乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

文字の大きさ
上 下
61 / 115
冬休み

第61話 気持ち

しおりを挟む
騎士団長との話も終わり、最初に行った来賓室に戻ると、双子のユリウスとユリアがジークと共に来客用のクッキーを食べながら談笑していた。いや、良いんだけど結構自由だな。

「あ、おねえちゃん!」

初めにこちらに気がついたのは妹のユリアだ。

「あ!ねーねーあそぼうよ!」

続いてユリウスも声をかけてくる。

「あそぼあそぼ!」

ユリアとユリウスが私の手をグイグイと引っ張る。どうやらどこかに連れていきたいようだ。

「う、うん…いいよ。ジーク、この子達と遊んできて大丈夫?」

「あ、うんもちろん!お父さんかお母さんにどうしてるか聞かれたら伝えとくね!」

ジークがクッキーを飲み込みながら答える。

「わかった、ありがとう」

「ほらはやく!」
「うん」

――――――

左手でユリウス、右手でユリアと手をつなぎ、少しかがみながらしばらく移動すると、やがて庭へと出てきた。

「おぉ……」

庭は一面様々な薔薇ばらで埋め尽くされており、中央には大きな噴水があった。薔薇はこの国の国花であり、王家の紋章にも使われている。花言葉が"愛"の薔薇をモチーフにしている辺りがまさに乙女ゲームといった感じである。

「ここ、ぼくたちのおきにいりのばしょなの!」
「おねえちゃんにみてもらおうとおもって!」

「うん、とっても綺麗だね。連れてきてくれてありがとう。」

「「えへへ!」」

2人は同時に満面の笑みになる。

「ねーねーこっちきて!」

今度は噴水の近くにある長椅子まで誘導される。

「おはなししよー!」
「しよー!」

「うん。何をお話したいのかな?」

「おねえちゃんは、ジークおにいちゃんのことすき?」

「ん?うん、好きだよ」

「じゃあちゃんとおよめさんになりたい?」

「……ん?どういうこと?」

「だっておねえちゃんとジークおにいちゃん、けっこんするんでしょ?」

「いや、そういう訳じゃないよ。どうしてそう思ったの?」

「だって、けっこんするときはだんなさんのおとうさんとあいさつするんでしょ?とくにせーりゃくけっこんのときはそれがだいじっておかあさんがいってた!」

「それでね、せーりゃくけっこんのひとはすきどうしじゃないことがおおいからね、たいへんだっておかあさんがいってた!」

……要するに、私が屋敷を尋ねてきたのは結婚の挨拶のためだと勘違いし、もしその結婚が互いに恋愛感情のない政略結婚だとすると"たいへん"になるから、恋愛感情があるかどうかをジークのいない所で確認したかった、と。

というか、何教えちゃってるんですかおかあさん。ジークといい双子といい、ホンワカした雰囲気な割にやたら核心をついてくるのは母親由来かもしれない。

「なるほど……でも私たちは結婚するつもりはないよ。今日は騎士団長様がどんなお仕事をしているか知りたくて来ただけだから。」

「そうなの?でも、ジークおにいちゃんは……」

「さて、そろそろ戻ろうか。皆が心配しちゃうよ?」

「それはたいへん、もどる!」
「もどる!」

――――――

「あ、帰ってきた!ユリウス、ユリア、どうだった?楽しかった?」

来賓室に戻ると、ジークが迎え入れてくれた。双子と部屋をでるとき10枚はあったはずのクッキーはあと1枚だけだ。

「うんたのしかった!」
「たのしかった!」

「それは良かった!カナ、どこに行ってきたの?」

「庭の方に連れてってもらったんだよ。薔薇が沢山あって綺麗だね。」

「ああ、そうなんだ!僕もあの薔薇好き!2人と遊んでくれてありがとね!」

「私も楽しかったから良かったよ。」

「おや、戻って来たのですね」

そう言って開いたままだった扉から入ってきたのは騎士団長夫妻だ。

「私はそろそろ書類仕事をしなくてはならないのですが、カナ殿はどうしますか?」

「では、私はこれで失礼させていただきます。今日はありがとうございました。」

「わかりました」

「また遊びに来てくださいね。」
「「またきてね!」」

「はい、ぜひ。」

「僕、門まで送ってくよ!」

そのまま私とジークは屋敷の門の前まで移動する。歩きながら、ジークが心なしか少し暗い顔で話しかけてきた。

「ねえカナ…どうしてお茶会で事件に巻き込まれたこと教えてくれなかったの?さっきお父さんからなんとなく何があったか聞いたんだ…」

「え、ああ…ひとまず解決したし、ジークには直接関係ないからわざわざ話す必要はないかなと思って。」

「関係ない…そっか、そうだよね…」

「ごめん、何か問題あった?」

「ううん、なんでもない!…それじゃあ、門まで着いたから僕はこれで、またね!」

「うん、またね」

私はそのまま屋敷を後にした。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

僕と精霊 〜魔法と科学と宝石の輝き〜

一般人
ファンタジー
 人類が魔法と科学の力を発見して数万年。それぞれの力を持つ者同士の思想の衝突で起きた長き時に渡る戦争、『発展戦争』。そんな戦争の休戦から早100年。魔法軍の国に住む高校生ジャン・バーンは精霊カーバンクルのパンプと出会いと共に両国の歪みに巻き込まれていく。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

元勇者、魔王の娘を育てる~血の繋がらない父と娘が過ごす日々~

雪野湯
ファンタジー
勇者ジルドランは少年勇者に称号を奪われ、一介の戦士となり辺境へと飛ばされた。 新たな勤務地へ向かう途中、赤子を守り戦う女性と遭遇。 助けに入るのだが、女性は命を落としてしまう。 彼女の死の間際に、彼は赤子を託されて事情を知る。 『魔王は殺され、新たな魔王となった者が魔王の血筋を粛清している』と。 女性が守ろうとしていた赤子は魔王の血筋――魔王の娘。 この赤子に頼れるものはなく、守ってやれるのは元勇者のジルドランのみ。 だから彼は、赤子を守ると決めて娘として迎え入れた。 ジルドランは赤子を守るために、人間と魔族が共存する村があるという噂を頼ってそこへ向かう。 噂は本当であり両種族が共存する村はあったのだが――その村は村でありながら軍事力は一国家並みと異様。 その資金源も目的もわからない。 不審に思いつつも、頼る場所のない彼はこの村の一員となった。 その村で彼は子育てに苦労しながらも、それに楽しさを重ねて毎日を過ごす。 だが、ジルドランは人間。娘は魔族。 血が繋がっていないことは明白。 いずれ真実を娘に伝えなければならない、王族の血を引く魔王の娘であることを。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

150年後の敵国に転生した大将軍

mio
ファンタジー
「大将軍は150年後の世界に再び生まれる」から少しタイトルを変更しました。 ツーラルク皇国大将軍『ラルヘ』。 彼は隣国アルフェスラン王国との戦いにおいて、その圧倒的な強さで多くの功績を残した。仲間を失い、部下を失い、家族を失っていくなか、それでも彼は主であり親友である皇帝のために戦い続けた。しかし、最後は皇帝の元を去ったのち、自宅にてその命を落とす。 それから約150年後。彼は何者かの意思により『アラミレーテ』として、自分が攻め入った国の辺境伯次男として新たに生まれ変わった。 『アラミレーテ』として生きていくこととなった彼には『ラルヘ』にあった剣の才は皆無だった。しかし、その代わりに与えられていたのはまた別の才能で……。 他サイトでも公開しています。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...