乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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冬休み

第61話 気持ち

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騎士団長との話も終わり、最初に行った来賓室に戻ると、双子のユリウスとユリアがジークと共に来客用のクッキーを食べながら談笑していた。いや、良いんだけど結構自由だな。

「あ、おねえちゃん!」

初めにこちらに気がついたのは妹のユリアだ。

「あ!ねーねーあそぼうよ!」

続いてユリウスも声をかけてくる。

「あそぼあそぼ!」

ユリアとユリウスが私の手をグイグイと引っ張る。どうやらどこかに連れていきたいようだ。

「う、うん…いいよ。ジーク、この子達と遊んできて大丈夫?」

「あ、うんもちろん!お父さんかお母さんにどうしてるか聞かれたら伝えとくね!」

ジークがクッキーを飲み込みながら答える。

「わかった、ありがとう」

「ほらはやく!」
「うん」

――――――

左手でユリウス、右手でユリアと手をつなぎ、少しかがみながらしばらく移動すると、やがて庭へと出てきた。

「おぉ……」

庭は一面様々な薔薇ばらで埋め尽くされており、中央には大きな噴水があった。薔薇はこの国の国花であり、王家の紋章にも使われている。花言葉が"愛"の薔薇をモチーフにしている辺りがまさに乙女ゲームといった感じである。

「ここ、ぼくたちのおきにいりのばしょなの!」
「おねえちゃんにみてもらおうとおもって!」

「うん、とっても綺麗だね。連れてきてくれてありがとう。」

「「えへへ!」」

2人は同時に満面の笑みになる。

「ねーねーこっちきて!」

今度は噴水の近くにある長椅子まで誘導される。

「おはなししよー!」
「しよー!」

「うん。何をお話したいのかな?」

「おねえちゃんは、ジークおにいちゃんのことすき?」

「ん?うん、好きだよ」

「じゃあちゃんとおよめさんになりたい?」

「……ん?どういうこと?」

「だっておねえちゃんとジークおにいちゃん、けっこんするんでしょ?」

「いや、そういう訳じゃないよ。どうしてそう思ったの?」

「だって、けっこんするときはだんなさんのおとうさんとあいさつするんでしょ?とくにせーりゃくけっこんのときはそれがだいじっておかあさんがいってた!」

「それでね、せーりゃくけっこんのひとはすきどうしじゃないことがおおいからね、たいへんだっておかあさんがいってた!」

……要するに、私が屋敷を尋ねてきたのは結婚の挨拶のためだと勘違いし、もしその結婚が互いに恋愛感情のない政略結婚だとすると"たいへん"になるから、恋愛感情があるかどうかをジークのいない所で確認したかった、と。

というか、何教えちゃってるんですかおかあさん。ジークといい双子といい、ホンワカした雰囲気な割にやたら核心をついてくるのは母親由来かもしれない。

「なるほど……でも私たちは結婚するつもりはないよ。今日は騎士団長様がどんなお仕事をしているか知りたくて来ただけだから。」

「そうなの?でも、ジークおにいちゃんは……」

「さて、そろそろ戻ろうか。皆が心配しちゃうよ?」

「それはたいへん、もどる!」
「もどる!」

――――――

「あ、帰ってきた!ユリウス、ユリア、どうだった?楽しかった?」

来賓室に戻ると、ジークが迎え入れてくれた。双子と部屋をでるとき10枚はあったはずのクッキーはあと1枚だけだ。

「うんたのしかった!」
「たのしかった!」

「それは良かった!カナ、どこに行ってきたの?」

「庭の方に連れてってもらったんだよ。薔薇が沢山あって綺麗だね。」

「ああ、そうなんだ!僕もあの薔薇好き!2人と遊んでくれてありがとね!」

「私も楽しかったから良かったよ。」

「おや、戻って来たのですね」

そう言って開いたままだった扉から入ってきたのは騎士団長夫妻だ。

「私はそろそろ書類仕事をしなくてはならないのですが、カナ殿はどうしますか?」

「では、私はこれで失礼させていただきます。今日はありがとうございました。」

「わかりました」

「また遊びに来てくださいね。」
「「またきてね!」」

「はい、ぜひ。」

「僕、門まで送ってくよ!」

そのまま私とジークは屋敷の門の前まで移動する。歩きながら、ジークが心なしか少し暗い顔で話しかけてきた。

「ねえカナ…どうしてお茶会で事件に巻き込まれたこと教えてくれなかったの?さっきお父さんからなんとなく何があったか聞いたんだ…」

「え、ああ…ひとまず解決したし、ジークには直接関係ないからわざわざ話す必要はないかなと思って。」

「関係ない…そっか、そうだよね…」

「ごめん、何か問題あった?」

「ううん、なんでもない!…それじゃあ、門まで着いたから僕はこれで、またね!」

「うん、またね」

私はそのまま屋敷を後にした。
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