乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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新学期

第71話 ジークへの誕生日プレゼント①

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「さて、今日から2学期が始まります。心機一転頑張りましょう!」

冬休みが終わり、今日から2学期である。帰りのHRホームルームが終わったところだ。

「今日からまた授業だね、カナ!」
「そうだねジーク。冬休み中はあんまり勉強してなかったからまた徐々に授業に慣れていかないと。」

「そう言って、どうせ冬休み中もガッツリ勉強してたんだろ?」

そう言いながらこちらにやってきたのはアランだ。

「アラン久しぶり。元気にしてた?」
「おう!いつも通り親父にシバかれまくったけどな!」
「アランのお父さんは相変わらずだね~」

「あら、おはよう皆さん!」

続いてマリーもやってきた。

「あ、マリーさん!」
「お久しぶり、アランさん、ジークさん!カナは数日ぶりね!」
「そうだね」

そう、私とマリーは冬休み中2回ほどスイーツを食べに行ったため、最後に会ってからさほど日数は経って居ないのだ。

――――――

そこから久しぶりに4人揃って談笑した。

「そういえば、もうすぐジーク誕生日か?」
「あ、うん!1週間後だよ!」

そういえば1月が誕生日だと言ってたな…

「あら、それならプレゼント用意しないとね!」

確かにプレゼント用意した方が良さそうだな……

プレゼントは何がいいだろうか?

そういえば、建国祭のときに考えたあれ・・、作ってあげればプレゼントになるんじゃないか…?

そうとなれば早速作ってみよう。

――――――

というわけで、私は魔法研究部に来ていた。

「あ、カナさん久しぶり!」

挨拶してくれたのはノアさんだ。

「久しぶりノアさん。元気だった?」
「うん、冬休み遊びまくっちゃった!」
「ハハ、それは良かった」

話しながら、私は1枚の紙を取り出す。

「カナさんそれ何!?」

その瞬間、ノアさんが食いついてきた。

「これは蓄音機の設計図だよ。実際に作ってみないと上手くいくか分からないけどね。」
「ちくおんき…?」
「うん。蓄音機って言うのは…」

私はノアさんに説明した。

蓄音機とは、声や音の振動をレコードに傷をつけることによって記録し、その音の記録から音声を再生する機械である。

これは建国祭でジャズもどきを聞いていたときに、ジークが"こういう場(建国祭等)でしか聞けないのが残念だなあ"と言っていたときから作ってみようと思っていたものだ。

あの後色々調べてみたが、蓄音機やそれに似た道具に関する記述は見当たらなかった。つまりこれを作れば、恐らくこの世界においては初の蓄音機ということになる。

ちなみに前世で円筒式の蓄音機を発明したのは、発明家として有名なトーマス・エジソンである(蓄音機自体はその前にフランス人が作ったとか何とかどこかに書いてあった気がするが)。

「…なるほど!そんなこと今まで考えたこと無かった…!」

私の説明を聞き終えたノアさんが発言する。彼女は目を輝かせて、私の設計図と顔を交互に見ている。

「ねえそれ、私も手伝えない??」
「あ…うん。そうして貰えると私も助かるよ。」
「本当??やった、頑張りましょ!!」

こうして、私とノアさんによる蓄音機作りが始まった。

「とりあえず材料に何を使うかなんだけど…」
「土台は木でいいし、ホーンもとりあえずそこまでこだわる必要はないよね?」

ちなみに"ホーン"と言うのは、録音のときに音を拾ったり再生するときに音が出てきたりする場所(トランペットみたいなやつ)のことである。

「そうだね。動力源も魔石か畜魔石を使えばいいし…やっぱり問題は針と円筒かな。」

蓄音機は録音と再生、この2つの手順を踏む。

まず録音では、円筒に針を置き、回転・スライドさせながら針につけたホーンに向かって音を出すことで、針がその音に合わせて振動し、円筒に傷をつける。この円筒がレコードである。

次に再生では、録音で作ったレコードの溝に合わせて針を置き、録音のときと同じように回転・スライドさせることでレコードに刻まれた音の振動の記録が読み取られ、ホーンから再生される。

ちなみに、いわゆる"レコード"と聞いて思いつく円盤型の蓄音機と、この円筒式の蓄音機は基本的に原理は同じである。今回は大量生産する訳ではないことと、円筒式の方が設計しやすかったのでこちらを採用した。

「あ、ねぇねぇカナさん?さっきの説明で録音と再生の仕組みは大体わかったんだけど、それだと再生するときにまた音が上書きされない?だって録音と再生ってやってること同じじゃない…」

そう、考えるべきはそこである。録音と再生は、どちらの手順もほぼやっていることが同じである。

そのため、工夫なしにやると、延々と録音を上書きするだけで、一向に再生ができない。

「ああそれは、針の種類を変える必要があるんだよ。」
「針を?」
「そう。録音用の針は円筒に傷をつけやすい針に、再生用の針は円筒に傷をつけづらい針にすれば、再生するときに上書きすることなく、元々記録されていた傷に沿って針が動いて音が再生されるってわけ。」 
「なるほどね!」

確かエジソンの蓄音機はそうしていたはずだ。でもせっかくなのでもう少しこの世界ならではのオリジナリティが欲しい。

「…それか、ひと手間加えると形を変えないまま強度が上がるような材料でもあれば、それを円筒に使うことで針を変えずに再生できるかも知れないけど…」
「ふむ…」

ノアさんは少し考え込む。

「…あ!それなら魔硬石まこうせきはどう?」
「魔硬石?」
「そう!建築材とかに使われてるんだけど、何もしない状態では木よりも脆いのに、魔石とかで魔力を当ててあげると鉄並に硬くなるの!」
「そんなものが…」
「建築材としては高めだけど、蓄音機用に少し使うくらいなら端材貰えたりするんじゃないかな?」
「いいね、使ってみようか。」

そんな素晴らしい材料があったとは。早速使ってみるとしよう。

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