乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

文字の大きさ
上 下
65 / 115
冬休み

第65話 ラクアとの話し合い②

しおりを挟む
「……お前はどう思う。」

ソルード侯爵がいなくなった後、ラクアが私に問いかける。

「うーん……黒よりのグレーかな」
「奇遇だな、俺と同じ考えだ。」

その後、私たちはさらにいくらか議論を重ねた。

「ところで、ソルード侯爵か息子に呪法具の効果については話したのか。」

「いや、話してないよ。」

「そうか……お前は話すべきだと思うか?」

「聞かれたら答えればいいんじゃないかな?進んで伝える必要はないと思う。」

「そうだな。さて、ここで話せるのはこんなところか。後のことは俺たちとロバン伯爵の方で連携して調べておこう。お前には何かあればまた連絡する。」

「わかった。」

「それで、後は別件なのだが……」

「ああ、そういえばそんなこと言ってたね。何か気がかりなことが?」

「いや、どちらかと言えばエルマーが用事があるようなのだが」

「ランドルトが?」

「はい、では私の方からお話しましょう。」

ここで今までずっと黙って直立不動だったランドルトが口を開く。

「実は、ラクア様とシャーロット嬢の婚約話が進んでいまして……」

「おお、そうなの?おめでとう。」

「それが、先程お2人が話していたことが事実であるとすれば、少々問題が...…」

「あー……確かにね。でもそれならとりあえず話を先延ばしにするしかないんじゃ?仮に私たちの見立てが合ってたとして、シャーロット嬢がどこまで関わってるかも分からないし。あ、それか他からも何人かめとるとか。」

貴族の結婚は夫婦だけの問題ではなく、相手の家と協力関係を築けるという点において、むしろ相手の家柄の方が重視されることも多い。それに加え、特に王族や高位貴族の男性は複数の女性を嫁に貰うことが多い。理由は妻が1人だと跡継ぎが生まれない可能性があるのと、言い方はあれだがたくさんの家と繋がりを持った方が"お得"だからである。

するとラクアが私の発言に反応する。

「いや、俺が結婚するのは1人だけだ。」

……ほう?

「それはあれ?シャーロット嬢以外と結婚したくないみたいな?」

「必ずしもそうでは無い。単に複数人と結婚するつもりは無いというだけだ。」

どうやらラクアの決意は固いようだ。何かそう思わせる出来事でもあったのか?まあしかし、これ以上聞くのは野暮やぼというものだ。

「なるほど。それならやっぱり先延ばしにするしかないんじゃ?そもそもなんでこの話を私に……」

私はランドルトに聞き返す。

「それが、1つ提案がありまして……」

「却下。」
「チッ……」

なんと、ランドルトが舌打ちした。でも絶対"カナ様がシャーロット嬢に代わって婚約すればいい"とか言い出すので却下する他ない。

「とにかく、今この時点では決められないでしょ。とりあえず頑張ってとしか……」

「……わかりました。ありがとうございます。」

「話は終わったか。」

ラクアが聞く。自分の婚約の話をしているのに他人事である。

「じゃあ、私はそろそろ帰ろうかな。」

「ああ。」

私は立ち上がって扉の前まで移動し、立ち止まる。

「あ、そうだ。ラインハルト殿下の誕生日っていつだっけ?」

「4月24日だったと思うが……それがどうかしたのか。」

「……いや、何となく聞いただけだよ、ありがとう。それじゃあまた。」

私は王城を後にした。

――――――――

私は家に着くと、自分の部屋に戻って今日のことについて考え始めた。

まずお茶会の件について、今までの情報に加えてソルード侯爵の話からの情報が加わった。

……が、私とラクアはソルード侯爵の話をあまり鵜呑みにしていない。むしろ、信用できることの方が少ないと考えている。


そう、私達はソルード侯爵がお茶会での騒動の黒幕であると踏んでいるのだ。

その根拠は5つほどある。

1つ目は、お茶会当日でのこと。普通に考えれば、あの不審な男は屋敷の門からお茶会の会場まで移動してきたことになる。しかし、そうすれば警備兵に見つかるはずだ。しかも、私たちが男を捕まえた後、ソルード侯爵は屋敷の門の方からこちらにやってきた。門の方にいたなら男を見かけていないのは少々不自然なのだ。

2つ目は、黒幕はお茶会に誰が来るか把握していた可能性が高いこと。ソルード侯爵ならお茶会に誰が来るかなんて自明に把握しているし、なんなら誰を招待するかを自由に決めることも出来る。

3つ目は、男の不審死について。やはりそんな都合の良いタイミングで薬の副作用が来るのは不自然なので、口封じに殺されたと考えるとソルード侯爵の発言と矛盾がある。犯人が牢屋に侵入できないなら口封じできるのは自警団とソルード侯爵くらいだし、侵入できる状況なら"侵入は不可能"というソルード侯爵の発言が嘘になってしまう。

4つ目は、先程のソルード侯爵の発言。孤児院の関係者と事件直前の目撃者を似顔絵で見つけたとのことだが、やはり似顔絵だけで見つかるとは思えない。それに"侯爵の娘を殺す…"なんてセリフを3人とも聞くのも不自然だし、再捜査を拒む程怯えている人がそんなハッキリセリフを聞き取れるだろうか?これもソルード侯爵が嘘をついていると考えれば辻褄は合う。

5つ目は、ソルード侯爵の行動。実は私がラクアのいる部屋に入った後、扉の前に何者かの気配があった。ラクアはその存在に魔力視で気づき、"あれ・・はなんだ?"と私に聞くことで私に存在を教えてくれたのだ。ちなみに、私は水の壁を扉の前に貼ったのは、盗聴対策として、水を振動させ私たちの話し声と逆位相の力をぶつけることによってかき消すためである。要はノイズキャンセリングの内と外が逆バージョンで、〘水惑刀〙・«干渉・消»の応用だ。そして、人の気配はソルード侯爵が入ってくると共に消えた。というか、ソルード侯爵自体がその気配の正体だったのだ。

とはいえ、これらはいずれも状況証拠と推測である。ソルード侯爵だと断定するには決定打が足りない。

一応これくらいの証拠でも、王族ラクアの権限で裁判を開いて裁けばソルード侯爵を牢屋送りにできる。なぜなら最終的には嘘発見器のような魔道具があり、それを使った状態で被告に聞くことによって判断するからだ。ただ問題は、もしソルード侯爵が黒幕では無かった場合、裁判を開いたラクアが他の貴族の信用を大きく失う可能性があるということである。そのためもう少し確信の持てる証拠や根拠が見つかるまでは泳がせておくことになった。

ちなみにランドルトがラクアとシャーロット嬢の婚約の話を気にしていたのは、ソルード侯爵が捕まるならその娘との婚約は色々ややこしいことになるからである。捕まった侯爵から支援は受けられないし、そもそも犯罪者の娘と婚約って世間体がどうなんだろうとか…まあ、正直その辺はラクア自身の問題なので私が口出しすることではない。

なんにせよ、今日は何かと収穫があったと思う。

さらに言えば、ラインハルト殿下の誕生日が4月24日だとわかった。ということはゲーム内でジークが死んだのは3月の終わり、今から数えて約3ヶ月後だ。これから先、さらに気を引き締めていこう。

    
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜

ネリムZ
ファンタジー
 唐突にギルドマスターから宣言される言葉。 「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」  理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。  様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。  そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。  モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。  行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。  俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。  そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。  新たな目標、新たな仲間と環境。  信念を持って行動する、一人の男の物語。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

僕と精霊 〜魔法と科学と宝石の輝き〜

一般人
ファンタジー
 人類が魔法と科学の力を発見して数万年。それぞれの力を持つ者同士の思想の衝突で起きた長き時に渡る戦争、『発展戦争』。そんな戦争の休戦から早100年。魔法軍の国に住む高校生ジャン・バーンは精霊カーバンクルのパンプと出会いと共に両国の歪みに巻き込まれていく。

処理中です...