乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

文字の大きさ
上 下
79 / 115
新学期

第79話 体験入部②

しおりを挟む
「「「1!!2!!1!!2!!」」」

あれからしばらく経ち、私は他の部員達に混じって剣の素振りをしていた。

動きは一応遅れずついていけているし、体力面に関しても、途中から参加したのでまあなんとか……といったところだ。

「全体、やめ!!」

すると部長の号令が入り、部員の動きが一斉に止まった。私もそれに合わせ素振りを止める。

「それでは、今から実戦演習に入る。いつも通り準備するように。」
「はい!!」

部員達は元気に返事をすると、迷うことなく試合の準備に入る。

私は何をすれば良いかと考えていると、部長がこちらに近づいてきた。

「さて、全体に指示した通りこれから実戦演習を行うから、君はそこのグループに入れてもらうといい。」

部長が訓練場の端の方に固まっている集団を指して言う。

「あそこは君と同じ入学後から剣術を習い始めた1年生が主だよ。君にとっては物足りないかもしれないけど、今日は初日だから部活動の流れを掴む意味でも丁度いいだろう。」
「はい、それでお願いします。」
「さて、演習の流れは彼らが教えてくれると思うけど、その前に俺に聞いておきたいことはあるかい?」
「えっと……」

私は少し考え込み、あることを思い出した。

「ああそうだ、演習の様子を記録しても良いでしょうか?」
「うん、構わないよ。ノートかなにか持ってきたのかい?」
「あ、いえノートではなく……えっと、取ってきますね」
「……?」

私は少し不思議そうな表情を浮かべる部長を尻目に、自分のバッグからあるものを持ってくる。

「これを試してみようかと思いまして。」
「これは……」
「カメラです。」
「かめら……聞いたことがないね。」

部長が首を傾げながら言う。

「あ、それ!」

すると、こちらを見ていたアランが近寄ってきた。

「前に魔法研究部で作ってた一瞬で絵が描ける機械!」
「そう。試作品ができたから、試してみようと思って。」

このカメラはアランの言う通り、ノアさんと一緒に魔法研究部で作成したものである。

サイズは前世の一眼レフと同じ位のサイズ感で、レンズとシャッターボタン、写真の取り出し口がある。

そもそもカメラというのは、ものにもよるが、大体は外の光をレンズによってカメラ内に入れ、その光をフィルムに当てて記録するというのがざっくりした仕組みである。

前世では、最初のカメラはフィルムの色が変化するのに必要な光がとても多く撮影に8時間かかったそうだ。この間動いてはいけないため、とてもじゃないが人間を撮るのは無理だ。というか多分絵を描いた方が早い。そのため制作当初は果たして人物を撮影するのに実用レベルになるのかと危惧したものだが、ここは異世界。蓄音機のとき同様この世界固有の材料が見つかった。

レンズは通常ガラスを使って制作するのだが、この世界には集光ガラスという、周りの光を集め光るガラスが存在した。これは主に夜月の光を集めて光らせて、ランプ代わりに使われているようだ。これをこのカメラのレンズに採用したため、集光にかかる時間、つまりはシャッター速度を大幅に短縮できた。

フィルムに関しては顧問の先生の助言から丁度良さそうなものを選んだ。中には日の光を当てると一瞬で白くなるようなものもあったのだが、そこまでくると暗室で取り出しても僅かな隙間の光で全て真っ白になってしまい写真の体をなさないため、取り扱い方を確立できるまでは使わないことにした。

そんなこんなで、このカメラのシャッター速度は約0.3秒である。1/1000秒などにも設定できるデジタルカメラと比べるとかなり遅いが、大まかな記録や記念写真にはそれほど支障はない。

というのも、そもそもカメラを作ったのは、ベークマンと夜の王都を見回りしたときに思いついた、防犯カメラの作製のためである。

当初はすぐにでもビデオカメラを作って設置して警備隊が遠隔で見られるようにして……なんて考えていたが、私のなけなしの知識とエドガス様の話を聞く限り、そうトントン拍子に話を進めるのは厳しそうだった。

それと、そもそもこの世界にはカメラという存在がないため、いきなり防犯カメラをつけたところでただ不気味な物体が壁についているだけになるし、そもそも防犯カメラの設置を許して貰えない可能性が高い。

そのため、とりあえず普通のカメラを作製し、実用化出来次第、商人に売り込んで商品化・販売してもらおうと考えている。

今日はとりあえず、商人に売り込むための資料写真の撮影と、動いている人間をどれくらい撮れるかの確認用に持ってきた。

「……ほう、なるほどね。」

私は何も説明していないのに、何かを納得した様子の部長がつぶやく。

「使用しても問題ないでしょうか?」
「ああ、大丈夫だよ。たまに木剣が飛んでくることがあるから、壊さないようにだけ気をつけてね。」
「はい、ありがとうございます。」

こうして私はカメラ片手に、実戦演習に参加した。

―――――――――

バシッ!!

「のわっ!?」
「勝者、カナ・ベルナール!」

「なっ…また勝った…!」
「部員でもないのに強すぎる……アランともいい勝負じゃないか??」

私と部員の試合を見ていた他の部員たちがつぶやく。

さて、これで3戦3勝か。なかなか順調だ。

しかしアランといい勝負などという声が聞こえてくるが、この前アランと対戦したときは最初の頃よりは善戦したものの、相変わらず一本も取れずに終わった。

なんにせよ、前よりは剣だけでも戦えるようになってきているのは確かだ。

カシャッ!

そしてカメラの調子も悪くない。シャッター速度がデジカメなどと比べるとかなり遅いため、速く振られた剣と剣を振るう腕はもはやただの残像だが、それ以外は顔が認識できる程度には撮れている。

これで風景や止まっている人物の撮影だけでなく動いている人物も……

バギッ!!ガッ!!

「おい、向こうでアランとベークマンの試合やってるぞ!!」

私と同じグループの部員が叫ぶと、それを聞いた他の部員たちがアランとベークマンの方へぞろぞろと移動する。

私もそれについて行き、せっかくだからと2人が試合している方にカメラを構える。

カシャッ!!

ジーー

このカメラは写真を撮るとすぐ現像されるようになっている。

出てきた写真には、比較的小さなモヤモヤと、大きなモヤモヤが写っていた。

アランとベークマンの動きが先程撮った部員達に比べ速すぎて、体全体が残像と化したのだ。

……やはり、動いている人物に関してはもっと改善の余地がありそうだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―  “賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。  だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。  当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。  ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?  そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?  彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?  力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜

ネリムZ
ファンタジー
 唐突にギルドマスターから宣言される言葉。 「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」  理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。  様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。  そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。  モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。  行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。  俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。  そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。  新たな目標、新たな仲間と環境。  信念を持って行動する、一人の男の物語。

僕と精霊 〜魔法と科学と宝石の輝き〜

一般人
ファンタジー
 人類が魔法と科学の力を発見して数万年。それぞれの力を持つ者同士の思想の衝突で起きた長き時に渡る戦争、『発展戦争』。そんな戦争の休戦から早100年。魔法軍の国に住む高校生ジャン・バーンは精霊カーバンクルのパンプと出会いと共に両国の歪みに巻き込まれていく。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...