乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

文字の大きさ
上 下
64 / 115
冬休み

第64話 ラクアとの話し合い①

しおりを挟む
ラインハルト殿下の誕生日を聞き、そしてお茶会に関してエドガス様と話して分かったことを報告するために、ラクアに会うことを決め、私はとりあえずママと朝食を取っていた。

すると、開いた窓から黒い伝書バトが入ってきた。心なしかつり目である。共同の伝書バトは灰色のはずなので、このハトはエドガス様の白いハトのように誰かの私物のハトのようだ。

伝書バトから手紙を取り、内容を確認する。

" 例の件について、今日王城へ出向き詳細を知らせろ。こちらも少し話がある。   L  "

送り主は、恐らくラクアだ。文章量が少なすぎて分かりづらいが、情報を抜き取られる可能性を考慮した結果がこれなのだろう。

しかし、当日にいきなり手紙を寄越してくるとは...…まあ、今回はちょうど良かった。早速王城に向かおう。

――――――――――――

王城の門まで来ると、例によってランドルトが門の前で待っていた。

「お待ちしておりました、ベルナール様。では中へ。」

――――

ランドルトについて行くと、ラクアのいる部屋へとたどり着いた。

コンコンッ

「ラクア様、ベルナール様がいらっしゃいました。」
「入れ」
「失礼します」
「来たか。とりあえず座れ。」

私は促されるままラクアの向かいの席に座る。ランドルトはラクアの後ろにまわり直立不動だ。

「それで、手紙を見て来た、ということで間違いないな?」

ラクアが私に聞く。恐らく本人もあの手紙の内容が分かりづらいことは自覚しているのだろう。

「うん、お茶会での件についてだよね?」
「ああ、そうだ。まあこちらは別件もあるんだが…ひとまずお前の話を聞こうか。」

別件?

「わかった。じゃあとりあえず…」
「その前に。あれ・・はなんだ?」

ラクアは扉の方を視ながら言う。

「ああ…」

私は魔法で扉の前に水の壁を張る。

「…念の為だけどね。もう気にしなくていいと思うよ。」

「…そうか、では話を続けろ。」

私はエドガス様の屋敷での話を事細かに説明した。

「……」

ラクアはしばらく黙って考え込む。

「……その話を知ってるのは?」

「全部知ってるのは、呪法具を調べてくれたエドガス様と、その後お会いしたロバン伯爵だけ。」

「ロバン伯爵?」

「ああ、ジークを介して昨日会わせてもらったから、そのときに話しておいたんだよ。」

「……ほう?」

え、もしかして"ジーク"って単語自体地雷なのか?

「……まあいい。それで、その後何かわかったことは?」

一応大丈夫だったらしい。

「特には無いかな。そもそも一庶民が調べられることって限界あるし……」

「確かにな。」

「一応ロバン伯爵が調べてくださるっておっしゃってたから、私としてはそれ待ちかな。」

「ふむ……」
「……」

これ以上話せそうなことがないので、双方黙ってしまう。

コンコンッ!

すると、扉を叩く音が聞こえてきた。

「どなたですか。」

ラクアが声をかける。

「トレイドル・ソルードです。少しお邪魔させて頂くことは可能でしょうか?」

トレイドル・ソルードは……確かソルード侯爵の名前だ。

ラクアと私は無言で顔を見合わせる。私が頷くと、ラクアが口を開いた。

「構いませんよ、お入りください。」

ガチャ

ランドルトが扉を開けると、ソルード侯爵が中に入ってきた。

「おや?これはベルナール殿ではありませんか。どうしてラクア殿下の私室にいらっしゃるのですか?」

ここ、私室だったのか。確かに来賓室にしては誰かの私物らしきものが多いなとは思ったが…

「あ、えっと……」

「例の茶会で起きたことについて、彼女に調べさせていたことを報告させるために私が呼んだんですよ。」

「なるほど、そういうことでしたか。」

「それで、ソルード侯。わざわざ私の私室まで出向くとは、何か急ぎの用事でもおありですか?そうでなければ今はお引き取り頂きたい。」

仕事モードのラクアにしては、ソルード侯爵に対する口調がちょっときつい気がする。

「はい、それがちょうどそのお茶会の件の犯人の身元と犯行の動機が分かりまして……」

「……詳しく話を聞きましょう。お座りください。」

ソルード侯爵は迷わず私が座っている方に進んできたので、席を譲った方がいいかと思って立ち上がろうとしたら、ラクアに止められた。そしてソルード侯爵は少し眉をひそめてから方向転換し、私とラクアそれぞれから見て斜め前の空いている席に座った。

「それで、どういったことがわかったのでしょう?」

「はい……まず彼の身元は、孤児院出身のホームレスでした。両親は恐らく死亡しており、親戚も確認できる限りはいないそうです。」

「よく親戚が見つかっていないのにそこまで分かりましたね」

「ええ、自警団に似顔絵を持たせて聞き込みさせたところ、ちょうどその孤児院の関係者を見つけまして。」

「……そうですか。それでは動機のほうは?」

「動機は、やはりうちの娘を襲うのが目的だったようで……こちらも自警団が聞き込みをしたところ、"侯爵の娘を殺す"と呟きながら歩く男を見かけた人が3人ほど確認できました。うち2人は男の顔は覚えていませんでしたが、もう1人は似顔絵の男でまず間違いないと言っていたそうです。」

「なるほど。シャーロット嬢を襲った理由は何かわかりましたか?」

「それが良くわかっていなくて……もしかしたら私に恨みがあって、その腹いせかもしれません。」

「何か、恨まれるようなことに心当たりがおありで?」

「いえ、そういう訳ではありませんが、庶民が貴族を逆恨みしているという話はよくありますからね。ベルナール殿もそういったことはあるのでは?」

今まで黙って2人の会話を聞いていたが、話を振られたので答える。

「私自身は特に無いですが、酔っ払いが領主の愚痴を言っていたりするところは時々見かけますね。彼らの場合は逆恨みというより、ただ日頃のストレスをぶつけているだけだとは思いますが。」

「……逆恨みは十分に有り得ますね。」

ラクアがソルード侯爵の意見に同意する。そしてラクアがそのまま続ける。

「他に何か分かったことはありますか?」

「いえ、私の方ではそんなところですね。」

「そうですか……ありがとうございました。」

「すみません、2つほどよろしいでしょうか?」

私が再び口を挟む。

「はい、なんでしょうか?」

「まず、その孤児院の関係者だとか、男を見かけた3人とお話することは可能でしょうか?何か手がかりになるかもしれないので……」
「ああそれが……4人とも男のことが怖いからあまり関わりたくないと言っていたようで、これ以上の聞き取りは難しいそうです。」

「……そうですか、わかりました。ではもう1つ、男は牢屋の中で死んでいたそうですが、その牢屋に誰かが侵入したり、牢屋内に何か人体に悪影響を及ぼすようなものがあったりはしませんでしたか?」

「……侵入は不可能です。自警団が常に複数人の見張りをつけていたので。それと牢屋内に何かあるということもないと思います。男を入れる数日前まで他の囚人を入れていましたが、特に健康には影響がなさそうでしたから。」

「わかりました、ありがとうございます。」

「……それでは、私はそろそろ次の用事がありますので、おいとまさせていただきます。」

「ええ、ありがとうございました。」

そういうとソルード侯爵はラクアに会釈した後、足早に部屋を後にした。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜

ネリムZ
ファンタジー
 唐突にギルドマスターから宣言される言葉。 「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」  理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。  様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。  そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。  モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。  行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。  俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。  そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。  新たな目標、新たな仲間と環境。  信念を持って行動する、一人の男の物語。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

僕と精霊 〜魔法と科学と宝石の輝き〜

一般人
ファンタジー
 人類が魔法と科学の力を発見して数万年。それぞれの力を持つ者同士の思想の衝突で起きた長き時に渡る戦争、『発展戦争』。そんな戦争の休戦から早100年。魔法軍の国に住む高校生ジャン・バーンは精霊カーバンクルのパンプと出会いと共に両国の歪みに巻き込まれていく。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

処理中です...