乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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魔術大会

第38話 大会6日目:午後②

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再び2人で屋台の通りを練り歩く。周りを見渡してはたまに先程買ったブレスレットに目線を移す。

「良かったね!」

「え?あ、うん。」

その様子をジークに見られていた。少し恥ずかしい。しかしジークはまた随分と嬉しそうである。

「あ、そういえば」

「ん?なに?」

「ジークのお父様にお会いしたいんだけど」

"何か"が起こる前の今の段階で騎士団長が何か知っているかは分からないが、あのゲーム画面に関する唯一の手がかりになので1度会っておきたい。

「……へ?……あ、うん大丈夫だと思うよ!……ちなみになんで会いたいの?」

随分と歯切れが悪い返事だが、何か言ってはいけないことでも言ってしまっただろうか。

「騎士団の仕事に興味があって、ちょっとでもお話聞けたらいいなと」

目的をそのまま言う訳にもいかないので、あらかじめ考えておいた理由を伝える。

「え、あ、そういう事ね!」

「厳しいなら無理にとは言わないけど……」

「ううん、そんなことないよ!でもお父さん忙しいから、今すぐにとはいかないかも……」

「ああ、それは大丈夫。もし出来たら年内でお願いしたいけど」

私が考えた嘘の理由だと、事件や事故については聞きやすいが、その代わり緊急性を持たせることが出来ない。"今すぐ職場体験に行かないと大変なことになるんです!"とか言ったら不自然さ満載だ。厳密にはもう今の時期に"何か"があってもおかしくは無いのだが、そもそも私の杞憂に終わる可能性もあるのに極端に急かすことは出来ない。

「あ、それくらいなら大丈夫だと思う!お父さんに聞いておくね!」

「ありがとう、助かるよ。」

これでとりあえず騎士団長とコンタクトは取れそうだ。あと出来そうなことは特にない。

――――――

しかし、改めて周囲を見渡すととても沢山の人がここに集まっている。私は何となくここの人たちの魔力がどんなものかと魔力視で見てみる。魔力視を使うと人の魔力量が大まかにだがわかるのだ。

するといろんな色の魔力が可視化される。カラフルで綺麗だなどと考えていると、1人明らかに異質な人を見つけた。恐らく魔術学院の関係者ではなさそうな、ボサボサの黒髪で黒いローブを羽織った中年男なのだが、魔力が一切見えないのだ。

この世界の人間は全員必ず魔力を持っている。魔法が使えない人も稀にいるが、そういう人でも魔法を使えるほどの魔力が無いというだけで、少なからず魔力は持っているのだ。

しかし、くだんの男は魔力が微塵も見えない、0の状態なのだ。いったいどういう…
と考えているうちにその男が行ってしまいそうだった。

「ごめんジーク、ちょっとここで待ってて」
「え、どこ行くの!!」

魔力が無いのはもしや…と気になってその男を追いかける。

しばらく着いていくと、人気ひとけのない校舎裏についた。ここまで見失わずに来たつもりだが、あの男の姿はない。一体どこへ…

「後をつけるのはあんまりいいこととは言えねぇな、嬢ちゃん?」
「っ…!!」

突然後ろから声がした。瞬時に声の方へ向き直る。するとボサボサ頭に、無精髭を生やしたあの男が立っていた。いつの間に背後にまわったのだろうか。

魔力視は使ったままだったが魔力の痕跡はないし、この男は魔力が無いはずだ。魔法で潜伏していたわけではない。気の抜けるような話し方をしているが、話の端々に殺気の様なものを感じる。極度に緊張する。こいつ、只者ただものでは無い。

「美人に睨みつけられるのは悪かねぇが、ちょいと酷すぎやしねぇかい?」
「………」

半ば反射的に、男の頭上に魔法陣を展開する。

「へへっ、とことんあっしは嫌われてるねぇ。だが、やめておいた方がいい。」

パチンッ!

男が指を鳴らすと、魔法陣が消えた・・・。……どうなっている?訳が分からない。

「しかしまあ、詰めが甘いとはいえあっしを見失わず付いてくるたあ大したもんでさあ。やっぱあんたを外しておいて正解・・・・・・・・だった」

外す……?何から?

「おっと、話すぎやしたね。じゃああっしはこの辺で失礼しやすぜ」

そういうと男は私の目の前から音もなく消えた。
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