63 / 115
冬休み
第63話 悪夢②
しおりを挟む
え……?
カナ「そん…な…」
騎士団長「事件より前から組織の存在には勘づいていたのですが…私が至らぬばかりに、魔術学院の他の生徒まで…それに、未だに捕まっていない犯人もいますし…」
騎士団長様はとても辛そうに顔を歪める。
ラインハルト「あれはあなたのせいではありませんよ。もちろんジーク君や犠牲になった少年たちのことは悔やみきれませんが、あなたやラクアがいたからこそ被害が最小限に抑えられました。」
ラインハルト様も淡々と話してはいるが、その顔はとても悲しそうだ。
騎士団長「…お気遣い感謝致します。」
カナ「申し訳ありません、そんなことがあったとは知らずに不躾に聞いてしまって…」
騎士団長「いえ…大丈夫ですよ。元はと言えば私が言い出したのですから。」
カナ「………」
返事をしなくてはいけないのに、私は俯いたまま黙ってしまう。
騎士団長「カナ様、お顔をお上げください。」
私は無言で顔をあげる。すると私に優しく微笑みかけてくれている騎士団長の顔が目に入る。
騎士団長「確かに、もう息子達が戻ってくることはありません。しかし、それでも今生きている人のために、私は少しでも役に立ちたいと考えています。ですから必ずしも悲観ばかりしている訳ではないのですよ。」
カナ「……!」
騎士団長「カナ様も、そのお力を困っている誰かのために使っていただけると幸いです。それで助かる人が大勢いるはずですから。」
カナ「…はいっ!」
私は、騎士団長様はとてもお強い方だなと思った。そして、ラインハルト様のために、皆のために、何ができるかを考えよう。そう決意したのであった。
ザザッ!!ジッジーーー!!
――――――――
「っ!!!………」
私は最後の雑音と共に目を覚ました。寝室の窓に目をやると、日が登り始めていた。これは夢だったようだ。
今のはラインハルト殿下が中心で出てきており、私が体験した覚えのない記憶であることから、「Amour Tale」の第1王子ラインハルト・リアムールルートの一節だろう。
第1王子ルートはプレイしたことがあるはずだが、全く記憶になかった。まあ、そんなに真面目にやっていなかったし、プレイした時期の私は全体的にボーっとしていたので当然と言えば当然だが。
そんなことより、やっと"ゲーム画面"の文面の完成形を見ることができた。
"騎士団長「私にはジークという16才の息子がいたのですが、裏組織の人間に襲われて…
…1ヶ月前に亡くなりました」"
これが今まで見えてこなかった箇所だ。
…正直、この内容にはさほど驚いてはいない。ジークの身に起こる"何か"が"死"であることは、ゲーム内で"ジーク"という人名は出ているのに攻略対象者の中にはいないという時点で、ある程度覚悟はしていた。…もちろん想定した中で最悪の事態ではあるが。
問題は、ジークの死因とその時期である。
騎士団長は、ジークは裏組織の人間に襲われたと言っていた。"裏組織"というのが曖昧だが、いずれにせよ死因は事故ではなく人為的なものだとわかる。
また、このシーンが第1王子ラインハルト殿下の誕生日会であることから、事件はラインハルト殿下の誕生日の1ヶ月前に起きたことになる。ただ他の生徒も巻き込まれていることを考えると、その組織の生徒殺害自体はもう少し前から行われていた可能性もある。
そして実際、
"騎士団長「事件より前から組織の存在には勘づいていたのですが…"
というフレーズがあることから、何らかの動きは見せていたことが伺える。もっともそれが生徒殺害なのか、もっと違うことなのかは分からないが。
ここからまず確かめるべきは、ラインハルト殿下の誕生日がいつなのか、ということだ。私はラインハルト殿下の誕生日を知らない(ゲームで見た事があったとしても覚えていない)ため、誰かに確認する必要がある。
王族の誕生日なら一般市民でも知っている可能性はあるか…?それならとりあえず…
私が着替えて1階まで降りると、ママはいつものように朝食の準備をしていた。
「おはよう、ママ」
「おはよう、カナ!」
「ねえママ?」
「ん?」
「ラインハルト殿下の誕生日っていつか知らない?」
「ラインハルト殿下って…第1王子様のこと?うーん知らないわね…」
「そっか…じゃあ知ってそうな人物に心当たりは?」
「う~ん…平民で知ってる人はあんまりいないんじゃないかしら?貴族の方達とか王子様のお友達なら知っていそうだけど!」
「なるほど…わかった、ありがとう」
となれば、やはり聞きに行くしかないか、ラインハルト殿下の弟に。
カナ「そん…な…」
騎士団長「事件より前から組織の存在には勘づいていたのですが…私が至らぬばかりに、魔術学院の他の生徒まで…それに、未だに捕まっていない犯人もいますし…」
騎士団長様はとても辛そうに顔を歪める。
ラインハルト「あれはあなたのせいではありませんよ。もちろんジーク君や犠牲になった少年たちのことは悔やみきれませんが、あなたやラクアがいたからこそ被害が最小限に抑えられました。」
ラインハルト様も淡々と話してはいるが、その顔はとても悲しそうだ。
騎士団長「…お気遣い感謝致します。」
カナ「申し訳ありません、そんなことがあったとは知らずに不躾に聞いてしまって…」
騎士団長「いえ…大丈夫ですよ。元はと言えば私が言い出したのですから。」
カナ「………」
返事をしなくてはいけないのに、私は俯いたまま黙ってしまう。
騎士団長「カナ様、お顔をお上げください。」
私は無言で顔をあげる。すると私に優しく微笑みかけてくれている騎士団長の顔が目に入る。
騎士団長「確かに、もう息子達が戻ってくることはありません。しかし、それでも今生きている人のために、私は少しでも役に立ちたいと考えています。ですから必ずしも悲観ばかりしている訳ではないのですよ。」
カナ「……!」
騎士団長「カナ様も、そのお力を困っている誰かのために使っていただけると幸いです。それで助かる人が大勢いるはずですから。」
カナ「…はいっ!」
私は、騎士団長様はとてもお強い方だなと思った。そして、ラインハルト様のために、皆のために、何ができるかを考えよう。そう決意したのであった。
ザザッ!!ジッジーーー!!
――――――――
「っ!!!………」
私は最後の雑音と共に目を覚ました。寝室の窓に目をやると、日が登り始めていた。これは夢だったようだ。
今のはラインハルト殿下が中心で出てきており、私が体験した覚えのない記憶であることから、「Amour Tale」の第1王子ラインハルト・リアムールルートの一節だろう。
第1王子ルートはプレイしたことがあるはずだが、全く記憶になかった。まあ、そんなに真面目にやっていなかったし、プレイした時期の私は全体的にボーっとしていたので当然と言えば当然だが。
そんなことより、やっと"ゲーム画面"の文面の完成形を見ることができた。
"騎士団長「私にはジークという16才の息子がいたのですが、裏組織の人間に襲われて…
…1ヶ月前に亡くなりました」"
これが今まで見えてこなかった箇所だ。
…正直、この内容にはさほど驚いてはいない。ジークの身に起こる"何か"が"死"であることは、ゲーム内で"ジーク"という人名は出ているのに攻略対象者の中にはいないという時点で、ある程度覚悟はしていた。…もちろん想定した中で最悪の事態ではあるが。
問題は、ジークの死因とその時期である。
騎士団長は、ジークは裏組織の人間に襲われたと言っていた。"裏組織"というのが曖昧だが、いずれにせよ死因は事故ではなく人為的なものだとわかる。
また、このシーンが第1王子ラインハルト殿下の誕生日会であることから、事件はラインハルト殿下の誕生日の1ヶ月前に起きたことになる。ただ他の生徒も巻き込まれていることを考えると、その組織の生徒殺害自体はもう少し前から行われていた可能性もある。
そして実際、
"騎士団長「事件より前から組織の存在には勘づいていたのですが…"
というフレーズがあることから、何らかの動きは見せていたことが伺える。もっともそれが生徒殺害なのか、もっと違うことなのかは分からないが。
ここからまず確かめるべきは、ラインハルト殿下の誕生日がいつなのか、ということだ。私はラインハルト殿下の誕生日を知らない(ゲームで見た事があったとしても覚えていない)ため、誰かに確認する必要がある。
王族の誕生日なら一般市民でも知っている可能性はあるか…?それならとりあえず…
私が着替えて1階まで降りると、ママはいつものように朝食の準備をしていた。
「おはよう、ママ」
「おはよう、カナ!」
「ねえママ?」
「ん?」
「ラインハルト殿下の誕生日っていつか知らない?」
「ラインハルト殿下って…第1王子様のこと?うーん知らないわね…」
「そっか…じゃあ知ってそうな人物に心当たりは?」
「う~ん…平民で知ってる人はあんまりいないんじゃないかしら?貴族の方達とか王子様のお友達なら知っていそうだけど!」
「なるほど…わかった、ありがとう」
となれば、やはり聞きに行くしかないか、ラインハルト殿下の弟に。
103
お気に入りに追加
691
あなたにおすすめの小説
異世界転移したよ!
八田若忠
ファンタジー
日々鉄工所で働く中年男が地球の神様が企てた事故であっけなく死亡する。
主人公の死の真相は「軟弱者が嫌いだから」と神様が明かすが、地球の神様はパンチパーマで恐ろしい顔つきだったので、あっさりと了承する主人公。
「軟弱者」と罵られた原因である魔法を自由に行使する事が出来る世界にリストラされた主人公が、ここぞとばかりに魔法を使いまくるかと思えば、そこそこ平和でお人好しばかりが住むエンガルの町に流れ着いたばかりに、温泉を掘る程度でしか活躍出来ないばかりか、腕力に物を言わせる事に長けたドワーフの三姉妹が押しかけ女房になってしまったので、益々活躍の場が無くなりさあ大変。
基本三人の奥さんが荒事を片付けている間、後ろから主人公が応援する御近所大冒険物語。
この度アルファポリス様主催の第8回ファンタジー小説大賞にて特別賞を頂き、アルファポリス様から書籍化しました。

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜
ネリムZ
ファンタジー
唐突にギルドマスターから宣言される言葉。
「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」
理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。
様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。
そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。
モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。
行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。
俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。
そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。
新たな目標、新たな仲間と環境。
信念を持って行動する、一人の男の物語。

僕と精霊 〜魔法と科学と宝石の輝き〜
一般人
ファンタジー
人類が魔法と科学の力を発見して数万年。それぞれの力を持つ者同士の思想の衝突で起きた長き時に渡る戦争、『発展戦争』。そんな戦争の休戦から早100年。魔法軍の国に住む高校生ジャン・バーンは精霊カーバンクルのパンプと出会いと共に両国の歪みに巻き込まれていく。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

元勇者、魔王の娘を育てる~血の繋がらない父と娘が過ごす日々~
雪野湯
ファンタジー
勇者ジルドランは少年勇者に称号を奪われ、一介の戦士となり辺境へと飛ばされた。
新たな勤務地へ向かう途中、赤子を守り戦う女性と遭遇。
助けに入るのだが、女性は命を落としてしまう。
彼女の死の間際に、彼は赤子を託されて事情を知る。
『魔王は殺され、新たな魔王となった者が魔王の血筋を粛清している』と。
女性が守ろうとしていた赤子は魔王の血筋――魔王の娘。
この赤子に頼れるものはなく、守ってやれるのは元勇者のジルドランのみ。
だから彼は、赤子を守ると決めて娘として迎え入れた。
ジルドランは赤子を守るために、人間と魔族が共存する村があるという噂を頼ってそこへ向かう。
噂は本当であり両種族が共存する村はあったのだが――その村は村でありながら軍事力は一国家並みと異様。
その資金源も目的もわからない。
不審に思いつつも、頼る場所のない彼はこの村の一員となった。
その村で彼は子育てに苦労しながらも、それに楽しさを重ねて毎日を過ごす。
だが、ジルドランは人間。娘は魔族。
血が繋がっていないことは明白。
いずれ真実を娘に伝えなければならない、王族の血を引く魔王の娘であることを。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる