40 / 115
魔術大会
第40話 思わぬ打診
しおりを挟む
「それでは、閉会式を終わります」
閉会式も終わり、みんなぞろぞろと戻っていく。このまま特にHRもなく解散らしい。
私達も人の流れに乗って移動していると、見覚えのあるメガネの少年が近づいてきた。
「少しよろしいでしょうか、ベルナール様」
「ええ、大丈夫ですが、どういったご用件でしょうか?」
「用件について話す前に、私についてきて頂けませんか?」
「……承知しました」
そういうとランドルトはどんどん人がいない方へと進んでいく。え、何決闘でもするの?と思ったが、ランドルトがそういうことをするタイプにも思えない。
そうこうしているうちに目的地に着いたようだ。ここは校舎裏だ。昨日といい校舎裏に縁があるななどと考えていると、ランドルトが口を開いた。
「実はベルナール様に、折り入ってお頼みしたいことがございまして……」
頼み事という割に、ランドルトは何やらまごついている。
「……ラクア・リアムール殿下の婚約者になっていただけないでしょうか!」
「……は?」
……え?どういうこと?
思わず"は?"などと言ってしまったが、実際問題状況が飲み込めない。
「えっと、それまたどういうことでしょうか?」
ランドルトがジリジリと寄ってくる。
「ベルナール様の凄さは身をもって体感致しましたし、何よりあの殿下を倒してしまわれた。女性で、いや性別を問わず、その年齢でそこまで洗練された力をお持ちになっている方はそうそういらっしゃいません。それに殿下もあの試合以降特に、あなたの事をよく話してらっしゃいます。そこで、ベルナール様を是非婚約者にと考えている所存でございます。」
ランドルトがまくし立てるように話す。しかし、その理屈は無理があるだろう。強いって言うなら婚約者より騎士とかに誘った方がいいし、ラクアが私に興味を持っているのは単純に推薦合格者なのと、自分を負かした相手だからだ。
それに、私はラクアと結婚したいとは思っていない。この世界の女性の常識として、王族と結婚するのは最大の幸福とされているが、あいにく異世界生まれなものでそういった価値観は無いのだ。ラクア個人に対しても、あくまで同期生として親睦を深めるのも悪くないかなと思っている程度だ。
とりあえず、失礼にならないように遠回しに断ってみる。
「なるほど。しかし私は平民ですから、王子であらせられる殿下との婚約は厳しいのでは?それと、殿下ご自身はどう思われているのでしょうか。」
「それに関しては、あなたのように将来有望な方なら、国に貢献する意思さえあれば国王がベルナール様に男爵位を授けることが可能かも知れませんし、そうでなくとも養子に欲しがる貴族も多くいるでしょうから問題ないかと。ちなみにこのことは私の独断で、ベルナール様の同意が得られれば殿下に推薦しようと考えておりました」
やはりそうなるか。この国には国に大きく貢献した平民に1代限りで爵位を与える制度が存在する。実際、私が「Amour Tale」で唯一プレイした第1王子ルートでも、"ヒロイン"に爵位を与えようだのどこかの貴族の養子にしようだの言う話は出ていたし、どっちかは忘れたが実際そうしていた気がする。
しかし、ラクアに話を通す前というのは唯一の救いだ。
「申し訳ありませんが、殿下に直接お声がけ頂いたのならともかく、私の方からそのような差し出がましい申し出をするのはいくらランドルト様の推薦があるとはいえはばかられます。」
「………」
さすがにまずかったか…?
「……そういうことであれば仕方ありません。今は手を引きましょう。しかし、普通の女性なら全力で食いつくであろう提案を断ってしまわれるとは、さすが殿下がお認めになったお方ですね。もし気がむくことがありましたらいつでもお申し付けください。」
「……承知致しました」
「それでは、失礼致します。あ、あとラクア様にタメ口なら、次から私にも敬語は無しでお願いしますね」
そういうとランドルトは去っていった。
なんだか余計沼にハマった気がしないでもないが、かと言ってこれ以上どうしようもない。
しかし、ラクアが直々に生徒会役員に誘ってきたことといい、突然ランドルトが"婚約者に"なんて今までこの字も出てこなかったワードを出てきたことといい、正直ちょっと彼らの行動は不自然だ。
もしや、元の「Amour Tale」のストーリーから大きく外れている今の状況から元の状態に戻すために、彼らにも無意識の内に"修正"が入っているのでは?
……これはあくまで憶測に過ぎないわけだが、もしそうだとしたら私はもっと「Amour Tale」のストーリーに向き合わなくてはいけないのかもしれない。
――――――――― 魔術大会編終わり
閉会式も終わり、みんなぞろぞろと戻っていく。このまま特にHRもなく解散らしい。
私達も人の流れに乗って移動していると、見覚えのあるメガネの少年が近づいてきた。
「少しよろしいでしょうか、ベルナール様」
「ええ、大丈夫ですが、どういったご用件でしょうか?」
「用件について話す前に、私についてきて頂けませんか?」
「……承知しました」
そういうとランドルトはどんどん人がいない方へと進んでいく。え、何決闘でもするの?と思ったが、ランドルトがそういうことをするタイプにも思えない。
そうこうしているうちに目的地に着いたようだ。ここは校舎裏だ。昨日といい校舎裏に縁があるななどと考えていると、ランドルトが口を開いた。
「実はベルナール様に、折り入ってお頼みしたいことがございまして……」
頼み事という割に、ランドルトは何やらまごついている。
「……ラクア・リアムール殿下の婚約者になっていただけないでしょうか!」
「……は?」
……え?どういうこと?
思わず"は?"などと言ってしまったが、実際問題状況が飲み込めない。
「えっと、それまたどういうことでしょうか?」
ランドルトがジリジリと寄ってくる。
「ベルナール様の凄さは身をもって体感致しましたし、何よりあの殿下を倒してしまわれた。女性で、いや性別を問わず、その年齢でそこまで洗練された力をお持ちになっている方はそうそういらっしゃいません。それに殿下もあの試合以降特に、あなたの事をよく話してらっしゃいます。そこで、ベルナール様を是非婚約者にと考えている所存でございます。」
ランドルトがまくし立てるように話す。しかし、その理屈は無理があるだろう。強いって言うなら婚約者より騎士とかに誘った方がいいし、ラクアが私に興味を持っているのは単純に推薦合格者なのと、自分を負かした相手だからだ。
それに、私はラクアと結婚したいとは思っていない。この世界の女性の常識として、王族と結婚するのは最大の幸福とされているが、あいにく異世界生まれなものでそういった価値観は無いのだ。ラクア個人に対しても、あくまで同期生として親睦を深めるのも悪くないかなと思っている程度だ。
とりあえず、失礼にならないように遠回しに断ってみる。
「なるほど。しかし私は平民ですから、王子であらせられる殿下との婚約は厳しいのでは?それと、殿下ご自身はどう思われているのでしょうか。」
「それに関しては、あなたのように将来有望な方なら、国に貢献する意思さえあれば国王がベルナール様に男爵位を授けることが可能かも知れませんし、そうでなくとも養子に欲しがる貴族も多くいるでしょうから問題ないかと。ちなみにこのことは私の独断で、ベルナール様の同意が得られれば殿下に推薦しようと考えておりました」
やはりそうなるか。この国には国に大きく貢献した平民に1代限りで爵位を与える制度が存在する。実際、私が「Amour Tale」で唯一プレイした第1王子ルートでも、"ヒロイン"に爵位を与えようだのどこかの貴族の養子にしようだの言う話は出ていたし、どっちかは忘れたが実際そうしていた気がする。
しかし、ラクアに話を通す前というのは唯一の救いだ。
「申し訳ありませんが、殿下に直接お声がけ頂いたのならともかく、私の方からそのような差し出がましい申し出をするのはいくらランドルト様の推薦があるとはいえはばかられます。」
「………」
さすがにまずかったか…?
「……そういうことであれば仕方ありません。今は手を引きましょう。しかし、普通の女性なら全力で食いつくであろう提案を断ってしまわれるとは、さすが殿下がお認めになったお方ですね。もし気がむくことがありましたらいつでもお申し付けください。」
「……承知致しました」
「それでは、失礼致します。あ、あとラクア様にタメ口なら、次から私にも敬語は無しでお願いしますね」
そういうとランドルトは去っていった。
なんだか余計沼にハマった気がしないでもないが、かと言ってこれ以上どうしようもない。
しかし、ラクアが直々に生徒会役員に誘ってきたことといい、突然ランドルトが"婚約者に"なんて今までこの字も出てこなかったワードを出てきたことといい、正直ちょっと彼らの行動は不自然だ。
もしや、元の「Amour Tale」のストーリーから大きく外れている今の状況から元の状態に戻すために、彼らにも無意識の内に"修正"が入っているのでは?
……これはあくまで憶測に過ぎないわけだが、もしそうだとしたら私はもっと「Amour Tale」のストーリーに向き合わなくてはいけないのかもしれない。
――――――――― 魔術大会編終わり
155
お気に入りに追加
692
あなたにおすすめの小説

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!!
僕は異世界転生してしまう
大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった
仕事とゲームで過労になってしまったようだ
とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた
転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった
住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる
◇
HOTランキング一位獲得!
皆さま本当にありがとうございます!
無事に書籍化となり絶賛発売中です
よかったら手に取っていただけると嬉しいです
これからも日々勉強していきたいと思います
◇
僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました
毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる