32 / 118
魔術大会
第32話 大会5日目:個人戦準決勝③
しおりを挟む
「«デトニール»」
「……!」
「なんと!ベルナール選手も魔法掌握ができたのか!?"大洪水"が見事にベルナール選手を避けて流れていく!」
「貴様……!」
見よう見まねでやった割には上出来じゃないか?よくよく考えれば、固定するのが精一杯とはいえ分子レベルで操れるのだから、魔力さえ足りれば軽く軌道を変えるくらいは造作もないのだ。
「固体化・アクアジャベリン」
「ベルナール選手の頭上に水の槍が出現した!」
私のアクアジャベリンはアクアランスに比べ小さく威力も低いが小回りが効くし、1度放ったらそれで終わりではなく存在し続ける。つまり本物の槍を空中で自由に動かしているような状態になる。
「………」
王子が無言のまま両手でしっかりと剣を構える。固体化した槍は〘水惑刀〙と同レベルの魔力濃度だ、«デトニール»は使えない。そのため下手に策を練るより接近戦に備えようといったところだろう。
私は槍を王子に向けて放つ。王子は剣で迎え撃つ。
ガッ!カッ!キィン!!
槍が王子の剣に弾かれてはまた攻撃するを繰り返す。さながら剣士と透明な槍術士の戦いである。
これで多少はダメージを与えたかったのだが、槍単体では王子に歯が立たない。なので私自身も〘水惑刀〙を持ち王子へと斬り掛かる。
ガッ!カキンッ!カッ!!
槍を操作する分集中力が分散し多少私の動きが鈍いとはいえ実質2対1の状態であるにも関わらず、王子に上手く捌かれてしまう。この間確実に体力が削られていく。剣術に限って言っても、アランと同等かそれに準ずる強さかもしれない。
「アクアランス」
「リアムール選手、先程とは違い小さな大量の魔法陣から水の槍を放出!」
巨大魔法陣の1箇所から出したときと違い、あらゆる方向から水の槍が飛んでくる。
「固体化・アクアウォール、«デトニール»」
まっすぐ飛んでくる槍を水の壁で、隙間を縫って飛んでくる槍を魔法掌握である程度退ける。
ドン!ドガッ!!ゴォォ!!
「っ………!!」
が、私の魔法掌握における操作能力が低いことを見越してか、変則的に飛ばしてくるため退けきれず何発もヒットする。魔法抵抗と属性耐性を加味してもかなりのダメージだ。なんという魔法の操作能力と魔力濃度の高さなのか。
バキッッッ!!
「カハッ!!」
よろけた私にすかさず王子が剣で腹の脇から思いっきり斬りあげる。"固体化"した水でガードしたので致命傷は避けたが、吐血はするし息も絶え絶えだ。なんともデジャヴを感じる状況である。
しかしベークマンのときはジークとアランがいたから良かったが、今は私1人。自分でどうにかするしかない。
正直最初は第2王子のことを "権力があるだけの悪ガキ" くらいにしか思っていなかった。だが戦ってみてどうだ、判断能力の高さだけでなく、想定外の状況にも動じない冷静さ、決して自分の能力を過信しない慎重さをも持ち合わせている。それらは基本的なことに思えるが中々持つことができないものだ。それに魔法操作能力や剣術の技量の高さも、才能だけでは説明がつかない。並大抵な努力ではここまで辿り着けないだろう。
元は生徒会役員になることを避けたくて勝負しようと約束をした訳だが、正直もうそんなことはどうでも良くなり始めている。ただ純粋にこいつと全力で戦いたいのだ。なんだか"拳で語り合う" という言葉の意味が少しわかった気がする。
「まだ立つか。だがそろそろ終わりにするぞ。」
ダッ!
王子が私に斬り掛かる。
〘操血〙
〘水惑刀〙・«鈍刃»
バァァァン!!!
「クッ…!」
「……!」
「なんと!ベルナール選手も魔法掌握ができたのか!?"大洪水"が見事にベルナール選手を避けて流れていく!」
「貴様……!」
見よう見まねでやった割には上出来じゃないか?よくよく考えれば、固定するのが精一杯とはいえ分子レベルで操れるのだから、魔力さえ足りれば軽く軌道を変えるくらいは造作もないのだ。
「固体化・アクアジャベリン」
「ベルナール選手の頭上に水の槍が出現した!」
私のアクアジャベリンはアクアランスに比べ小さく威力も低いが小回りが効くし、1度放ったらそれで終わりではなく存在し続ける。つまり本物の槍を空中で自由に動かしているような状態になる。
「………」
王子が無言のまま両手でしっかりと剣を構える。固体化した槍は〘水惑刀〙と同レベルの魔力濃度だ、«デトニール»は使えない。そのため下手に策を練るより接近戦に備えようといったところだろう。
私は槍を王子に向けて放つ。王子は剣で迎え撃つ。
ガッ!カッ!キィン!!
槍が王子の剣に弾かれてはまた攻撃するを繰り返す。さながら剣士と透明な槍術士の戦いである。
これで多少はダメージを与えたかったのだが、槍単体では王子に歯が立たない。なので私自身も〘水惑刀〙を持ち王子へと斬り掛かる。
ガッ!カキンッ!カッ!!
槍を操作する分集中力が分散し多少私の動きが鈍いとはいえ実質2対1の状態であるにも関わらず、王子に上手く捌かれてしまう。この間確実に体力が削られていく。剣術に限って言っても、アランと同等かそれに準ずる強さかもしれない。
「アクアランス」
「リアムール選手、先程とは違い小さな大量の魔法陣から水の槍を放出!」
巨大魔法陣の1箇所から出したときと違い、あらゆる方向から水の槍が飛んでくる。
「固体化・アクアウォール、«デトニール»」
まっすぐ飛んでくる槍を水の壁で、隙間を縫って飛んでくる槍を魔法掌握である程度退ける。
ドン!ドガッ!!ゴォォ!!
「っ………!!」
が、私の魔法掌握における操作能力が低いことを見越してか、変則的に飛ばしてくるため退けきれず何発もヒットする。魔法抵抗と属性耐性を加味してもかなりのダメージだ。なんという魔法の操作能力と魔力濃度の高さなのか。
バキッッッ!!
「カハッ!!」
よろけた私にすかさず王子が剣で腹の脇から思いっきり斬りあげる。"固体化"した水でガードしたので致命傷は避けたが、吐血はするし息も絶え絶えだ。なんともデジャヴを感じる状況である。
しかしベークマンのときはジークとアランがいたから良かったが、今は私1人。自分でどうにかするしかない。
正直最初は第2王子のことを "権力があるだけの悪ガキ" くらいにしか思っていなかった。だが戦ってみてどうだ、判断能力の高さだけでなく、想定外の状況にも動じない冷静さ、決して自分の能力を過信しない慎重さをも持ち合わせている。それらは基本的なことに思えるが中々持つことができないものだ。それに魔法操作能力や剣術の技量の高さも、才能だけでは説明がつかない。並大抵な努力ではここまで辿り着けないだろう。
元は生徒会役員になることを避けたくて勝負しようと約束をした訳だが、正直もうそんなことはどうでも良くなり始めている。ただ純粋にこいつと全力で戦いたいのだ。なんだか"拳で語り合う" という言葉の意味が少しわかった気がする。
「まだ立つか。だがそろそろ終わりにするぞ。」
ダッ!
王子が私に斬り掛かる。
〘操血〙
〘水惑刀〙・«鈍刃»
バァァァン!!!
「クッ…!」
206
お気に入りに追加
692
あなたにおすすめの小説

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜
ネリムZ
ファンタジー
唐突にギルドマスターから宣言される言葉。
「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」
理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。
様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。
そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。
モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。
行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。
俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。
そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。
新たな目標、新たな仲間と環境。
信念を持って行動する、一人の男の物語。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。


ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる