70 / 115
冬休み
第70話 ベークマンと王国の治安③
しおりを挟む
そこから私たちは夜の城下町を見て回った。
大通りは街灯も多いが、少しでも道をそれるとほぼ明かりはない。
「やっぱり出歩くにしては暗すぎるよね…」
「そうか?」
「え、うん…こんなに暗いと周りが見づらいし、怖くて出づらいと思うよ?」
「見づらい?昼間と対して変わんねえだろ。」
いや、ほぼ月明かりしかないのにそれは無いと思うんだが…一体ベークマンの視力はどうなっているんだろうか。ライオンかなんかか。
「それは多分ベークマンの目が良すぎるだけだと思うよ…私は多分平均的な視力だけどすごく見づらいし。街全体の治安を考えるなら平均的な人に合わせた方がいいでしょ?」
「へぇ…そういうもんか。」
「そういうものだよ。やっぱり大通り以外にも街灯はつけるべきだよな…」
実際、街灯を設置したら犯罪率が減ったとかいう話がアメリカか何かであった気がする。
「じゃ、あとは路地裏の方だな。」
「そうだね」
そのまま広い道をそれて路地裏に入っていくと、月明かりすらろくに届かずさらに暗くなっていた。
「さすがにここまで来ると暗えな。」
「だね、私はほとんど見えてないよ。」
――
一方、カナとベークマンを暗闇に潜んで見ている男が2人いた。
「なあ、あの女もしかして金持ちの娘かなんかじゃねえか?」ボソッ
「なんでそうなるんだよ?」ボソッ
「だってよ、あのデカブツぜってーボディガードだろ」ボソッ
「でも女の服安そうじゃね?」ボソッ
「変装でもしてんだろ?」ボソッ
「確かにな、じゃあいっちょやるか!」ボソッ
――
「…で、暗いと何が問題なんだ?」
そうきたか…
「1番は人目につきづらくなることかな。昼間の暴れてた人達が警備隊が来ないから暴れてたみたいに、夜は人に見つかりづらいから薬物の売買したり、追い剥ぎしたり…っていうのが増えるんだよ。夜でも…」
「今だ!」
男2人組が小声で合図しあった後、カナ目掛けて突進する。
「夜でも、なんだよ。」
「とりあえずその話の前に…」
「ああ、そうだな。」
「くたばれ!」
「捕まってもらおうか。」
バシッ!ドガッ!ゴンッ!
「グハッ!!」
「ギャッ!!」
バシッ
私は返り討ちにした2人をまた水魔法で拘束する。
「で、さっきの話の続きだけど、夜でも明るければ人に見つかりやすくなるから、こういうことをしづらくなるってわけ。」
「…こいつらは何しようとしてたんだ?」
「大方、私たちが大男と女の組み合わせで歩いてるからどこぞの金持ちの娘とその護衛と勘違いして、私の所持金を巻き上げようとしたんじゃないかな?護衛の方も暗闇なら対応しきれないだろうと考えてね。とはいえ実際のベークマンはやたらと夜目が効くし、私も魔力視で人の位置は把握できるからそうはいかなかったみたいだけど。」
「なるほどな。」
――――――
私たちはその後、警備隊に先程の2人組を預けにいった。
「で、あとはどうするんだ?」
「うーん、大体状況は分かったし、今日は解散でいいんじゃない?あとは各自で仕事しようってことで。」
「おう、次の武術指南が楽しみだ。」
そんなベークマンの一言を聞いてしまった警備隊の人達が震え上がっていることに、ベークマン自身は気づかないのであった。
…てか、昼間にベークマンの"教育"を恐れてすごく謝っていたのに、結局"教育"受ける羽目になるんだな、あの人たち…自業自得だけど。
――――――
翌日、私はまたエドガス様の屋敷に来ていた。
「呪力視の習得の方はどうかのう?何かコツは掴んだかな?」
「何となく分かっては来ている気がするのですが…まだ完全な習得までには時間がかかりそうです。」
「ホッホッ、まあワシも習得には2ヶ月程かかったからな、焦らずやれば良いじゃろう。」
「…はい。」
貰った資料には"通常習得には5~10年かかる"って書いてあったけど…エドガス様に"通常"を求めるだけ無駄か。それを言ったら私も習得に3年かかると言われている魔力視を1ヶ月足らずで習得したわけだし。
カチャッ
私は頂いた紅茶を飲む。
「…ところで、今日は呪力視とは別件も兼ねて来たのですが…」
「ふむ…して、その内容は?」
「実は…」
私はベークマンとの監察でのことを説明した。
「…それで、街灯と防犯カメラを設置したいのですが、比較的安価で実現する方法に、心当たりはありますでしょうか…?」
「はて…街灯はともかくかめら、とな?」
しまった、この世界にカメラは無かったか。でもやっぱり街灯だけじゃ心もとないしな…
「はい…なんというか、その場の情景を絵のようにして記録するものと言いますか…」
「ほう…それが防犯になるのかの?」
「その記録を警備隊がリアルタイムで見られるようにすれば、何かあったときにわざわざ誰かが警備隊を呼びに行かずとも、警備隊自ら見つけて駆けつけることができます。それに設置するだけでも、人々は"誰かに見られている"という感覚に陥るので、犯罪の減少に期待が持てます。」
「ホッホッ、なるほど。面白いことを考えるのう、さすがはお嬢さんじゃ。」
こんな適当な説明で理解出来るエドガス様もさすがだけどね。
「街灯の方はワシの方で何とかできそうじゃが、かめらはパッとはできそうにないのう…」
「それでは、一応ざっくりとした設計は考えてきたのですが、どういう材料や魔導具があるのか把握していなくて…それを確認していただくことは可能でしょうか?」
「それくらいならもちろん構わんよ。」
カメラの基本的な仕組みは理解しているつもりだが、前世のカメラをそのまま再現できるほどの知識はないので、曖昧な部分は既存の魔導具で代用できるといいが…
――――
一通りエドガス様に確認したところ、どうやら試作品位は作れそうだったので、材料を揃えて今度部活で作ってみよう。
大通りは街灯も多いが、少しでも道をそれるとほぼ明かりはない。
「やっぱり出歩くにしては暗すぎるよね…」
「そうか?」
「え、うん…こんなに暗いと周りが見づらいし、怖くて出づらいと思うよ?」
「見づらい?昼間と対して変わんねえだろ。」
いや、ほぼ月明かりしかないのにそれは無いと思うんだが…一体ベークマンの視力はどうなっているんだろうか。ライオンかなんかか。
「それは多分ベークマンの目が良すぎるだけだと思うよ…私は多分平均的な視力だけどすごく見づらいし。街全体の治安を考えるなら平均的な人に合わせた方がいいでしょ?」
「へぇ…そういうもんか。」
「そういうものだよ。やっぱり大通り以外にも街灯はつけるべきだよな…」
実際、街灯を設置したら犯罪率が減ったとかいう話がアメリカか何かであった気がする。
「じゃ、あとは路地裏の方だな。」
「そうだね」
そのまま広い道をそれて路地裏に入っていくと、月明かりすらろくに届かずさらに暗くなっていた。
「さすがにここまで来ると暗えな。」
「だね、私はほとんど見えてないよ。」
――
一方、カナとベークマンを暗闇に潜んで見ている男が2人いた。
「なあ、あの女もしかして金持ちの娘かなんかじゃねえか?」ボソッ
「なんでそうなるんだよ?」ボソッ
「だってよ、あのデカブツぜってーボディガードだろ」ボソッ
「でも女の服安そうじゃね?」ボソッ
「変装でもしてんだろ?」ボソッ
「確かにな、じゃあいっちょやるか!」ボソッ
――
「…で、暗いと何が問題なんだ?」
そうきたか…
「1番は人目につきづらくなることかな。昼間の暴れてた人達が警備隊が来ないから暴れてたみたいに、夜は人に見つかりづらいから薬物の売買したり、追い剥ぎしたり…っていうのが増えるんだよ。夜でも…」
「今だ!」
男2人組が小声で合図しあった後、カナ目掛けて突進する。
「夜でも、なんだよ。」
「とりあえずその話の前に…」
「ああ、そうだな。」
「くたばれ!」
「捕まってもらおうか。」
バシッ!ドガッ!ゴンッ!
「グハッ!!」
「ギャッ!!」
バシッ
私は返り討ちにした2人をまた水魔法で拘束する。
「で、さっきの話の続きだけど、夜でも明るければ人に見つかりやすくなるから、こういうことをしづらくなるってわけ。」
「…こいつらは何しようとしてたんだ?」
「大方、私たちが大男と女の組み合わせで歩いてるからどこぞの金持ちの娘とその護衛と勘違いして、私の所持金を巻き上げようとしたんじゃないかな?護衛の方も暗闇なら対応しきれないだろうと考えてね。とはいえ実際のベークマンはやたらと夜目が効くし、私も魔力視で人の位置は把握できるからそうはいかなかったみたいだけど。」
「なるほどな。」
――――――
私たちはその後、警備隊に先程の2人組を預けにいった。
「で、あとはどうするんだ?」
「うーん、大体状況は分かったし、今日は解散でいいんじゃない?あとは各自で仕事しようってことで。」
「おう、次の武術指南が楽しみだ。」
そんなベークマンの一言を聞いてしまった警備隊の人達が震え上がっていることに、ベークマン自身は気づかないのであった。
…てか、昼間にベークマンの"教育"を恐れてすごく謝っていたのに、結局"教育"受ける羽目になるんだな、あの人たち…自業自得だけど。
――――――
翌日、私はまたエドガス様の屋敷に来ていた。
「呪力視の習得の方はどうかのう?何かコツは掴んだかな?」
「何となく分かっては来ている気がするのですが…まだ完全な習得までには時間がかかりそうです。」
「ホッホッ、まあワシも習得には2ヶ月程かかったからな、焦らずやれば良いじゃろう。」
「…はい。」
貰った資料には"通常習得には5~10年かかる"って書いてあったけど…エドガス様に"通常"を求めるだけ無駄か。それを言ったら私も習得に3年かかると言われている魔力視を1ヶ月足らずで習得したわけだし。
カチャッ
私は頂いた紅茶を飲む。
「…ところで、今日は呪力視とは別件も兼ねて来たのですが…」
「ふむ…して、その内容は?」
「実は…」
私はベークマンとの監察でのことを説明した。
「…それで、街灯と防犯カメラを設置したいのですが、比較的安価で実現する方法に、心当たりはありますでしょうか…?」
「はて…街灯はともかくかめら、とな?」
しまった、この世界にカメラは無かったか。でもやっぱり街灯だけじゃ心もとないしな…
「はい…なんというか、その場の情景を絵のようにして記録するものと言いますか…」
「ほう…それが防犯になるのかの?」
「その記録を警備隊がリアルタイムで見られるようにすれば、何かあったときにわざわざ誰かが警備隊を呼びに行かずとも、警備隊自ら見つけて駆けつけることができます。それに設置するだけでも、人々は"誰かに見られている"という感覚に陥るので、犯罪の減少に期待が持てます。」
「ホッホッ、なるほど。面白いことを考えるのう、さすがはお嬢さんじゃ。」
こんな適当な説明で理解出来るエドガス様もさすがだけどね。
「街灯の方はワシの方で何とかできそうじゃが、かめらはパッとはできそうにないのう…」
「それでは、一応ざっくりとした設計は考えてきたのですが、どういう材料や魔導具があるのか把握していなくて…それを確認していただくことは可能でしょうか?」
「それくらいならもちろん構わんよ。」
カメラの基本的な仕組みは理解しているつもりだが、前世のカメラをそのまま再現できるほどの知識はないので、曖昧な部分は既存の魔導具で代用できるといいが…
――――
一通りエドガス様に確認したところ、どうやら試作品位は作れそうだったので、材料を揃えて今度部活で作ってみよう。
67
お気に入りに追加
692
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜
ネリムZ
ファンタジー
唐突にギルドマスターから宣言される言葉。
「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」
理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。
様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。
そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。
モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。
行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。
俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。
そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。
新たな目標、新たな仲間と環境。
信念を持って行動する、一人の男の物語。

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

僕と精霊 〜魔法と科学と宝石の輝き〜
一般人
ファンタジー
人類が魔法と科学の力を発見して数万年。それぞれの力を持つ者同士の思想の衝突で起きた長き時に渡る戦争、『発展戦争』。そんな戦争の休戦から早100年。魔法軍の国に住む高校生ジャン・バーンは精霊カーバンクルのパンプと出会いと共に両国の歪みに巻き込まれていく。
ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる