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冬休み

第54話 大賢者とお茶会の謎②

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「それで、早速本題なんじゃが…結論から言うと、呪法具の効果は分かったが、入手ルートは途中までしか分からなかった。」

「……なるほど。」

「まず効果のほうじゃが、発動条件はワシの当初の見立て通り魔法銃の引き金を引いたときじゃ。そして発動すると、爆発して半径5m以内の人間に猛毒を振りまく。」

「猛毒……ですか?」

「そうじゃ。呪法によって作られた毒で、少しでも当たれば10分以内には死ぬ。しかも解毒薬はなく、解毒するには毒を作った本人に解毒の呪法をかけてもらう他ない。」

通常、毒薬を作る際は一緒に解毒薬も必ず作る。そうしないと毒薬が万が一自分にかかったときに自滅するからだ。だから第三者でもその解毒薬を持ってくるか再現出来れば解毒することができる。しかし、呪法による毒の場合、解毒薬は作らない代わりに解毒の呪法を作る。そうされてしまうと少なくとも呪法が使えない人間にはどうにもできないのだ。まあ、どの道10分で解毒薬が用意出来るとは思えないが。

「しかしそれだと不審なことがあってのう。あの呪法具は効果範囲を操作できないんじゃ。だから……」

「……呪法具が発動すると、例の男もその猛毒をかぶってしまう。」

「その通りじゃ。どうしてあの男はそんなものを使おうとしたのかのう?」

「男は、そもそも呪法具の効果を知らなかったか、違う効果だと思っていたのかもしれません。」

「ほう、どうしてそう思ったんじゃ?奴は効果を知っていて、死ぬのを覚悟して使ったかもしれんぞ?」

「男ははじめ、"ソルード侯爵の1人娘はどこだ" と言っていました。つまり言葉通りに受け取れば、奴はシャーロット嬢を殺すか誘拐する目的で来たと考えられます。しかし奴が銃を構えたとき、当のシャーロット嬢は明らかに男より5m以上離れていました。銃で殺そうとした可能性もありますが、私が見た限り銃口はラクア殿下の方に向いていましたし、仮にシャーロット嬢を撃つつもりなら呪法具の発動を解除しないのは少々不自然です。まあ、効果を知っていても発動の解除ができるとは限りませんが……」

「なるほど、確かにそうすると辻褄が合いそうじゃな。しかし、だったら男はなんであんなもの持っていたのかのう。誰が用意したにせよ、それこそもっと別の呪法具の方が、侯爵のとこのお嬢さんをどうにかするには向いているのではなかろうか。」

「はい、そこが不思議なのですが……」

確かにエドガス様の言う通りだ。私の今までの見立て通りなら男には協力者がいて、その協力者が呪法具を準備したことになるが、それなら周辺に猛毒を振りまく呪法具を男に渡すよりも、魔法銃の弾に何か仕込んで持たせたりした方が、シャーロット嬢暗殺の成功率が上がる。

「……ちなみに、魔法銃の弾に特別な効果があったりはしませんでしたか?」

「いや、弾が当たると魔法が発動して対象者を貫くような仕組みじゃったが、一般的な魔法銃の効果と大差ないのう。」

「眠らせたり拘束したりといった効果はありませんか?」

「ないな」

となれば、そもそも魔法銃自体に重きを置いていなかった……?裏を返せば、呪法具を発動させること自体が目的だった?でもそれだとシャーロット嬢をどうこうすることは……まさか……


「……そもそもあの男は、シャーロット嬢が目的では無かったのかもしれません。」

「ほう、では何が目的だと?」

「ラクア殿下か私の殺害です」

「なんと…!それはまたどうしてそう思ったんじゃ?」

「目的を持って男を屋敷に送り込むのであれば、お茶会に出席する人物について調べるはずです。そしてあの場であの男を比較的安全に対処できる力を持っていたのは、ラクア殿下と私、ランドルト殿、そしてエドガス様くらいです。剣を基本使わないエドガス様とランドルト殿は敵にあまり近づかないでしょうから、半径5m以内に入る可能性が比較的高いのはラクア殿下と私の2人です。だから、我々のうちどちらか、もしくは両方を狙ったと考えました。かなり憶測が混じった考えにはなってしまいますが……」

「ふむ……難しいのう。かなり理にかなっているように思うんじゃが、いかんせん確かめようがない。」 

「はい。せめてあの男が生きていれば話は変わってきたのでしょうが……」
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