乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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魔術大会

第26話 大会2日目:side アラン

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俺は教室で朝のHRが始まるのを待っていた。

俺の出番は団体戦だけだったので、3日目と5日目はカナさんとジークの試合を見に行くにしても、それ以外は完全に暇だ。かといって試合前後の2人を連れ回して遊びに行く訳にも行かないし…と考えていると、マリーさんが声をかけてきた。

「おはよう、アランさん!」
「あ、おはようマリーさん」
「早速なのだけど、今日は屋台を見て回りたくて、良かったら一緒に行かない?」
「あ、もちろんいいよ!」

これってもしかして2人でデート……

「良かったわ!じゃあカナとジークさんも誘わなきゃ」

……なわけないよな。いや、わかってはいたさ……

「2人ともおはよう!」
「あ、ジークさんおはよう!」
「……おはようジーク」
「……?どうしたのアラン、何かあった?」
「ああいや、なんでもねえ」
「それならいいけど……ところで、カナ知らない?」
「カナはまだ来ていないわ。」
「おかしいなー普段ならとっくに来てる時間なのに…僕ちょっと確認してくる!」
「あ、おい!」

男のお前が女子寮は見に行けないだろ、と指摘する前にジークが教室を飛び出……そうとしたところで止まった。

「あ!おはようカナ、よく眠れた?」

カナさんがちょうど来たようだ。

「あ、カナおはよう!」
「おはようカナさん!」

俺とマリーさんも挨拶する。

「ねえ、今日は屋台の方を回らないかってアランさんと話していたのだけど、カナとジークさんはどうする?」

「あ、僕達も……カナ?」
「いや、私たちは明日以降も試合あるし、やめておくよ。6,7日目は暇だから遊べるだろうし。今日はアランとマリーの2人で行ってきたら?」
「なっ……!」

カナさんのまさかの発言に酷く動揺する。

「あ、そうよねごめんなさい……アランさんが良ければそうしたいわ!」
「あ、お、俺は……!もちろんいいけどよ……」

突然の出来事に焦って返事がしどろもどろになってしまう。

「なら決まりね!それじゃアランさん、行きたいところはある?」
「あーっと……強いて言うなら武器屋を少し見たいな……あとは特にないから、マリーさんの好きなところ回って大丈夫だ。」
「わかったわ、そしたらHRが終わったら早速行きましょう!」

この間ふとカナさんの方を見やると、優しいようないたずらっ子のような笑みで、マリーさんに見えないように親指を立ててきた。ちょっと複雑な心境だが、とりあえず感謝しておこう。

――――――――――――

「あ、アクセサリーのお店がある!見てもいいかしら?」
「もちろん」

HRも終わり、俺たちは屋台を回っている最中だ。屋台と言うからちょろっと売ってるだけかと思ったが、どこも想像以上の品ぞろえで、市場に遊びに来たと錯覚するほどだ。マリーさんは色んな店があるのが面白いようで、さっきからテンションが上がりっぱなしだ。俺と2人で回ってつまらなくないか心配だったが安心した。

「ねえねえアランさん?」
「あ、うん何?」
「このネックレス、どっちの色がいいと思う?」

そう言って見せられたのは、雫型の宝石がヘッダーになっているシンプルなネックレスだ。マリーさんが迷っているのはどっちも同じ形で色だけ違う。1つは水色の宝石にシルバーのチェーン、もう1つは深紅の宝石にゴールドのチェーンが使われてる。

正直アクセサリーの類はよく分からないが、どっちが良さそうか真剣に考える。

「……うーん、俺的には赤の方がいいかな……マリーさんにも似合いそう」
「赤ね!じゃあこれにするわ、ありがとう!」

そういうとマリーさんは店員に声をかけてその赤いネックレスを買った。ついでにつけて貰ったようで、マリーさんの胸元には赤い宝石が光っている。

「どうかしら?」
「よ、よく似合ってると思うぞ」
「ほんと?良かった!」

「いやーあんちゃんも隅におけねえな!」
「え?」

急に店員が声をかけてきた。隅におけねえって何の話だ?店員が俺の頭と目をやたらと見てきている気がする。……まて、そういえば俺の髪と目も赤色……

「っっっ!!」
「アランさん?どうしたの?」
「マ、マリーさん!あそこに武器屋あるから行っていいか!?」
「え?ええ……」

穴があったら入りたい。自分の髪や目と同じ色のネックレス選んで女の子に付けさせるとか、どこのロマンチストだ。いやナルシストか、変態か?無意識だったのが余計にタチが悪い。

とりあえずあの店員がいては居た堪れないので、マリーさんの背中を押しながらこの場を後にして、たまたま視界に入った武器屋の前に来た。

「あ、そうだ!アランさん武器屋行きたいって言ってたのについ夢中になって忘れてたわ、ごめんなさい!」
「ああいや、全然大丈夫だぞ!」

ただあの場を離れる口実で急いだだけなのに、武器屋になかなか行けなくてれたと思われたらしい。ほんと申し訳ない。

「よう、そこの兄ちゃん。ここの生徒か?歳の割に相当腕がたちそうじゃねえか。姉ちゃんの方も悪くないがな。」

今度は武器屋の店主が話しかけてきた。

「あら、どうして分かりますの?」
「腕利きの武器職人ってのは、使い手の良さもわかるってもんだ。」
「へーそういうもんなのか。」
「それでどうだ、うちの武器見てくか?」
「ああ、そうさせてもらうよ」
「なんか欲しいやつとかはあるか?」
「そうだな…俺、剣に火の魔力付与させて使ってるんだけどよ、普通の鉄の剣でやったらすぐ刀身が溶けちまって……友達に水属性の人がいて、その人の提案で先に水の魔力付与してカバーしてもらった上から付与したんだけど、それでも2試合で既に刃こぼれしてる。だから熱に強いやつとかねえかな」
「魔力を付与か!また面白いことするなあ。……そうだな、それならこれなんてどうだ?」

そういうと店主が取り出してきたのは青紫色で黒く光っている細身の剣だ。刀身の中央に綺麗な模様が彫られていて、鍔(つば)も植物のつるを密集させたような細かい彫刻がされている。

「これは?」
「これはミスリルとオリハルコンの合金で出来た剣だ。つってもオリハルコンは希少性高すぎてほんの少ししか入ってないがな。」
「なっ!ミスリルとオリハルコン!?」
「知ってるか?」
「ああ……父ちゃんが武器に詳しくてな……」
「なら話は早い。せっかくだから魔力付与試してみるか?」
「いいのか?もしかしたら溶けちまうかも……」
「やれるもんならやってみろ!そんななまくらならいらねえや」
「……わかった」

俺は剣に魔力をこめる。すると剣の表面が赤、オレンジ、黄、白と変わっていき、最終的に青白く光り始めた。

「綺麗だわ」

様子をずっと隣で見ていたマリーさんがつぶやく。

「見事だな。それでどうだ?剣の様子は。」
「全く溶ける様子がねえ。それに耐久性だけじゃなくて、付与状態を維持するのに全然負担もねえ。」
「だろ?ミスリルやオリハルコンは加えられた魔力を保持する効果がある。だから状態の維持のために追加しなきゃいけない魔力の消費を抑えられるって訳だ。」
「なるほどな……」
「どうだ?気に入ったなら買ってくか?」
「いやいや、無理だろこんな高そうなもん」
「なんだ?剣買いに来たならある程度は持ってんだろ?」
「いや親父が武器用にって金は持たせてくれてるけどよ、あくまで普通の剣が買えるくらいだぞ」

そう言って俺は店主に財布の中身を見せる。

「なんだよちゃんと持ってんじゃねえか。これだけありゃ譲ってやらあ」
「え、マジで言ってんのか?」
「マジもマジよ。元はと言えば、俺は学院の腕が立ちそうなやつに買ってもらって、うちの店の武器を宣伝してもらおうって算段だったんだ。だからお前さんに売れればこっちも万々歳って訳よ。」
「そういうことなら……あとから文句言うなよ!」
「言わねえって。まああれだ、気になるんなら友達に俺の店でも勧めといてくれや。改めて、俺はオリバー武器屋の店主オリバーだ。」
「俺はアラン・アゴーニだ!ちゃんと広めとくよ、オリバー。じゃあこれ金だ」
「ほい、剣な。」
「ありがとな。じゃあ、俺たちはこれで!」
「あ、ちょっと待て兄ちゃん。」
「ん?なんだ?」
「さっきの話に出てた水属性のダチとは仲良くしといて損は無いぜ。そいつはきっと将来大物になる。」
「……ああ、そうするよ!それじゃあ!」

こうして俺たちはその場を後にした。

「あの高熱から鉄の剣を水魔力の付与だけでねえ……一体どんな技術と魔力持ってんのやら……」 ボソッ…

――――――――――

少し歩いてから重大なことに気がつく。……剣を買ってるあいだマリーさんを放っておき過ぎたんじゃないか?

「ごめん、マリーさん!夢中になって待たせちまって!」
「いいのよ、お互い様だし!それに……」
「それに?」
「……なんでもない!さあ、そろそろ戻りましょうか!」
「え、うん…」

このときマリーが "団体戦のときも含めて、剣を扱ってるアランさんかっこいい" と思っていることなど知る由もないアランであった。

――――――――――――

で、帰りのHRを受けに教室に帰ってきたはいいものの…カナさんの生暖かい目線が刺さる。

「あ、マリー、ネックレスつけてる。」
「ええ、屋台で買ったの!綺麗でしょ?」
「うんそうだね、綺麗な "赤" だ。」

そして不安そうに2人の会話を聞いている俺に気づいたカナさんが…

「……フッ」

まあ気づきますよね。はあ………

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