乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

文字の大きさ
上 下
48 / 115
いつもの学院生活…?

第48話 波乱のお茶会③

しおりを挟む
突然、お茶会の会場の端の方から男女の叫び声が聞こえる。声の方を見ると、なんと薄汚れた男がお茶会の客に対して剣を振り回しているでは無いか。

男の存在に気がついた客が混乱しながら逃げていく。

「うおぉぉい!ソルード侯爵の1人娘はどこだ!!とっととだせぇー!」

ソルード侯爵の1人娘、つまりシャーロットを狙っているようだ。魔力視で見た限り魔法を使えるほどの魔力は持っておらず、脅威になるような攻撃手段は持っていないように見えるが、奴は完全に冷静さを欠いているし、まだなにか隠している可能性もあるので慎重に対応しなければならない。

「どこだっつってんだよ!!」

男はさらに激昂げきこうしている。シャーロットはそれを見てラクアの服を掴み震えている。警備兵が来る様子もないのでいい加減どうにかせねば。

「エルマー、シャーロット嬢を頼む。俺は奴の対処をする。」
「かしこまりました」

そういうとラクアはシャーロットの頭を軽く撫で、ランドルトに渡してから男の方へ歩いて向かっていく。ラクア1人でも問題なさそうだが、念の為私は"幻影"で潜伏してまわり込むようにラクアの後ろをついていく。それと何かあったとき用にラクアと男の足元付近に"幻影"で不可視化した水を忍ばせておく。ラクアは私の方を一瞥いちべつしたあと、構わず進み続ける。

「おい、お前!こっち来んじゃねえよ!!」
「落ち着け、そこの男。ここがどこかわかっているのか。」
「ああ!?知るかそんなもん!」

シャーロットを狙って侯爵家の屋敷ここに来たんじゃないのか。言ってることが支離滅裂である。

ちなみに男の持ち物を観察すると、剣の他に大きな宝石がついたペンダントを首から下げている。

「誰だか知らんが邪魔すんな!!」

男がラクアに剣を振り下ろす。が、ラクアは装飾用だと言っていた剣で難なく受け止める。一応刃がないだけで形も材料も本物の剣と同じようだ。

「クソっ!!」

カキンッ!カーン!ガキィィン!!

「のわ!?」

その後男が何度か剣で攻撃したが、ラクアは全てガードし、最終的に男の剣を弾き飛ばしてしまった。

これで男は武器を持っていない状態……とはいかなかった。

「クソっこうなったら!!」

ジャキッ!!

「動くな!動いたら撃つぞ!!」

男は懐に銃のようなものを隠し持っていた。恐らく魔法銃とか言うやつだ。ラクアは本人が大丈夫でも、後ろに流れ弾がいく可能性があるので下手に動けないでいる。男が魔法銃を構えると同時にペンダントが黒く光り始める。嫌な予感しかしない。

バシッ!

「ぐわ!なんだ!?」

こういうのはとっとと対処するに限る。私は男の足元に忍ばせておいた水を、銃とペンダントめがけ勢いよく発射し、男からそれらを奪い取る。それらの武器は水に包んで操作し私の手元に持ってくる。するとペンダントは光らなくなった。

「クソっ……なんでだよ!!」

どうやらこれ以上武器は持っていなかったようで、男は何もできずにその場に座り込む。

すると、銃の脅しが無くなり動けるようになったラクアが近くに落ちていた男の剣を拾い、地面に垂直になるように持ち上げそのまま座り込んでブツブツ言っている男に振り下ろそうとしている。

……おい、殺す気じゃないだろうな。私は"幻影"をとき男とラクアの方へ向かう。

「待って、ラクア」
「なぜ止める?まさか、我々を殺そうとした男に同情したわけではないだろうな」

本当に殺す気だったのか、想像以上に容赦ないなこいつ。

私はひとまず男の手足を"固体化"した水で拘束しながら発言する。

「いやそうじゃなくて、いやそれもちょっとあるけど、生かしておいてそいつから色々聞いた方が良いでしょ。ただの不審者にしては色々おかしいし。」

そう、この男色々おかしいのだ。まず警備兵がいるはずの門をどうやって通ってきたのか、シャーロット嬢を探していると言う割にここがどこかよく分かっていないのはなぜか、格好からしてお金をあまり持っていなさそうなのに剣や魔法銃、ヤバそうなペンダントをどうやって手に入れたのか。

この世界の倫理観が前世と違うのは分かっているから、ラクアが殺そうとするのも理解できる。だが、いずれにせよそれらの謎が分からないうちに殺すのは愚策だ。

「それに……」
「それに、茶会の客に血飛沫ちしぶきがあがるところを見せるのは良くない、か。……一理ある。」

そういうとラクアは剣を下げてくれた。

「何事ですか!?」

そう言って屋敷の門がある方から駆け寄って来たのはソルード侯爵だ。ひとまず私たちは、彼に今起きたことを説明する。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜

ネリムZ
ファンタジー
 唐突にギルドマスターから宣言される言葉。 「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」  理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。  様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。  そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。  モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。  行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。  俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。  そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。  新たな目標、新たな仲間と環境。  信念を持って行動する、一人の男の物語。

僕と精霊 〜魔法と科学と宝石の輝き〜

一般人
ファンタジー
 人類が魔法と科学の力を発見して数万年。それぞれの力を持つ者同士の思想の衝突で起きた長き時に渡る戦争、『発展戦争』。そんな戦争の休戦から早100年。魔法軍の国に住む高校生ジャン・バーンは精霊カーバンクルのパンプと出会いと共に両国の歪みに巻き込まれていく。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

処理中です...