乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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魔術大会

第30話 大会5日目:個人戦準々決勝/準決勝①

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「魔術大会5日目、1年生個人戦後半の開催です!!司会・実況は3日目に引き継ぎベッジ・キャストがお送り致します!」

予選から1日置いて、今日は準々決勝、準決勝、決勝が行われる。昨日は特に遊びに行くことも無く試合の準備以外はダラダラしていた。

今日は準々決勝の4試合が午前中、準決勝2試合と決勝が午後にある。

決勝まで行けば1日で3試合やることになるが、それは団体戦のときも同じだし、試合ごとの間隔はかなり空いているのでなんとかなるだろう。

「今日も頑張ろうね!!」
「そうだねジーク」

ジークは一昨日私が試合から帰ってきたあたりからいつにも増してテンションが高いのだが、なにかいいことでもあったんだろうか。いずれにせよ元気そうで何よりだ。

「じゃあ僕また最初だから行ってくるね!」
「うん、頑張って」

――――――――――――――

結論から言うと、第1試合は予想通りジークの勝利だった。例によってジークが風で相手選手を吹っ飛ばして場外にしたのだ。

団体戦も含めてここまでのジークの戦いぶりを見ていて思うが、ジークはほとんど相手を攻撃せず、場外に追いやっている。1度倒したときも背後から狙って怪我をさせないようにうまく気絶させていたし、決勝でベークマンと戦ったときですら、攻撃はアランに任せて本人は防御や補助に回っていた。

大会に対しても比較的意欲があるように見えたので、てっきり戦いに積極的なのかと思ったが、相手を怪我させることに強い抵抗があるのかもしれない。まあ一般に傾向が光の人よりも闇の人の方が好戦的とされているので、極光傾向のジークがそうなるのも頷ける。それでも十二分に戦えているのが彼の凄いところだが。

「続いては第3試合!B組ラクア・リアムール選手 vs B組エルマー・ランドルト選手です!」

いつの間に第2試合も終わり、次はまた王子の登場だ。相手は彼の従者であるランドルトだ。ランドルトも不意打ちされなければ相当強いはずだから、これは期待して良いだろう。ちなみに私は試合を次に控えているので、入場口の前で待機しながら1人で見ている。

「それでは始め!!」

ダッ!!

「おおっとリアムール選手、いきなり飛び出した!」

なっ…

確かに接近戦が苦手と思われるランドルト相手で、かつ剣が使えるなら、速攻をかけて間合いを詰めた方が優位に戦える。だが王子の性格上、自分から動いて攻撃を仕掛けるなんてしないと思っていた。

「アクアランス!!」

ゴォォォ!!!

ランドルトが迎撃するため水の槍を最大火力で繰り出す。だが王子は防御する様子も止まる様子もない。どうするつもりだ?

「«デトニール»」

ピタッ……

「な、なんと!ランドルト選手のアクアランスが止まってしまった!!リアムール選手が何かしたのか!?」
「くっ…これも全て止められるとは…」

キィィン!!

ランドルトが咄嗟に剣で王子の剣をガードする。アランの1件があったからか、接近戦への対応も考慮してきたらしい。

しかし魔法を止めたとはどういうことだ。そう思い私は魔力視で確認する。魔力視は魔力を感知する他に誰の魔力かも見分けられる。

するとどうだ、ランドルトのアクアランスが王子の魔力で覆われているでは無いか。

恐らくランドルトが出した水を、更に王子が攻撃を仕返すように操作することで止めたのだ。生半可な魔法適性では押し負けて終わるが、第2王子ラクア・リアムールは魔力210、属性水、傾向強闇である。この魔力に攻撃を得意とする闇傾向だからこそできる技だ。それなら私もできるのではと思うし、実際他人の魔法の掌握は考えたことがあるが、恐らく同じ属性相手にしか使えないので私は練習のしようがなかった。知り合いに水属性がいないのだ。

カキィィン!!ガッ!!

未だに剣戟は続いている。しかし王子の方を見てみると、剣を片手で持ち、もう一方の手はポケットに突っ込んでいるではないか。一方のランドルトは、怪我こそないが体力が減り満身創痍だ。完全に遊ばれている。

「そろそろ終わりにするぞ、エルマー」
「くっ……」

ガキィィィン!!

「リアムール選手の一撃により、ランドルト選手の剣が飛ばされてしまった!」

王子がランドルトに剣を突きつける。

「俺は自分の従者を痛めつける趣味はない。降参しろ、エルマー」
「………はい、ラクア様。降参です」

「ランドルト選手が降参した!よって勝者、B組ラクア・リアムール選手!!」

うーん。とりあえずわかったのは、予選のことにプラスして剣術でも一定以上の強さを誇っていることと、相手の魔法の掌握(王子は«デトニール»と呼称していた)が少なくとも水属性に対してはできるらしいということだ。まあ無いよりはマシであることは確かだが、正直収穫らしい収穫は無い。

ベークマンと比較して考えると、筋肉に物を言わせていた彼に比べて馬力は無いが、技術は色々持っていると言ったところか。そして俺様キャラにそぐわず冷静に状況を判断し、その場にあった行動をすることも出来る。猪突猛進なベークマンに比べて別の厄介さを持っている。

「続いては…」

おっと、私の番のようだ。とりあえずこれに勝ってから考えることにしよう。

――――――――――――

準々決勝が終わり、今はジーク達と一緒に昼食タイムである。私は先程の試合も勝利し、次は準決勝、いよいよ第2王子との試合だ。

「2人とも無事準決勝進出だな、おめでとう!」
「ありがとうアラン」
「やったね!」
「そういえば、この時点でA組の総合優勝は確定よね?」
「あれ?あ、ほんとだ!」
「そうそう。H組2人はそれぞれ予選と準々決勝で敗退だし、B組は王子がランドルト殿を倒しちゃったからね。対戦相手の当たり方によってはランドルトは充分準決勝に来られる実力だったからちょっと可哀想だけど、こればっかりはクジ運だから仕方ないよ」
「てことはここからは完全に個人的な勝負だね!」
「そうだね」

1年生の団体戦だけ一般公開されない理由は、1つは単純に最初の試合だからである。もう1つは、1年生はあまりチームでの連携というのができず、個々の強さがそのまま結果に反映され、結果が個人戦の結果と代わり映えしないからだ。言い方は悪いが団体戦を見せたあと個人戦を見せても新鮮味がないため、それならいっそ団体戦は見せず個人戦だけ見せた方が盛り上がるのだ。

「じゃあ、僕そろそろ行くね!カナも行く?」
「あ、そうだねそうするよ」
「頑張ってね!」
「ファイト!」

私とジークは2人に手を振りつつ入場口へと向かった。

――――――――――――

「E組ロン・ソルード選手場外!準決勝第1試合、勝者A組ジーク・ロバン選手!!」

ジークは問題なく準決勝勝利した。次は私の番だ。

「準決勝第2試合目!テクニカルな戦法で敵を惑わし確実に勝利を納めてきたA組カナ・ベルナール選手 vs!!巨大魔法陣に魔法掌握!正しく"王族"に相応しい戦いを見せたB組ラクア・リアムール選手です!!」
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