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いつもの学院生活…?
第49話 波乱のお茶会④
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「なるほどそんなことが……お2人とも、娘を守って頂きありがとうございます!」
ソルード侯爵は私たちに対し深々と頭を下げる。
「いえ、当然のことをしたまでです。」
「そうです、頭をおあげください。」
「いえ、いえ、本当にありがとうございます!」
礼儀正しいのはいいことだが、そろそろやめて欲しい。
「……ところで、この男はどうしましょう?」
「それなら私のところに自警団がいますので、そこに引き取って貰いましょう。」
「わかりました。いくらか気になることがあるのですが、引き渡すときに自警団の方とお話することは出来ますか?」
「ええ……もちろん構いませんよ。」
「あ、それとソルード侯爵にお伺いするのが正解か分からないですが……これ、男から取り上げたものなのですが、どういうものか知りませんか?」
私は、侯爵とついでにラクアにペンダントを見せる。
「さあ……私にはよく分かりませんな…」
ラクアも無言で首を横に振る。
「ホッホッ、そのペンダントは呪法具じゃな」
突然後ろから発言したのは、お茶会に参加していた、白いローブをまとい長い白髭を生やした老人だ。
「呪法具、ですか?」
「そうじゃ。それの場合、恐らく魔法銃が撃たれると同時に、何らかの効果が発動するようになっていたようじゃな。その効果が具体的にどういったものなのかは見ただけでは分からぬが。ちなみに魔法銃はごく一般的なもので、金さえ出せば誰でも入手できる。もっともその男がそれを買えるだけの金を持っているとは思えぬが…」
呪法具とは……確か、文字通り魔導具の呪法バージョンで、呪法具取り扱い免許のあるものが国に届け出をした上で、研究など限られた目的で使用することのみ許可されていたはずだ。
そんなものを持っていたとは、ますます謎が深まる。
「なるほど……え、ということはこれはどうすれば…?」
自警団も免許は持っていないだろうし、かと言ってその辺に捨てておく訳にもいかない。それにどのような効果があるのか調べておくべきだ。
「それならワシが預かろう。免許なら持っておるし、ワシの研究室でなら効果や素材なんかも分かるじゃろう。」
「それはありがたいですが……」
ここまで会話しておいてなんだが、どちら様でしょうか。お茶会に招待されていたのだから怪しい人では無いんだろうが…
「おっと、自己紹介がまだだったの。ワシはエドガス・ラウエンシュタインじゃ、以後よろしくのう。」
「なっ…!エドガスって、"大賢者エドガス"か…!?元王国魔導師の…それも、歴代最高峰と言われた伝説級の魔導師では無いか!」
ラクアが珍しく動揺する。王国魔導師とは、王国が直に契約を結び協力関係にある魔法使いの総称で、ほんのひと握りの人間しかなれない。その中でも歴代最高峰とはいかほどか。
「……え」
試しに魔力視でエドガス殿を見てみると、とんでもない魔力量だ。私のそれをゆうに超えており、数値としては600~700位はあるんじゃなかろうか。
「ホッホッ、昔はそんなことも言われていましたな。ですが今はただの魔法好きの老いぼれですじゃ。……それで、どうするかのう。その呪法具預けてくれるかのう?」
「はい、ぜひよろしくお願い致します。」
こうしてエドガス殿に呪法具とついでに魔法銃を預け、いつの間に呼んだのか、まもなく到着した自警団に男の身元と剣を引き渡した。エドガス殿に彼の屋敷の場所と連絡先を聞き、自警団に対し状況と私の見解を説明し終わり、これでひとまず一件落着だ。
「それじゃあ、ワシはこの辺で失礼するぞ、お嬢さん。」
「はい、ありがとうございました。」
エドガス殿が去って行くと、入れ替わるようにランドルトに付き添われたシャーロットがこちらに歩いてきた。
「あ、あの!ありがとうございました、ラクア様!」
「礼には及びませんよ、シャーロット嬢。」
あれ、私は無視?と思ったが、そもそも私はずっと"幻影"で潜伏していたので、シャーロットには見えていなかったのだろう。
「いえそれでも……その、も、もしよろしければお礼も兼ねて王城へお伺いしてもよろしいでしょうか!!」
「……ええ、もちろんです。お待ちしていますよ、シャーロット嬢。」
――――――――――
その後お茶会はそのまま解散になり、私たちは魔術学院に戻ってきた。
広い敷地を移動しながら、私はふと気になったことを質問する。
「ねえ、そういえばシャーロット嬢はなんでお礼するのに王城に行きたいって言ったの?お礼するならどちらかと言うと自分の家に呼ばない?」
「フフッ…」
またランドルトに笑われた。
「恐らくお礼と言うのは建前だと思いますよ。一般に貴族の未婚の女性が同じく未婚の殿方の家に行ったり、殿方の父親に会ったりするのは求婚の意志を表しますから、そういうことでしょう」
「あーなるほど」
要するにシャーロットはラクアに対し結婚したいほどゾッコンだということか。まあ確かに、王子様に優しく接された上に華麗に助けられたとあっては、そうなるのも頷ける、気がする。
「……気になりますか?」
「え、ごめんなにが?」
「……いえ……なんでもございません」
そういえば、私がジークに"ジークのお父さんに会いたい"と言ったのも、場合によっては求婚と取られかねないのでは?通りでジークが動揺していたわけだ。
……まいっか。
ソルード侯爵は私たちに対し深々と頭を下げる。
「いえ、当然のことをしたまでです。」
「そうです、頭をおあげください。」
「いえ、いえ、本当にありがとうございます!」
礼儀正しいのはいいことだが、そろそろやめて欲しい。
「……ところで、この男はどうしましょう?」
「それなら私のところに自警団がいますので、そこに引き取って貰いましょう。」
「わかりました。いくらか気になることがあるのですが、引き渡すときに自警団の方とお話することは出来ますか?」
「ええ……もちろん構いませんよ。」
「あ、それとソルード侯爵にお伺いするのが正解か分からないですが……これ、男から取り上げたものなのですが、どういうものか知りませんか?」
私は、侯爵とついでにラクアにペンダントを見せる。
「さあ……私にはよく分かりませんな…」
ラクアも無言で首を横に振る。
「ホッホッ、そのペンダントは呪法具じゃな」
突然後ろから発言したのは、お茶会に参加していた、白いローブをまとい長い白髭を生やした老人だ。
「呪法具、ですか?」
「そうじゃ。それの場合、恐らく魔法銃が撃たれると同時に、何らかの効果が発動するようになっていたようじゃな。その効果が具体的にどういったものなのかは見ただけでは分からぬが。ちなみに魔法銃はごく一般的なもので、金さえ出せば誰でも入手できる。もっともその男がそれを買えるだけの金を持っているとは思えぬが…」
呪法具とは……確か、文字通り魔導具の呪法バージョンで、呪法具取り扱い免許のあるものが国に届け出をした上で、研究など限られた目的で使用することのみ許可されていたはずだ。
そんなものを持っていたとは、ますます謎が深まる。
「なるほど……え、ということはこれはどうすれば…?」
自警団も免許は持っていないだろうし、かと言ってその辺に捨てておく訳にもいかない。それにどのような効果があるのか調べておくべきだ。
「それならワシが預かろう。免許なら持っておるし、ワシの研究室でなら効果や素材なんかも分かるじゃろう。」
「それはありがたいですが……」
ここまで会話しておいてなんだが、どちら様でしょうか。お茶会に招待されていたのだから怪しい人では無いんだろうが…
「おっと、自己紹介がまだだったの。ワシはエドガス・ラウエンシュタインじゃ、以後よろしくのう。」
「なっ…!エドガスって、"大賢者エドガス"か…!?元王国魔導師の…それも、歴代最高峰と言われた伝説級の魔導師では無いか!」
ラクアが珍しく動揺する。王国魔導師とは、王国が直に契約を結び協力関係にある魔法使いの総称で、ほんのひと握りの人間しかなれない。その中でも歴代最高峰とはいかほどか。
「……え」
試しに魔力視でエドガス殿を見てみると、とんでもない魔力量だ。私のそれをゆうに超えており、数値としては600~700位はあるんじゃなかろうか。
「ホッホッ、昔はそんなことも言われていましたな。ですが今はただの魔法好きの老いぼれですじゃ。……それで、どうするかのう。その呪法具預けてくれるかのう?」
「はい、ぜひよろしくお願い致します。」
こうしてエドガス殿に呪法具とついでに魔法銃を預け、いつの間に呼んだのか、まもなく到着した自警団に男の身元と剣を引き渡した。エドガス殿に彼の屋敷の場所と連絡先を聞き、自警団に対し状況と私の見解を説明し終わり、これでひとまず一件落着だ。
「それじゃあ、ワシはこの辺で失礼するぞ、お嬢さん。」
「はい、ありがとうございました。」
エドガス殿が去って行くと、入れ替わるようにランドルトに付き添われたシャーロットがこちらに歩いてきた。
「あ、あの!ありがとうございました、ラクア様!」
「礼には及びませんよ、シャーロット嬢。」
あれ、私は無視?と思ったが、そもそも私はずっと"幻影"で潜伏していたので、シャーロットには見えていなかったのだろう。
「いえそれでも……その、も、もしよろしければお礼も兼ねて王城へお伺いしてもよろしいでしょうか!!」
「……ええ、もちろんです。お待ちしていますよ、シャーロット嬢。」
――――――――――
その後お茶会はそのまま解散になり、私たちは魔術学院に戻ってきた。
広い敷地を移動しながら、私はふと気になったことを質問する。
「ねえ、そういえばシャーロット嬢はなんでお礼するのに王城に行きたいって言ったの?お礼するならどちらかと言うと自分の家に呼ばない?」
「フフッ…」
またランドルトに笑われた。
「恐らくお礼と言うのは建前だと思いますよ。一般に貴族の未婚の女性が同じく未婚の殿方の家に行ったり、殿方の父親に会ったりするのは求婚の意志を表しますから、そういうことでしょう」
「あーなるほど」
要するにシャーロットはラクアに対し結婚したいほどゾッコンだということか。まあ確かに、王子様に優しく接された上に華麗に助けられたとあっては、そうなるのも頷ける、気がする。
「……気になりますか?」
「え、ごめんなにが?」
「……いえ……なんでもございません」
そういえば、私がジークに"ジークのお父さんに会いたい"と言ったのも、場合によっては求婚と取られかねないのでは?通りでジークが動揺していたわけだ。
……まいっか。
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