乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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冬休み

第70話 ベークマンと王国の治安③

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そこから私たちは夜の城下町を見て回った。
 
大通りは街灯も多いが、少しでも道をそれるとほぼ明かりはない。

「やっぱり出歩くにしては暗すぎるよね…」
「そうか?」
「え、うん…こんなに暗いと周りが見づらいし、怖くて出づらいと思うよ?」
「見づらい?昼間と対して変わんねえだろ。」

いや、ほぼ月明かりしかないのにそれは無いと思うんだが…一体ベークマンの視力はどうなっているんだろうか。ライオンかなんかか。

「それは多分ベークマンの目が良すぎるだけだと思うよ…私は多分平均的な視力だけどすごく見づらいし。街全体の治安を考えるなら平均的な人に合わせた方がいいでしょ?」
「へぇ…そういうもんか。」
「そういうものだよ。やっぱり大通り以外にも街灯はつけるべきだよな…」

実際、街灯を設置したら犯罪率が減ったとかいう話がアメリカか何かであった気がする。

「じゃ、あとは路地裏の方だな。」
「そうだね」

そのまま広い道をそれて路地裏に入っていくと、月明かりすらろくに届かずさらに暗くなっていた。

「さすがにここまで来ると暗えな。」
「だね、私はほとんど見えてないよ。」 


――

一方、カナとベークマンを暗闇に潜んで見ている男が2人いた。

「なあ、あの女もしかして金持ちの娘かなんかじゃねえか?」ボソッ
「なんでそうなるんだよ?」ボソッ
「だってよ、あのデカブツぜってーボディガードだろ」ボソッ
「でも女の服安そうじゃね?」ボソッ
「変装でもしてんだろ?」ボソッ
「確かにな、じゃあいっちょやるか!」ボソッ

――

「…で、暗いと何が問題なんだ?」

そうきたか…

「1番は人目につきづらくなることかな。昼間の暴れてた人達が警備隊が来ないから暴れてたみたいに、夜は人に見つかりづらいから薬物の売買したり、追い剥ぎしたり…っていうのが増えるんだよ。夜でも…」


「今だ!」

男2人組が小声で合図しあった後、カナ目掛けて突進する。

「夜でも、なんだよ。」
「とりあえずその話の前に…」
「ああ、そうだな。」

「くたばれ!」
「捕まってもらおうか。」

バシッ!ドガッ!ゴンッ!

「グハッ!!」
「ギャッ!!」

バシッ

私は返り討ちにした2人をまた水魔法で拘束する。

「で、さっきの話の続きだけど、夜でも明るければ人に見つかりやすくなるから、こういうことをしづらくなるってわけ。」
「…こいつらは何しようとしてたんだ?」
「大方、私たちが大男と女の組み合わせで歩いてるからどこぞの金持ちの娘とその護衛と勘違いして、私の所持金を巻き上げようとしたんじゃないかな?護衛の方も暗闇なら対応しきれないだろうと考えてね。とはいえ実際のベークマンはやたらと夜目が効くし、私も魔力視で人の位置は把握できるからそうはいかなかったみたいだけど。」
「なるほどな。」

――――――

私たちはその後、警備隊に先程の2人組を預けにいった。

「で、あとはどうするんだ?」
「うーん、大体状況は分かったし、今日は解散でいいんじゃない?あとは各自で仕事しようってことで。」
「おう、次の武術指南が楽しみだ。」

そんなベークマンの一言を聞いてしまった警備隊の人達が震え上がっていることに、ベークマン自身は気づかないのであった。

…てか、昼間にベークマンの"教育"を恐れてすごく謝っていたのに、結局"教育"受ける羽目になるんだな、あの人たち…自業自得だけど。


――――――


翌日、私はまたエドガス様の屋敷に来ていた。

「呪力視の習得の方はどうかのう?何かコツは掴んだかな?」
「何となく分かっては来ている気がするのですが…まだ完全な習得までには時間がかかりそうです。」
「ホッホッ、まあワシも習得には2ヶ月程かかったからな、焦らずやれば良いじゃろう。」
「…はい。」

貰った資料には"通常習得には5~10年かかる"って書いてあったけど…エドガス様に"通常"を求めるだけ無駄か。それを言ったら私も習得に3年かかると言われている魔力視を1ヶ月足らずで習得したわけだし。

カチャッ

私は頂いた紅茶を飲む。

「…ところで、今日は呪力視とは別件も兼ねて来たのですが…」
「ふむ…して、その内容は?」
「実は…」

私はベークマンとの監察でのことを説明した。

「…それで、街灯と防犯カメラを設置したいのですが、比較的安価で実現する方法に、心当たりはありますでしょうか…?」
「はて…街灯はともかくかめら、とな?」

しまった、この世界にカメラは無かったか。でもやっぱり街灯だけじゃ心もとないしな…

「はい…なんというか、その場の情景を絵のようにして記録するものと言いますか…」
「ほう…それが防犯になるのかの?」
「その記録を警備隊がリアルタイムで見られるようにすれば、何かあったときにわざわざ誰かが警備隊を呼びに行かずとも、警備隊自ら見つけて駆けつけることができます。それに設置するだけでも、人々は"誰かに見られている"という感覚に陥るので、犯罪の減少に期待が持てます。」
「ホッホッ、なるほど。面白いことを考えるのう、さすがはお嬢さんじゃ。」

こんな適当な説明で理解出来るエドガス様もさすがだけどね。

「街灯の方はワシの方で何とかできそうじゃが、かめらはパッとはできそうにないのう…」
「それでは、一応ざっくりとした設計は考えてきたのですが、どういう材料や魔導具があるのか把握していなくて…それを確認していただくことは可能でしょうか?」
「それくらいならもちろん構わんよ。」

カメラの基本的な仕組みは理解しているつもりだが、前世のカメラをそのまま再現できるほどの知識はないので、曖昧な部分は既存の魔導具で代用できるといいが…

――――

一通りエドガス様に確認したところ、どうやら試作品位は作れそうだったので、材料を揃えて今度部活で作ってみよう。

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