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新学期
第80話 バレンタイン①(アラン視点あり)
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「さて、これで今日の部活動は終わりだ。1週間お疲れ様。」
あれから1週間、今日が体験入部の最終日だった。
「はい、1週間ありがとうございました。」
今までここまで剣術に重きを置いて鍛錬したことは無かったので、とても良い経験となった。
「君はやっぱり筋がいい。僕としてはこのまま入部させたいところだけど、どうやら君にはもっと適した場所があるみたいだし、それはやめておこう。」
部長が部室の端に置かれているカメラを見ながら言う。
私がカメラで色々撮っていたのを見た部長が何やらカメラに興味津々だったのと、カメラの宣伝も兼ねて、試作品を1つ部活に寄付したのだ。
「とはいえ、気が向いたらいつでも遊びに来てもらって構わないし、なんなら入部してもいい。」
「はは……はい、ありがとうございます。」
こうして私は剣術部を後にした。
ーーーーーーーーーーー
あれから1週間が経とうとしていた。私は今女子寮のラウンジで宿題をこなしているところだ。
「これなんてどうかな…??」
「わああいいね!!」
「うーんどうしよう…」
すると、周りからそのような声が聞こえてくる。このように、ここ数日、何やら女子生徒がそわそわしている気がする。
なにか問題が起こったとか、悩みがあるとか言うよりは、色めきたっているという表現の方が適しているだろう。
その手のことに疎い私だが、それでもこれらの現象の原因にはおおよその検討がついている。
「ねえ、カナ?」
すると、いつの間に目の前にいたマリーに声をかけられる。
「ん?どうしたの??」
「その、もうすぐバレンタインじゃない?カナはどうするのかなと思って……」
そう、女子生徒が揃ってそわそわしているのは、他でも無いバレンタインが迫っているからである。
バレンタインと言えば、女性が好意を寄せている男性に手作りチョコレートを送るというのが前世の日本からの定番だ。そしてそれはこの世界でも同様である。
何故異世界にバレンタインなんて行事があるのかなどと思うかもしれないが、思い出して欲しい。ここは乙女ゲームの世界であるということを。
基本的には中世ヨーロッパと似ているこの世界だが、大きく違う点が2つある。魔法が存在することと、非常に日本的な恋愛イベントが盛大に開催されるということだ。
乙女ゲームの主軸はやはり恋愛だ。よって物語を盛り上げるためには、恋愛イベントを充実させる必要がある。そして、この乙女ゲーム「Amour Tale」のプレイヤーは9割方日本人である。
このことが、この世界の恋愛イベントの特異性を生み出している。
「カナ?どうしたの?」
マリーが私の顔を不思議そうに覗き込む。
しまった、また考え事をして沈黙していたらしい。
「ああいや、なんでもないよ。それでバレンタインだったっけ?私は普段関わってる人に義理チョコってことでブラウニーでも配ろうかと思ってたけど……」
「他には?義理チョコだけ??」
「え、うんそのつもり……」
「あら……」
マリーが残念がるような、不安そうな顔をする。
「ごめん、なにか不都合あった?」
「いいえその、不都合って程ではないのだけれど、仲間が……な、なんでもないわ!じゃあ、また明日!!」
「……??」
マリーはそのまま、急ぎ足で自分の部屋のある方へ行ってしまった。
一体どうしたのだろう。バレンタインで、先程のセリフ……
……あ。
ーーーーーーーーーーー
カナさんが剣術部での体験入部を終えてから、2週間以上が経った。
俺は今ジークと一緒に放課後の教室で雑談をしていた。
ここ数日、女子がいつになく忙しそうにしている。
マリーさんとカナさんも例に漏れず、授業が終わるとすぐに教室を出ていってしまった。
移動しようとするカナさんに理由を聞くと、「ああ、まあ、そのうち分かるよ。」という、なんとも曖昧な返事を貰った。
「なあ、女子たち揃いも揃ってなにしてると思う?」
俺はジークにたずねる。
「もうすぐバレンタインだからね、それの準備じゃないかな?」
「バレンタイン……?なんだそれ?」
「あれ、知らないの??」
ジークが首を傾げる。
「いやあ、そう言われてもなあ……それ人の名前か?」
「うーんと、たしか大昔の司祭さんの名前とかだったと思う!その司祭さんを祀るため……?あれ誕生日を祝うためだっけ……?……とにかくその人の為の行事だよ!」
「随分曖昧だな」
「えへへ……今ではただ女子が男子にチョコを送る日になっちゃってるからね!」
ジークがにこやかに言う。
「なるほど、だから知らなかったんだな俺……実家の道場は男しかいねえし。」
「確かに、基本的には女子が中心になって盛り上がるもんね、この行事!それにしても……マリーから貰えるといいね、チョコ!」
「え?ああ、そうだな」
そりゃあ、マリーさんから貰えるならなんでも嬉しい。
「あれ?」
ジークが不思議そうな顔をする。
「え、なんだ?」
「あ、いや、なんでもない!」
「そうか……?」
今、完全に何かある反応じゃなかったか?
あれから1週間、今日が体験入部の最終日だった。
「はい、1週間ありがとうございました。」
今までここまで剣術に重きを置いて鍛錬したことは無かったので、とても良い経験となった。
「君はやっぱり筋がいい。僕としてはこのまま入部させたいところだけど、どうやら君にはもっと適した場所があるみたいだし、それはやめておこう。」
部長が部室の端に置かれているカメラを見ながら言う。
私がカメラで色々撮っていたのを見た部長が何やらカメラに興味津々だったのと、カメラの宣伝も兼ねて、試作品を1つ部活に寄付したのだ。
「とはいえ、気が向いたらいつでも遊びに来てもらって構わないし、なんなら入部してもいい。」
「はは……はい、ありがとうございます。」
こうして私は剣術部を後にした。
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あれから1週間が経とうとしていた。私は今女子寮のラウンジで宿題をこなしているところだ。
「これなんてどうかな…??」
「わああいいね!!」
「うーんどうしよう…」
すると、周りからそのような声が聞こえてくる。このように、ここ数日、何やら女子生徒がそわそわしている気がする。
なにか問題が起こったとか、悩みがあるとか言うよりは、色めきたっているという表現の方が適しているだろう。
その手のことに疎い私だが、それでもこれらの現象の原因にはおおよその検討がついている。
「ねえ、カナ?」
すると、いつの間に目の前にいたマリーに声をかけられる。
「ん?どうしたの??」
「その、もうすぐバレンタインじゃない?カナはどうするのかなと思って……」
そう、女子生徒が揃ってそわそわしているのは、他でも無いバレンタインが迫っているからである。
バレンタインと言えば、女性が好意を寄せている男性に手作りチョコレートを送るというのが前世の日本からの定番だ。そしてそれはこの世界でも同様である。
何故異世界にバレンタインなんて行事があるのかなどと思うかもしれないが、思い出して欲しい。ここは乙女ゲームの世界であるということを。
基本的には中世ヨーロッパと似ているこの世界だが、大きく違う点が2つある。魔法が存在することと、非常に日本的な恋愛イベントが盛大に開催されるということだ。
乙女ゲームの主軸はやはり恋愛だ。よって物語を盛り上げるためには、恋愛イベントを充実させる必要がある。そして、この乙女ゲーム「Amour Tale」のプレイヤーは9割方日本人である。
このことが、この世界の恋愛イベントの特異性を生み出している。
「カナ?どうしたの?」
マリーが私の顔を不思議そうに覗き込む。
しまった、また考え事をして沈黙していたらしい。
「ああいや、なんでもないよ。それでバレンタインだったっけ?私は普段関わってる人に義理チョコってことでブラウニーでも配ろうかと思ってたけど……」
「他には?義理チョコだけ??」
「え、うんそのつもり……」
「あら……」
マリーが残念がるような、不安そうな顔をする。
「ごめん、なにか不都合あった?」
「いいえその、不都合って程ではないのだけれど、仲間が……な、なんでもないわ!じゃあ、また明日!!」
「……??」
マリーはそのまま、急ぎ足で自分の部屋のある方へ行ってしまった。
一体どうしたのだろう。バレンタインで、先程のセリフ……
……あ。
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カナさんが剣術部での体験入部を終えてから、2週間以上が経った。
俺は今ジークと一緒に放課後の教室で雑談をしていた。
ここ数日、女子がいつになく忙しそうにしている。
マリーさんとカナさんも例に漏れず、授業が終わるとすぐに教室を出ていってしまった。
移動しようとするカナさんに理由を聞くと、「ああ、まあ、そのうち分かるよ。」という、なんとも曖昧な返事を貰った。
「なあ、女子たち揃いも揃ってなにしてると思う?」
俺はジークにたずねる。
「もうすぐバレンタインだからね、それの準備じゃないかな?」
「バレンタイン……?なんだそれ?」
「あれ、知らないの??」
ジークが首を傾げる。
「いやあ、そう言われてもなあ……それ人の名前か?」
「うーんと、たしか大昔の司祭さんの名前とかだったと思う!その司祭さんを祀るため……?あれ誕生日を祝うためだっけ……?……とにかくその人の為の行事だよ!」
「随分曖昧だな」
「えへへ……今ではただ女子が男子にチョコを送る日になっちゃってるからね!」
ジークがにこやかに言う。
「なるほど、だから知らなかったんだな俺……実家の道場は男しかいねえし。」
「確かに、基本的には女子が中心になって盛り上がるもんね、この行事!それにしても……マリーから貰えるといいね、チョコ!」
「え?ああ、そうだな」
そりゃあ、マリーさんから貰えるならなんでも嬉しい。
「あれ?」
ジークが不思議そうな顔をする。
「え、なんだ?」
「あ、いや、なんでもない!」
「そうか……?」
今、完全に何かある反応じゃなかったか?
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