていた絵を写したもののようだ。
その絵は、なんともホラーチックで不気味なタッチで描かれていた。
「これは……人の腕が生えた牛?ですかね?」
「恐らくそうじゃろう。なんにしても、随分と不気味な絵じゃわい。」
「うーん……この紋章に見覚えは?」
「すまんがないのう。もしこんな不気味な絵を見たら、忘れるとも思えぬし。」
「そうですか……」
当然、私もこの絵には見覚えが無い。だが、この紋章は現状私が探れる唯一の手がかりともいえる。何とか情報を得たいものだが……
「この紋章を知っていそうな人物に、心当たりはありませんか?」
「ふむ……ああ、大司教殿なら、何か知っているやもしれん。彼はこういう文化っぽいことには詳しいからのう。」
「大司教様……確かにそうですね、聞いてみたいです。」
"文化っぽいことに詳しい"というのはなにぶんざっくりした表現な気がするが、大司教に聞くのは現状の最善に近いと言えよう。
「……とはいえ、私に大司教様とお話する機会があるかどうか……」
「それなら問題ないわい。ちょうど明日、会う用事があるからのう。それについてくれば良い。」
「それって、私などが行っても大丈夫なのでしょうか……?」
「なに、わしの知り合いなら別段問題ないわい。大司教殿とも面識があるのなら尚更のう。」
「……では、お願いします。」
本当に大丈夫なのか少し疑いつつも、私はエドガス様の提案を受け入れた。
「いやはやしかし、こんなに早く呪力視を習得するとはのう。」
紅茶を淹れながらエドガス様が切り出す。
「はは、自分でもびっくりです。とはいえ、まだ大分不安定なので、実用段階ではないですが……」
「一度できてしまえばあとは時間の問題じゃ。焦ることはないじゃろう。」
「はい。」
これまでも何度か通い、無事に呪力視の要領を掴むことが出来た。だが、より精度をあげるために、まだしばらくお世話になることだろう。
「ところで、お茶会の一件について、なにか進展はあったかのう?」
「ああ、それが……」
私は、ジークの父親である騎士団長に協力を仰いだこと、ラクアとの話し合いの中でソルード侯爵が容疑者に挙がっていることを告げた。
「ほう、ソルード侯爵が。それで、それ以降殿下や伯爵から追加の情報は無いと。」
「はい。調査は進めているようなのですが、やはり他国が絡むと慎重に動く必要があるようです。」
「ふむ……」
エドガス様は少々考え込む。
「……エドガス様の方で、なにか新たにわかったことはありますか?」
私はエドガス様が何か思うところがある様子なのを察し、尋ねてみる。
「ふむ……関係あるかは分からないのじゃが、預かった魔法銃に関して少々気になることがあってのう。」
「気になること?」
「実際に見てもらった方が早いじゃろう。少し待っておれ。」
そういうと、エドガス様は研究室へ向かい、しばらくして紙切れを持って戻ってきた。
「魔法銃に何か痕跡でもないかと調べておったら、隠し紋章が見つかってのう。」
「隠し紋章ですか?」
「ふむ。組織のシンボルマークなんかを、物や場所に特殊な方法で隠して付けておくんじゃよ。そうすることで、味方同士の痕跡を、自分たちだけが認知できるという訳じゃ。」
「それをよく見つけられましたね?」
「長年生きていると色んな悪知恵もついつい覚えてしまってのう。もしやと思い調べてみたんじゃ。まあ、かなり古い手法で隠されておったから、かえって見つけるのに手間取ってしまったがね。」
「なるほど……それで、その隠し紋章というのはどのような絵だったんですか?」
「それが、これなんじゃが……」
すると、エドガス様が先程持ってきた紙切れを見せる。どうやら、魔法銃に描かれていた絵を写したもののようだ。
その絵は、なんともホラーチックで不気味なタッチで描かれていた。
「これは……人の腕が生えた牛?ですかね?」
「恐らくそうじゃろう。なんにしても、随分と不気味な絵じゃわい。」
「うーん……この紋章に見覚えは?」
「すまんがないのう。もしこんな不気味な絵を見たら、忘れるとも思えぬし。」
「そうですか……」
当然、私もこの絵には見覚えが無い。だが、この紋章は現状私が探れる唯一の手がかりともいえる。何とか情報を得たいものだが……
「この紋章を知っていそうな人物に、心当たりはありませんか?」
「ふむ……ああ、大司教殿なら、何か知っているやもしれん。彼はこういう文化っぽいことには詳しいからのう。」
「大司教様……確かにそうですね、聞いてみたいです。」
"文化っぽいことに詳しい"というのはなにぶんざっくりした表現な気がするが、大司教に聞くのは現状の最善に近いと言えよう。
「……とはいえ、私に大司教様とお話する機会があるかどうか……」
「それなら問題ないわい。ちょうど明日、会う用事があるからのう。それについてくれば良い。」
「それって、私などが行っても大丈夫なのでしょうか……?」
「なに、わしの知り合いなら別段問題ないわい。大司教殿とも面識があるのなら尚更のう。」
「……では、お願いします。」
本当に大丈夫なのか少し疑いつつも、私はエドガス様の提案を受け入れた。
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