上 下
48 / 103
いつもの学院生活…?

第48話 波乱のお茶会③

しおりを挟む
突然、お茶会の会場の端の方から男女の叫び声が聞こえる。声の方を見ると、なんと薄汚れた男がお茶会の客に対して剣を振り回しているでは無いか。

男の存在に気がついた客が混乱しながら逃げていく。

「うおぉぉい!ソルード侯爵の1人娘はどこだ!!とっととだせぇー!」

ソルード侯爵の1人娘、つまりシャーロットを狙っているようだ。魔力視で見た限り魔法を使えるほどの魔力は持っておらず、脅威になるような攻撃手段は持っていないように見えるが、奴は完全に冷静さを欠いているし、まだなにか隠している可能性もあるので慎重に対応しなければならない。

「どこだっつってんだよ!!」

男はさらに激昂げきこうしている。シャーロットはそれを見てラクアの服を掴み震えている。警備兵が来る様子もないのでいい加減どうにかせねば。

「エルマー、シャーロット嬢を頼む。俺は奴の対処をする。」
「かしこまりました」

そういうとラクアはシャーロットの頭を軽く撫で、ランドルトに渡してから男の方へ歩いて向かっていく。ラクア1人でも問題なさそうだが、念の為私は"幻影"で潜伏してまわり込むようにラクアの後ろをついていく。それと何かあったとき用にラクアと男の足元付近に"幻影"で不可視化した水を忍ばせておく。ラクアは私の方を一瞥いちべつしたあと、構わず進み続ける。

「おい、お前!こっち来んじゃねえよ!!」
「落ち着け、そこの男。ここがどこかわかっているのか。」
「ああ!?知るかそんなもん!」

シャーロットを狙って侯爵家の屋敷ここに来たんじゃないのか。言ってることが支離滅裂である。

ちなみに男の持ち物を観察すると、剣の他に大きな宝石がついたペンダントを首から下げている。

「誰だか知らんが邪魔すんな!!」

男がラクアに剣を振り下ろす。が、ラクアは装飾用だと言っていた剣で難なく受け止める。一応刃がないだけで形も材料も本物の剣と同じようだ。

「クソっ!!」

カキンッ!カーン!ガキィィン!!

「のわ!?」

その後男が何度か剣で攻撃したが、ラクアは全てガードし、最終的に男の剣を弾き飛ばしてしまった。

これで男は武器を持っていない状態……とはいかなかった。

「クソっこうなったら!!」

ジャキッ!!

「動くな!動いたら撃つぞ!!」

男は懐に銃のようなものを隠し持っていた。恐らく魔法銃とか言うやつだ。ラクアは本人が大丈夫でも、後ろに流れ弾がいく可能性があるので下手に動けないでいる。男が魔法銃を構えると同時にペンダントが黒く光り始める。嫌な予感しかしない。

バシッ!

「ぐわ!なんだ!?」

こういうのはとっとと対処するに限る。私は男の足元に忍ばせておいた水を、銃とペンダントめがけ勢いよく発射し、男からそれらを奪い取る。それらの武器は水に包んで操作し私の手元に持ってくる。するとペンダントは光らなくなった。

「クソっ……なんでだよ!!」

どうやらこれ以上武器は持っていなかったようで、男は何もできずにその場に座り込む。

すると、銃の脅しが無くなり動けるようになったラクアが近くに落ちていた男の剣を拾い、地面に垂直になるように持ち上げそのまま座り込んでブツブツ言っている男に振り下ろそうとしている。

……おい、殺す気じゃないだろうな。私は"幻影"をとき男とラクアの方へ向かう。

「待って、ラクア」
「なぜ止める?まさか、我々を殺そうとした男に同情したわけではないだろうな」

本当に殺す気だったのか、想像以上に容赦ないなこいつ。

私はひとまず男の手足を"固体化"した水で拘束しながら発言する。

「いやそうじゃなくて、いやそれもちょっとあるけど、生かしておいてそいつから色々聞いた方が良いでしょ。ただの不審者にしては色々おかしいし。」

そう、この男色々おかしいのだ。まず警備兵がいるはずの門をどうやって通ってきたのか、シャーロット嬢を探していると言う割にここがどこかよく分かっていないのはなぜか、格好からしてお金をあまり持っていなさそうなのに剣や魔法銃、ヤバそうなペンダントをどうやって手に入れたのか。

この世界の倫理観が前世と違うのは分かっているから、ラクアが殺そうとするのも理解できる。だが、いずれにせよそれらの謎が分からないうちに殺すのは愚策だ。

「それに……」
「それに、茶会の客に血飛沫ちしぶきがあがるところを見せるのは良くない、か。……一理ある。」

そういうとラクアは剣を下げてくれた。

「何事ですか!?」

そう言って屋敷の門がある方から駆け寄って来たのはソルード侯爵だ。ひとまず私たちは、彼に今起きたことを説明する。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

黙示録戦争後に残された世界でたった一人冷凍睡眠から蘇ったオレが超科学のチート人工知能の超美女とともに文芸復興を目指す物語。

あっちゅまん
ファンタジー
黙示録の最終戦争は実際に起きてしまった……そして、人類は一度滅亡した。 だが、もう一度世界は創生され、新しい魔法文明が栄えた世界となっていた。 ところが、そんな中、冷凍睡眠されていたオレはなんと蘇生されてしまったのだ。 オレを目覚めさせた超絶ボディの超科学の人工頭脳の超美女と、オレの飼っていた粘菌が超進化したメイドと、同じく飼っていたペットの超進化したフクロウの紳士と、コレクションのフィギュアが生命を宿した双子の女子高生アンドロイドとともに、魔力がないのに元の世界の科学力を使って、マンガ・アニメを蘇らせ、この世界でも流行させるために頑張る話。 そして、そのついでに、街をどんどん発展させて建国して、いつのまにか世界にめちゃくちゃ影響力のある存在になっていく物語です。 【黙示録戦争後に残された世界観及び設定集】も別にアップしています。 よければ参考にしてください。

フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 チートなんてない。 日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。 自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。 魔法?生活魔法しか使えませんけど。 物作り?こんな田舎で何ができるんだ。 狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。 そんな僕も15歳。成人の年になる。 何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。 こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。 になればいいと思っています。 皆様の感想。いただけたら嬉しいです。 面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。 よろしくお願いします! カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。 続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜

ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。 年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。 そんな彼女の癒しは3匹のペット達。 シベリアンハスキーのコロ。 カナリアのカナ。 キバラガメのキィ。 犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。 ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。 挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。 アイラもペット達も焼け死んでしまう。 それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。 何故かペット達がチートな力を持って…。 アイラは只の幼女になって…。 そんな彼女達のほのぼの異世界生活。 テイマー物 第3弾。 カクヨムでも公開中。

処理中です...