乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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新学期

第76話 vs剣術部部長①

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「それじゃあ、ルールは魔術大会のときと同じでいいかな?制限時間は30分、武器は使用可だけど魔道具は使用不可、その他もろもろ法律に触れるようなこともしてはいけない。」

「はい、それで大丈夫です。」

私たちは第1演習場、通称コロシアムまで移動し、勝負の準備をしていた。

最初はベークマンとアラン、部長と私だけの話だったのに、噂を聞きつけたのか他の剣術部員まで観戦に来ている。

しかし、了承を得た上での勝負とはいえ、先輩に怪我を負わせるのは良くないのではないか?かと言って手加減して勝てる相手でも無いだろうし……

「一応言っておくけど、これは流れで始まったとはいえ真剣勝負なんだから、僕を怪我させないようにとか、手加減しようとかはくれぐれも考えないように。」
「……はい。」

見事に念を押されてしまった。仕方ない、本気でやるとしよう。

「あ、僕の魔法適性を教えておこう。魔力量は250、属性土、傾向は中立だ。」

傾向中立……?珍しいな。しかし、そうなると魔法を攻撃中心で使うか防御中心で使うか予測が立てづらい。戦いながら見極めていくしかないか……

そして魔力量は250か。私よりは低いが、相手は何より剣術部の部長なので、この程度のアドバンテージでは正直かなり厳しいものがある。

とはいえ、やるしかない。

「私の魔法適性は……」

「ああ、言う必要はないよ。実は魔術大会での様子を少し見たことがあるんだ。具体的な魔力量と傾向は知らないけど、それだけ見てれば大方分かるし。」

「なるほど、そういうことなら分かりました。」

「じゃあ、そろそろ始めようか。あの剣を作る魔法は予め用意しておいて大丈夫だよ。」

「はい。」

私は言われたとおり、〘水惑刀〙を創り構える。

カチャ……

部長も剣を構える。それも長剣と短剣の2本だ。どうやら部長は二刀流らしい。

「じゃあ、いきますよ!」

叫んだのはアランだ。どうやらアランとベークマンが審判をするらしい。

「それじゃあ!…えっと…制限時間は30分!始め!!」

少々グダグダな掛け声と共に、試合が始まった。

ダッ!

私はとりあえず飛び出した。部長は始めの場所から動こうとしない。

そのまま斬りかかろうとしたそのとき、部長はニヤリと笑った。

ガキィィン!!

「おーっと!部長が背後の水の槍とカナさんを同時に受け止めた!!」

まさか、これに対応してくるとは。

私は試合開始前に、アクアジャベリンを部長の背後にバレないように準備しておき、私が斬りかかるのと同時に部長にぶつけた。

ダメージを入れられなかったのは残念だが、おそらくアクアジャベリン無しで斬り掛かったらそのまま弾き返され斬られて終わっていたので、まあそれよりはマシだろう。

バサッッ!!

「そして部長、そのままカナさんを弾き飛ばした!」

ザザ…!

私は弾かれ、大分後方に飛ばされた。片手でこの威力か…

「固体化・ウォーターソード」
「おおっとカナさん!空中に水の剣を作り出した!」

私はアランの言うように、5本の剣を出した。というか、随分ノリノリだなアラン。

「おお、5本も出せるようになったんだね。」

部長が落ち着いた様子で言う。

私は水の剣を部長に向けて放ち、自分は"幻影"で隠れる。さて、部長は魔力視を持っているだろうか。

「ふむ…グランドウォール」

ゴォォ……!!

カキィィン!

部長に放った水の剣は、見事に土の壁で防がれた。

"アクアランス"

私は部長の正面に10個ほど魔法陣を展開し、ランドルトやラクアと同じようにアクアランスを放つ。固体化していない分威力は低いが、スピードは出る。槍は土の壁を避けて進んでいく。

ゴォォ…!

すると、部長が今度は自分の周りにドーム状の壁を張った。

ガガガガガッッ!!

水の槍は壁をえぐりながら攻撃する。10本全て当たった頃にはかなり損傷していた。

"固体化・ウォーターソード"

〘水惑刀〙・«重飛水撃»

ガキィィィン!!

「……!」
「おおっと部長、飛水撃と2本の水の剣の攻撃を、剣と新たな土の壁で受け止めた!!」

これでもノーダメージか…!

魔法の扱いのレベルでは決して遅れは取っていないが、やはり本人が強すぎる。そして私の攻撃をしっかり防いでいる辺り、魔力視も使えていそうだ。

«大洪水»

「おおっと今度は上から"大洪水"だ!さすがの部長も防ぎきれないか?」

部長はウォーターソードで両脇から押さえつけたままなので、両手が塞がっている。壁を作っても完全に避けるのは無理だろう。ちなみにこのままだと私も巻き込まれるが、"デトニール"でいなすので問題ない。

「部長どうした!?魔法も使わず避ける気配もないぞ!!」

どういうことだ。そのまま食らったらさすがの部長もタダじゃ済まない。

こうしている間にも、予定水量の5分の1程度の水が魔法陣から放出されている。まだ地面に到達するには猶予があるが…

«キャンセル»

キィィィィン!!

「な……!?」

これは…まさか…!

「な、何が起きた!?カナさんの作った«大洪水»の魔法陣が、突如消えてしまったぞ!!」

魔法陣を消す技…魔術大会中に会ったあの中年男と同じ…!

ザバァァァ!!

そうこうしているうちに、魔法陣を消される前に出ていた水が思いっきり落ちてきた。

部長はもちろん、動揺していた私も思いっきり被ってしまった。だが少量だし水が自由落下してきただけなので、2人ともさほどダメージはない。

「…ねえ、1つ賭けをしない?」

突然、部長が話しかけてきた。

「…賭け、ですか?」
「うん、僕が勝ったら1週間剣術部に体験入部してもらう。そしてもし君が勝ったら好きなことをなんでも1つ叶えよう。」

何故今になってそんなことを…?勝ちを確信したのか?

…まあいい、体験入部ならそこまで痛手でもないし、私も部長へ用ができた。

「分かりました。では、私が勝ったら今魔法陣を消した方法を教えてください。」
「…分かった。じゃあやろうか、続き。」
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