乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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新学期

第77話 vs剣術部部長②

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「いい加減、僕も攻めなきゃね。」

ダッ!

「おおっと、今度は部長がカナさん目掛けて飛び出した!」

さて、今度はどうするか。

"固体化・アクアウォール"

ガキィィィン!!

「カナさん、冷静に防御し部長の勢いを止める!」

"アクアバインド"

バシッ!

私は部長の手足を拘束する。

「グランドランス!」

ゴォォォォ!!

「…っ!」

「部長の土の槍がカナさんに直撃!結構吹っ飛ばされたが大丈夫か!?」

今まで魔法で攻撃はしてこなかったから油断していた…ガードしたのでダメージはそれほどでは無いが、今の衝撃で部長を拘束していた魔法が解けてしまった。やはり魔法がまともに使える人間は捕まえてはい終わりでは済まないな…

ダッ!

部長は方向を変え、再び私の方へ突っ込んでくる。

仕方ない、正面衝突は避けられないか…

ガキィィィン!!

「おおっと!部長とカナさんが直接ぶつかった!!カナさんは少し苦しそうか!?」

1度特に対策はせず水惑刀で受けてみたが、威力が尋常では無い。

この一撃で手が痺れるレベルだ。

ガッ!ガキィン!!

そのまま攻防が続く。

"幻影"

ガキィィン!!

私が幻影を使って隠れると、部長は一瞬戸惑ったがすぐに私の居場所を捉える。

"幻影"解除

カキィィン!ガッ!

"幻影"

「カナさん、今度は"幻影"を使っては解除しを繰り返しながら部長の猛攻を上手く耐えているぞ!この"幻影"には意味があるのか!?」
「そんなん、部長に魔力視と普通の視覚を切り替えさせて混乱させるために決まってんだろうが。あいつがやりそうなことだ。」
「あ、おいベークマン!本人達に聞こえるように作戦バラしたら不公平になるだろ!てか俺も分かってて言わなかったんだぞ!」
「ああ?なんでそんな回りくでぇことしてんだよ?」

……気が散るから、実況と解説で揉めないで欲しい。

ちなみにベークマンの言っている通り、私が"幻影"を繰り返し使っているのは部長を撹乱するためだ。魔力視を使った視界と通常の視界は暗さがかなり違う。魔力視の視界は、魔力があるもの以外はかなり暗く映るのだ。それを切り替えるとサングラスを付け外ししているような状態になるので、あまり繰り返すと目がおかしくなってくる。

ベークマンによって意図はばらされてしまったが、まあバレたところでどうにかできる訳でもないので問題ない。というか、アランとベークマンが気がついたことに部長が気づかないとは考えづらいし。

"幻影" 解除

〘水惑刀〙«重飛水撃»

ガッ!カンッ!ザクッ!!

「……っ!!」

「カナさんの攻撃が部長に1つ当たったぞ!これは痛い!」

ようやく隙ができ、一撃食らわせることができた。

「それなら…!」

部長がつぶやく。どうやら魔力視を常時使うことにしたらしい。

ちなみに、魔力視を使っている人間は、目が少し光る。遠巻きだと分かりづらいが、今は近くで対峙しているのでわかりやすい。

ガキィィン!!

「……っ!」
「部長、焦っている様子!今度はどうしたんだ?」

キィィィン!

「…そういう、ことか…」

部長は私と剣を交えながら呟く。

そう、彼の魔力視の視界で光って見えるのは、私の他に、地面全体にある水たまりだ。

これは先程の"大洪水"で落ちてきた水で、これらは魔法で生成された水なので魔力視では光って見える。

しかも私も水を被っているので、一見すると地面と同化して見える。通常の視界と魔力視の視界で切り替えているうちは通常の視界で見た場所からある程度の位置を推測できる。おおよその位置が分かっていれば水溜まりと私の区別もつく。だが、ずっと魔力視を使うとそれすら分からなくなる。かといって通常の視界に戻せばまた私が"幻影"で隠れてしまう。という塩梅だ。

さて、じゃあこのまま試合を続けるとしよう。


――――――


ピッーーー!!

しばらく攻防を続けていると、笛の音が高らかに鳴った。

「30分経過!試合終了です!!双方まだ立っている!よってこの勝負引き分けだ!!」

「ハァ、ハァ……」

30分の試合が終わり、さすがに体力の限界が来て、私は肩で息をしていた。しかし、怪我らしい怪我はしなかったので上々だ。

「………」

一方の部長は、いくらか切り傷は作ったものの息が乱れている様子はない。一体どれだけ体力があるのか…

「……君、最初から引き分けに持ち込むつもりだったでしょ?」

部長は剣を鞘に収めながら私に問う。

「はい。剣術に長けていて、魔力量も多い部長相手にどうにも勝てるとは思えなかったので。」

それに、この試合の目的はベークマンに私の力量を確かめさせることだ。開始早々一か八かで勝負をかけてあっさりやられるより、多少セーブしてでも長期戦に持ち込んだ方がベークマンも満足するだろうと考えたのだ。

「ハハ、確かに、それはそうだ。それで、賭けの方はどうする?決着が着くまでまた戦う?」

「……部長さんが良ければ、体験入部を1週間して、その間に魔法陣の消し方を教えてもらうというのはどうでしょう。」

「賭けを無効にするのではなく、互いの要望を受け入れて折衷案にしようってことか。いいね、そうしよう。というか、僕が勝ったらどの道«キャンセル»は教えてあげるつもりだったけどね。」
「え」

「じゃあ、そういうことで。早速明日から来るといいよ。」

どの道教えるつもりだったって、それじゃあ骨折り損の……いや、まあいずれにせよ教えて貰えるのだから良しとしよう。


「おい、カナ・ベルナール!!やっぱ俺とも勝負しろ!!」

その後、我々の試合に感化されたベークマンをいなすのに苦労したのだが、それはまた別の話。
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