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魔術大会
第33話 大会5日目:個人戦準決勝④
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「リアムール選手、ベルナール選手の攻撃で吹っ飛ばされた!これも何かの新技か!?」
〘操血〙は〘水惑刀〙と並び、私が魔術大会のために考えたもう1つの"奥の手"だ。
血液は、その約半分が水でできている。この文言だけでも察するかもしれないが、〘操血〙は血液を水魔法で操作し血液循環を速めたり、血液を介して体全体も操作して身体能力を飛躍的に上昇させるというものだ。
そもそも人間の体の60~70%は水でできているので、血液に限らず全体を操作してしまえば良いのではと思うかもしれないが、部位によって水の割合が違いすぎてさすがに操作しきれず、今の実力で練習しても習得するころには体のあらゆる箇所が破裂しているだろうと思ってやめておいた。
また、魔法抵抗が血液操作の邪魔をするのではという考えもあるが、実は原理はよく分からないが魔法抵抗は意図的に小さくすることができる。よって〘操血〙の効果をしっかりと受けることができる。その間防御が手薄になるのが弱点だが。
それとこの〘操血〙には時間制限がある。強力だが長時間の使用は体に負担が大きい上、操作にムラができる可能性があり危険なのだ。今の私では1度にせいぜい5分が限界である。次5分間フルで使うなら少なくとも3時間はクールタイムが欲しい。
ちなみに〘水惑刀〙の技である«鈍刃»は、«鋭刃»とは対照的に刃先の幅をあえて極端に太くし、攻撃する対象全体へ衝撃を与えられる技だ。
«鋭刃・飛水撃»
カッ!キィン!ザクッ!!
「……っ!!」
「リアムール選手に水刃が1つ直撃!」
ダッ!!
「ベルナール選手がリアムール選手目掛けて突進する!!先程とは別人のような動きだ!」
ガガッ!カッ!カキン!ガガガッ!!
「ベルナール選手とリアムール選手の剣戟が繰り広げられる!」
私は絶えず王子に攻撃を加え続ける。時間には限りがあるし、またさっきのアクアランスの集中砲火を食らわさせたら今度こそタダでは済まないので、隙を与えず一気に攻める。
ガッ!バキッ!!
「くっ……!」
王子の動きが明らかに鈍ってきた。飛水撃によるダメージと、長時間の打ち合いによる体力の消耗が原因だろう。私はどんどん王子にダメージを与えていく。
そして――――
「…勝負…あったようだな…」
バタッ………
「……勝者、A組カナ・ベルナール選手!!」
ウォォォーーー!!!!
私の勝利だ。
「………俺の負けだな…」
王子が倒れたまま呟くように言う。
「約束通り、生徒会役員への勧誘は取り消そう」
「……」
……途中から約束のことをすっかり忘れていた。
「信じられないとでも言いたそうだな。俺はちゃんと約束は守る。」
「あ、いえ……ありがとうございます、殿下」
「……それ、気に入らんな」
「それ、とは?」
「"殿下"と呼ぶな。俺には"ラクア"という名前がちゃんとある」
「ですが……」
"殿下"は王様以外の王族(王子とか王女とか)への敬称なので、基本こう呼ぶのがマナーである。厳密なことを言えば"ラクア様"というのも不敬にあたる。まあこの国、そして魔術学院はその辺適当な節はあるが……
「口ごたえするな」
「承知致しました、ラクアさ」
「"様"も付けるな。あと敬語もやめろ、これは命令だ」
………………
……まあ、試合で負かしてる時点で不敬も何も無いか。
「……わかったよ、ラクア。」
そう言って私は起き上がろうとしているラクアに手を差し出す。ラクアは素直にその手をとり起き上がる。
「生徒会役員にはならないけど、もし何かあれば手伝い位はしま……するよ。」
「ああ。」
「それでは、決勝は今から1時間後に行います!」
――――――――――
試合が終わり、私は保健室に来て先生に診てもらっていた。
「あらボロボロじゃない!……しかもこの後決勝もあるんでしょう?」
「はい、1時間後に。」
「1時間後!?そんなんじゃ治るものも治らないわよ!辞退した方がいいんじゃない??」
「いや、それはもっともなんですが、一応まだ動けますし、決勝の相手も必要以上に攻撃してくるような人じゃ無いので、出るだけ出てみます。」
「そう?それなら仕方ないわね……治癒魔法と薬で極力治してあげる。でも怪我が悪化しない程度にしか治せないし、体力は回復できないわよ、それでもいい?」
「はい、ありがとうございます。」
こうして先生の治療を受ける。すると…
ガラガラッ!!
「カナ!!」
「…?ってジーク、なんでここに?」
「もーまた無茶して!心配したんだからね!」
ジークが頬を膨らまして不満そうにする。
「ハハ、ごめんごめん」
「怪我治すの僕も手伝います!」
「あらほんと?助かるわ」
ジークが治癒の風を私に当てる。
「いいの?敵に塩を送ることになるけど。」
「敵とか味方以前にカナはカナでしょ!」
「……そっか、ありがとう」
……ジークにはいつも助けられてばかりだ。私も何かしてあげられればいいのだが。
〘操血〙は〘水惑刀〙と並び、私が魔術大会のために考えたもう1つの"奥の手"だ。
血液は、その約半分が水でできている。この文言だけでも察するかもしれないが、〘操血〙は血液を水魔法で操作し血液循環を速めたり、血液を介して体全体も操作して身体能力を飛躍的に上昇させるというものだ。
そもそも人間の体の60~70%は水でできているので、血液に限らず全体を操作してしまえば良いのではと思うかもしれないが、部位によって水の割合が違いすぎてさすがに操作しきれず、今の実力で練習しても習得するころには体のあらゆる箇所が破裂しているだろうと思ってやめておいた。
また、魔法抵抗が血液操作の邪魔をするのではという考えもあるが、実は原理はよく分からないが魔法抵抗は意図的に小さくすることができる。よって〘操血〙の効果をしっかりと受けることができる。その間防御が手薄になるのが弱点だが。
それとこの〘操血〙には時間制限がある。強力だが長時間の使用は体に負担が大きい上、操作にムラができる可能性があり危険なのだ。今の私では1度にせいぜい5分が限界である。次5分間フルで使うなら少なくとも3時間はクールタイムが欲しい。
ちなみに〘水惑刀〙の技である«鈍刃»は、«鋭刃»とは対照的に刃先の幅をあえて極端に太くし、攻撃する対象全体へ衝撃を与えられる技だ。
«鋭刃・飛水撃»
カッ!キィン!ザクッ!!
「……っ!!」
「リアムール選手に水刃が1つ直撃!」
ダッ!!
「ベルナール選手がリアムール選手目掛けて突進する!!先程とは別人のような動きだ!」
ガガッ!カッ!カキン!ガガガッ!!
「ベルナール選手とリアムール選手の剣戟が繰り広げられる!」
私は絶えず王子に攻撃を加え続ける。時間には限りがあるし、またさっきのアクアランスの集中砲火を食らわさせたら今度こそタダでは済まないので、隙を与えず一気に攻める。
ガッ!バキッ!!
「くっ……!」
王子の動きが明らかに鈍ってきた。飛水撃によるダメージと、長時間の打ち合いによる体力の消耗が原因だろう。私はどんどん王子にダメージを与えていく。
そして――――
「…勝負…あったようだな…」
バタッ………
「……勝者、A組カナ・ベルナール選手!!」
ウォォォーーー!!!!
私の勝利だ。
「………俺の負けだな…」
王子が倒れたまま呟くように言う。
「約束通り、生徒会役員への勧誘は取り消そう」
「……」
……途中から約束のことをすっかり忘れていた。
「信じられないとでも言いたそうだな。俺はちゃんと約束は守る。」
「あ、いえ……ありがとうございます、殿下」
「……それ、気に入らんな」
「それ、とは?」
「"殿下"と呼ぶな。俺には"ラクア"という名前がちゃんとある」
「ですが……」
"殿下"は王様以外の王族(王子とか王女とか)への敬称なので、基本こう呼ぶのがマナーである。厳密なことを言えば"ラクア様"というのも不敬にあたる。まあこの国、そして魔術学院はその辺適当な節はあるが……
「口ごたえするな」
「承知致しました、ラクアさ」
「"様"も付けるな。あと敬語もやめろ、これは命令だ」
………………
……まあ、試合で負かしてる時点で不敬も何も無いか。
「……わかったよ、ラクア。」
そう言って私は起き上がろうとしているラクアに手を差し出す。ラクアは素直にその手をとり起き上がる。
「生徒会役員にはならないけど、もし何かあれば手伝い位はしま……するよ。」
「ああ。」
「それでは、決勝は今から1時間後に行います!」
――――――――――
試合が終わり、私は保健室に来て先生に診てもらっていた。
「あらボロボロじゃない!……しかもこの後決勝もあるんでしょう?」
「はい、1時間後に。」
「1時間後!?そんなんじゃ治るものも治らないわよ!辞退した方がいいんじゃない??」
「いや、それはもっともなんですが、一応まだ動けますし、決勝の相手も必要以上に攻撃してくるような人じゃ無いので、出るだけ出てみます。」
「そう?それなら仕方ないわね……治癒魔法と薬で極力治してあげる。でも怪我が悪化しない程度にしか治せないし、体力は回復できないわよ、それでもいい?」
「はい、ありがとうございます。」
こうして先生の治療を受ける。すると…
ガラガラッ!!
「カナ!!」
「…?ってジーク、なんでここに?」
「もーまた無茶して!心配したんだからね!」
ジークが頬を膨らまして不満そうにする。
「ハハ、ごめんごめん」
「怪我治すの僕も手伝います!」
「あらほんと?助かるわ」
ジークが治癒の風を私に当てる。
「いいの?敵に塩を送ることになるけど。」
「敵とか味方以前にカナはカナでしょ!」
「……そっか、ありがとう」
……ジークにはいつも助けられてばかりだ。私も何かしてあげられればいいのだが。
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