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魔術大会
第40話 思わぬ打診
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「それでは、閉会式を終わります」
閉会式も終わり、みんなぞろぞろと戻っていく。このまま特にHRもなく解散らしい。
私達も人の流れに乗って移動していると、見覚えのあるメガネの少年が近づいてきた。
「少しよろしいでしょうか、ベルナール様」
「ええ、大丈夫ですが、どういったご用件でしょうか?」
「用件について話す前に、私についてきて頂けませんか?」
「……承知しました」
そういうとランドルトはどんどん人がいない方へと進んでいく。え、何決闘でもするの?と思ったが、ランドルトがそういうことをするタイプにも思えない。
そうこうしているうちに目的地に着いたようだ。ここは校舎裏だ。昨日といい校舎裏に縁があるななどと考えていると、ランドルトが口を開いた。
「実はベルナール様に、折り入ってお頼みしたいことがございまして……」
頼み事という割に、ランドルトは何やらまごついている。
「……ラクア・リアムール殿下の婚約者になっていただけないでしょうか!」
「……は?」
……え?どういうこと?
思わず"は?"などと言ってしまったが、実際問題状況が飲み込めない。
「えっと、それまたどういうことでしょうか?」
ランドルトがジリジリと寄ってくる。
「ベルナール様の凄さは身をもって体感致しましたし、何よりあの殿下を倒してしまわれた。女性で、いや性別を問わず、その年齢でそこまで洗練された力をお持ちになっている方はそうそういらっしゃいません。それに殿下もあの試合以降特に、あなたの事をよく話してらっしゃいます。そこで、ベルナール様を是非婚約者にと考えている所存でございます。」
ランドルトがまくし立てるように話す。しかし、その理屈は無理があるだろう。強いって言うなら婚約者より騎士とかに誘った方がいいし、ラクアが私に興味を持っているのは単純に推薦合格者なのと、自分を負かした相手だからだ。
それに、私はラクアと結婚したいとは思っていない。この世界の女性の常識として、王族と結婚するのは最大の幸福とされているが、あいにく異世界生まれなものでそういった価値観は無いのだ。ラクア個人に対しても、あくまで同期生として親睦を深めるのも悪くないかなと思っている程度だ。
とりあえず、失礼にならないように遠回しに断ってみる。
「なるほど。しかし私は平民ですから、王子であらせられる殿下との婚約は厳しいのでは?それと、殿下ご自身はどう思われているのでしょうか。」
「それに関しては、あなたのように将来有望な方なら、国に貢献する意思さえあれば国王がベルナール様に男爵位を授けることが可能かも知れませんし、そうでなくとも養子に欲しがる貴族も多くいるでしょうから問題ないかと。ちなみにこのことは私の独断で、ベルナール様の同意が得られれば殿下に推薦しようと考えておりました」
やはりそうなるか。この国には国に大きく貢献した平民に1代限りで爵位を与える制度が存在する。実際、私が「Amour Tale」で唯一プレイした第1王子ルートでも、"ヒロイン"に爵位を与えようだのどこかの貴族の養子にしようだの言う話は出ていたし、どっちかは忘れたが実際そうしていた気がする。
しかし、ラクアに話を通す前というのは唯一の救いだ。
「申し訳ありませんが、殿下に直接お声がけ頂いたのならともかく、私の方からそのような差し出がましい申し出をするのはいくらランドルト様の推薦があるとはいえはばかられます。」
「………」
さすがにまずかったか…?
「……そういうことであれば仕方ありません。今は手を引きましょう。しかし、普通の女性なら全力で食いつくであろう提案を断ってしまわれるとは、さすが殿下がお認めになったお方ですね。もし気がむくことがありましたらいつでもお申し付けください。」
「……承知致しました」
「それでは、失礼致します。あ、あとラクア様にタメ口なら、次から私にも敬語は無しでお願いしますね」
そういうとランドルトは去っていった。
なんだか余計沼にハマった気がしないでもないが、かと言ってこれ以上どうしようもない。
しかし、ラクアが直々に生徒会役員に誘ってきたことといい、突然ランドルトが"婚約者に"なんて今までこの字も出てこなかったワードを出てきたことといい、正直ちょっと彼らの行動は不自然だ。
もしや、元の「Amour Tale」のストーリーから大きく外れている今の状況から元の状態に戻すために、彼らにも無意識の内に"修正"が入っているのでは?
……これはあくまで憶測に過ぎないわけだが、もしそうだとしたら私はもっと「Amour Tale」のストーリーに向き合わなくてはいけないのかもしれない。
――――――――― 魔術大会編終わり
閉会式も終わり、みんなぞろぞろと戻っていく。このまま特にHRもなく解散らしい。
私達も人の流れに乗って移動していると、見覚えのあるメガネの少年が近づいてきた。
「少しよろしいでしょうか、ベルナール様」
「ええ、大丈夫ですが、どういったご用件でしょうか?」
「用件について話す前に、私についてきて頂けませんか?」
「……承知しました」
そういうとランドルトはどんどん人がいない方へと進んでいく。え、何決闘でもするの?と思ったが、ランドルトがそういうことをするタイプにも思えない。
そうこうしているうちに目的地に着いたようだ。ここは校舎裏だ。昨日といい校舎裏に縁があるななどと考えていると、ランドルトが口を開いた。
「実はベルナール様に、折り入ってお頼みしたいことがございまして……」
頼み事という割に、ランドルトは何やらまごついている。
「……ラクア・リアムール殿下の婚約者になっていただけないでしょうか!」
「……は?」
……え?どういうこと?
思わず"は?"などと言ってしまったが、実際問題状況が飲み込めない。
「えっと、それまたどういうことでしょうか?」
ランドルトがジリジリと寄ってくる。
「ベルナール様の凄さは身をもって体感致しましたし、何よりあの殿下を倒してしまわれた。女性で、いや性別を問わず、その年齢でそこまで洗練された力をお持ちになっている方はそうそういらっしゃいません。それに殿下もあの試合以降特に、あなたの事をよく話してらっしゃいます。そこで、ベルナール様を是非婚約者にと考えている所存でございます。」
ランドルトがまくし立てるように話す。しかし、その理屈は無理があるだろう。強いって言うなら婚約者より騎士とかに誘った方がいいし、ラクアが私に興味を持っているのは単純に推薦合格者なのと、自分を負かした相手だからだ。
それに、私はラクアと結婚したいとは思っていない。この世界の女性の常識として、王族と結婚するのは最大の幸福とされているが、あいにく異世界生まれなものでそういった価値観は無いのだ。ラクア個人に対しても、あくまで同期生として親睦を深めるのも悪くないかなと思っている程度だ。
とりあえず、失礼にならないように遠回しに断ってみる。
「なるほど。しかし私は平民ですから、王子であらせられる殿下との婚約は厳しいのでは?それと、殿下ご自身はどう思われているのでしょうか。」
「それに関しては、あなたのように将来有望な方なら、国に貢献する意思さえあれば国王がベルナール様に男爵位を授けることが可能かも知れませんし、そうでなくとも養子に欲しがる貴族も多くいるでしょうから問題ないかと。ちなみにこのことは私の独断で、ベルナール様の同意が得られれば殿下に推薦しようと考えておりました」
やはりそうなるか。この国には国に大きく貢献した平民に1代限りで爵位を与える制度が存在する。実際、私が「Amour Tale」で唯一プレイした第1王子ルートでも、"ヒロイン"に爵位を与えようだのどこかの貴族の養子にしようだの言う話は出ていたし、どっちかは忘れたが実際そうしていた気がする。
しかし、ラクアに話を通す前というのは唯一の救いだ。
「申し訳ありませんが、殿下に直接お声がけ頂いたのならともかく、私の方からそのような差し出がましい申し出をするのはいくらランドルト様の推薦があるとはいえはばかられます。」
「………」
さすがにまずかったか…?
「……そういうことであれば仕方ありません。今は手を引きましょう。しかし、普通の女性なら全力で食いつくであろう提案を断ってしまわれるとは、さすが殿下がお認めになったお方ですね。もし気がむくことがありましたらいつでもお申し付けください。」
「……承知致しました」
「それでは、失礼致します。あ、あとラクア様にタメ口なら、次から私にも敬語は無しでお願いしますね」
そういうとランドルトは去っていった。
なんだか余計沼にハマった気がしないでもないが、かと言ってこれ以上どうしようもない。
しかし、ラクアが直々に生徒会役員に誘ってきたことといい、突然ランドルトが"婚約者に"なんて今までこの字も出てこなかったワードを出てきたことといい、正直ちょっと彼らの行動は不自然だ。
もしや、元の「Amour Tale」のストーリーから大きく外れている今の状況から元の状態に戻すために、彼らにも無意識の内に"修正"が入っているのでは?
……これはあくまで憶測に過ぎないわけだが、もしそうだとしたら私はもっと「Amour Tale」のストーリーに向き合わなくてはいけないのかもしれない。
――――――――― 魔術大会編終わり
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