乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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冬休み

第68話 ベークマンと王国の治安①

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1月3日の午後、私は食べ物を買い出しに出かけていた。

「玉ねぎ、人参、牛乳…大丈夫そうだな」

「おい、何してくれてんだよ!!」

すると、少し遠くの方から叫び声が聞こえてきた。声の辺りには少し人だかりができている。

まったく、正月から一体なにをしているのか…私は声の方に向かう。

「なんか言えよな!?」

バシッ!

「ぐはっ!!…すみません、すみません!!」

現場まで行くと、13,4歳の少年が取り巻きを2人連れたガラの悪そうな男に足蹴にされていた。

「これ、どうしたんですか?」

私は人だかりのうちの1人に聞く。

「ああ、あのガラの悪い男が急にあの子にキレて暴れ出したんだよ…」
「なるほど…すみません、この袋持っておいて貰ってもいいですか?」
「え、いや構わないけど…」

私は買い物袋をその人に預け、人だかりを掻き分けチンピラ達に近づく。

「あの…何してるんですか?」

そしてチンピラの1人に声をかけた。

「あぁ!?見てわかんねえのかよ!」
「いや…まあそうなんですけど、大義名分が欲しいというか、言質げんちが取りたいというか…」
「は?何訳わかんねえこと言ってんだ!邪魔すんじゃねえぞこのあま!!」

そう言うとガラの悪い男は私を殴りつけようと大きく振りかぶる。取り巻き2人はその様子をニヤニヤ見ている。この状況なら充分正当防衛になるだろう。

«固体化・アクアウォール»

ガンッ!!!

「痛ってぇ!!…なんだこれ、水!?」

男は固体化した水の壁に驚いているようだ。

«固体化・ウォーターバインド»

バシッ

「ぬわっ!?」

私は男の手足を拘束した。

「こいつ!!」

すると今度は取り巻きの1人が突進してきた。…試しに使ってみるか。

«操血・傀儡かいらい»

ピタッ…

「のわっ!?」
「おい、何してんだよ!」
「そう言われても、体が動かねえんだよ!!」
「は!?」

«操血»を、自分の身体強化ではなく他人の操作に使ってみたのだが、どうやら上手くいったらしい。まあ"傀儡"なんて大げさなネーミングだが、下手に動かすと相手を破裂させかねないし、魔法抵抗が高い人間には効かないので、使い道はせいぜい魔法抵抗の低い人間の動きを止めるくらいだ。

実験は終わったのでこいつも拘束しておこう。バシッ

「ヒ、ヒィィ!!」

最後の1人が逃げ出そうとする。何してたかは知らないが1回捕まって貰うぞ。

「固体化・ウォーターソード」

「ヒィィ!!」

この人さっきから"ヒィィ!!"しか言ってないな。たかが宙に浮く5本の水の剣で首元を囲んで脅しただけだというのに…

「はい、拘束」

バシッ

「うぅ…」

ちなみに、魔術大会の時点では固体化した武器は操作が難しく〘水惑刀〙プラス1本(大会のときは剣ではなくアクアジャベリンだった)を出すのが限界だったが、練習した結果1度に5本(もしくは〘水惑刀〙プラス4本)まで出せるようになった。


さて、これで3人とも拘束できた。チンピラの制圧と魔法の試用が同時にできてちょうど良かったな。

「おい、そこで何をしている!!」

すると複数人の制服を着た人達がやってきた。城下町の警備隊のようだ。

「あ、この人たちが…」
「やったのはお前だな!?」

警備隊の人は私を指さして怒鳴る。

「え」
「とぼけるな!水魔法で暴れている不審者というのはお前だろう!」

えー…

恐らくあまり状況を把握していなかった目撃者が、水魔法が使用されていることだけ確認して警備隊に状況を説明してしまったのだろう。ウォーターソードなんてやらなきゃ良かったな…

「いや、そうですけどそうじゃなくて…」
「言い訳をするな!」

取り付く島もない。どうしたものか…

「おい、何してんだお前ら」

突然真後ろから誰かの声が聞こえてきた。私を全身隠すほどの大きな影ができる。この声とこの巨体は…

「…ベークマン?」
「ブ、ブラム坊ちゃん!?何故ここに!」

ブラム坊ちゃん!?

「別に俺がどこにいたって勝手だろ。それより何寝ぼけたこと言ってんだ?どう考えてもそこの転がってる奴らがやらかしたんだろうが。」
「え、いやしかし…」

「…あの!私、先に彼らが暴れていたのをその女の子が止めていたのを見てました…」

そう庇ってくれたのは、先程私が買い物袋を預けた人だ。

「そうです!僕がこの男たちに"気に食わないから"って理由だけで襲われているところを、この女性が助けてくださったんです!!」

次に足蹴にされていた少年も反論する。

「な…えっと…な、何もしていないなら最初からそう言えばいいのだ!」

いや、弁解しようとは試みましたけど。

「おい、謝罪しろ」

そう言ったのはベークマンだ。

「え、あの…」
「謝罪しろっつったんだよ!ろくに確認もせずにてめえらが勝手に勘違いした癖に威張ってんじゃねえ。…どうやら"教育"が足りてねえようだな…!」

ベークマンは手をゴキゴキ鳴らしながらご立腹である。別に誤解が解けたならそれでいいんだけどな…

「ヒィィ!!も、申し訳ありません!!」

今日はよく"ヒィィ!!"を聞く日だな。

「俺じゃなくてこいつに謝れ!」
「す、すみませんでした!!」

「ああいや、大丈夫ですよ。」

仮にも15,6歳の少年相手に大の大人たちが震え上がってる図が面白かったし、とは言わないでおいた。

「で、では私たちはこれで!!」

そういうと警備隊の人達は私が拘束したチンピラ達を回収して逃げるように行ってしまった。

「助かったよ、ありがとう……ブラム坊ちゃ」
「その呼び方はやめろ。」
「あ、はい。」
「……礼を言われる筋合いはねえ。ただ警備隊やつらがうちの顔に泥塗るようなことをしてやがったから、喝をいれてやっただけだ。」
「うちの顔…?」

「えっと…これ…」

すると、先程買い物袋を預けた人が買い物袋を持ってきてくれた。

「ああすみません、急に押し付けてしまって…」
「いやいや、私たちでは止められそうに無かったから助かったよ。」
「ところで、なんで皆さん最初から警備隊に通報しなかったんですか?」
「いや、ちゃんとしたさ…だが警備隊は人手が足りないのか、いつも来るのが遅くてね…。それに来たとしても今みたいにやたらと上から目線だから、皆うんざりしているんだよ。こういう騒ぎ以外に盗みとかに対する対応も良くないし。」
「…チッ…」

ベークマンが舌打ちをする。

「も、申し訳ありません!決して馬鹿にした訳では…」
「…すぞ」

えっなんて?

「潰すぞ、警備隊あいつら
「いやそれは…方法によるかな。」
「街と奴ら監察してクソな部分徹底的に洗い直す!お前も来い、カナ・ベルナール!!」
「え、今から?…いいけど先に食べ物家に置いてきていい?」
「…早く置いてこい!」
「わ、わかった」
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