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新しい世界
第13話 第2王子ラクア
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言われた通り第2王子について行くと、やがて豪勢な休憩室に到着した。
「ここに座れ。」
「失礼します。」
「…………」
「……それで、ご用件は?」
「お前、生徒会役員になれ。」
何となく予想はしていた。
魔術学院の生徒会役員は、王族はほぼ必須で、残りは基本高位の貴族と、身分によらず特別優秀な生徒で構成される。新役員は基本現役員による会議で決めるが、暗黙の了解で王族はその人の一存で決められることになっている。そして第2王子も例に漏れず入学早々生徒会役員になった。(ちなみに生徒会役員に入れば部活に入る必要は無い)
しかし勧誘自体は予想していたが、第2王子直々に来るのは想定外だ。
「……申し訳ありませんが、私では力不足でないかと……」
正直なところ、役員になること自体はやぶさかではない。高校のときは部活で部長をやっていたし、その手の仕事は嫌いじゃない。しかし、それでこん詰めすぎた側面もあるし、今世では自分の道は自分で決めることにしたので、指示されるがまま生徒会役員になるのはあまり気乗りしない。それに生徒会は貴族社会の風潮が特に強く、平民の私としてはそんな排他的な職場で働くのはごめんだ。
「お前は何を言っているんだ?俺は提案しているんじゃない。命令しているんだ。」
ここにきて俺様キャラと権力のダブルパンチがきてしまった。さてどうするか。
「生徒会役員なら、先程私と一緒にいたジーク・ロバンの方が適任ではないでしょうか?彼は入試一般の首席ですし、何より伯爵家で騎士団長の息子です。」
「…チッ」
……なぜだか分からないが地雷を踏んでしまったらしい。だがこうなったらやけだ、どんどんいこう。
「……あいつはダメだ。」
「なぜ?」
「俺はまだ入試の結果に納得してねえ……あいつが俺より上なんて有り得ねえ!それになんだ、なんであいつが推薦合格者のお前とつるんでるんだ?本来ならすぐ俺の元に来て『仲良くしてください』って跪くべきだろう!」
なんだかもう心の声がダダ漏れすぎて王族としてもどうなんだろうかと思うが、それと同時に私を生徒会役員に入れたがる理由が少し見えてきた。
要するにラクア・リアムールはジークに嫉妬しているのだ。
元々相当優秀な上、第1王子のように次期国王としての重圧もあまり受けずおだてられ甘やかされた第2王子にとって、自分を押さえ首席になった上、推薦合格者と仲良くするというある種の「ステータス」を獲得したジークが不愉快なのだろう。
だからせめて私をジークから引き離して自分の元に置き、「ステータス」を獲得しようとしているのである。
こう書くとなんだか恋愛の三角関係で私が取り合われてるみたいだが、実際はコレクターが有名な絵画を巡ってオークションで競り合ってるようなものだ。もっともジークに争ってるという感覚は無いだろうが。
「しかしそれでもやはり……」
「ええい面倒だ!……それなら今度の魔術大会の個人戦、そこで俺がジーク・ロバンに勝ったら生徒会に入れ。」
魔術大会というのは、クラスの代表者が団体もしくは個人で戦う、剣あり魔法ありの武闘会のようなものである。その開催が早くもあと1ヶ月半に迫っていた。最初より譲歩してくれたのはありがたいが、ジーク本人がいないのにその約束はでき兼ねる。
「ジークではなく、私に勝ったらにいたしませんか?」
「何?」
「私と殿下の話なのですから、我々で勝負するのが筋ではないでしょうか?それに下手に他の人を巻き込むより、そっちの方が手っ取り早くていいでしょう。」
「……ふん、面白い。いいぞ。そうしようじゃないか。せいぜい頑張るんだな、カナ・ベルナール。」
「はい。それでは失礼致します。」
色々勢いで言ってしまったが、まあどうにかなるだろう。たぶん。
――――――――――
「あ、カナ!大丈夫だった?何の話されたの?」
「生徒会役員に勧誘された。断ったら魔術大会で勝負することになったけど」
「そうなの!?すごいことになったわ!」
「しかし、なんで断っちまったんだ?」
「それは……うーん、なんとなく?」
「適当かよ!」
「ハハッ、そうだね、我ながら何してるんだか。」
「でも、そういう割には楽しそうに見えるよ?」
「……!うん、確かにそうかも。理由は自分でもよくわかんないけど。」
そう、前世ではとことん保守派な私だったが、今は意外にもこの状況を楽しんでいる。
「さて、部活見学行かなきゃ。みんなどこまでまわった?」
「ちょうどダンス部と調理部が見終わったところだよ!」
「よし、じゃあ行こうか」
―――――――――――――
結局色々まわって、何となく行きたい場所に目星はついた。ただ王子に負けたら生徒会役員をやらなくてはならないので、何となくその旨をその部活に伝え、とりあえず保留してもらうことにした。その部活についての詳細は後日話すとしよう。
「ここに座れ。」
「失礼します。」
「…………」
「……それで、ご用件は?」
「お前、生徒会役員になれ。」
何となく予想はしていた。
魔術学院の生徒会役員は、王族はほぼ必須で、残りは基本高位の貴族と、身分によらず特別優秀な生徒で構成される。新役員は基本現役員による会議で決めるが、暗黙の了解で王族はその人の一存で決められることになっている。そして第2王子も例に漏れず入学早々生徒会役員になった。(ちなみに生徒会役員に入れば部活に入る必要は無い)
しかし勧誘自体は予想していたが、第2王子直々に来るのは想定外だ。
「……申し訳ありませんが、私では力不足でないかと……」
正直なところ、役員になること自体はやぶさかではない。高校のときは部活で部長をやっていたし、その手の仕事は嫌いじゃない。しかし、それでこん詰めすぎた側面もあるし、今世では自分の道は自分で決めることにしたので、指示されるがまま生徒会役員になるのはあまり気乗りしない。それに生徒会は貴族社会の風潮が特に強く、平民の私としてはそんな排他的な職場で働くのはごめんだ。
「お前は何を言っているんだ?俺は提案しているんじゃない。命令しているんだ。」
ここにきて俺様キャラと権力のダブルパンチがきてしまった。さてどうするか。
「生徒会役員なら、先程私と一緒にいたジーク・ロバンの方が適任ではないでしょうか?彼は入試一般の首席ですし、何より伯爵家で騎士団長の息子です。」
「…チッ」
……なぜだか分からないが地雷を踏んでしまったらしい。だがこうなったらやけだ、どんどんいこう。
「……あいつはダメだ。」
「なぜ?」
「俺はまだ入試の結果に納得してねえ……あいつが俺より上なんて有り得ねえ!それになんだ、なんであいつが推薦合格者のお前とつるんでるんだ?本来ならすぐ俺の元に来て『仲良くしてください』って跪くべきだろう!」
なんだかもう心の声がダダ漏れすぎて王族としてもどうなんだろうかと思うが、それと同時に私を生徒会役員に入れたがる理由が少し見えてきた。
要するにラクア・リアムールはジークに嫉妬しているのだ。
元々相当優秀な上、第1王子のように次期国王としての重圧もあまり受けずおだてられ甘やかされた第2王子にとって、自分を押さえ首席になった上、推薦合格者と仲良くするというある種の「ステータス」を獲得したジークが不愉快なのだろう。
だからせめて私をジークから引き離して自分の元に置き、「ステータス」を獲得しようとしているのである。
こう書くとなんだか恋愛の三角関係で私が取り合われてるみたいだが、実際はコレクターが有名な絵画を巡ってオークションで競り合ってるようなものだ。もっともジークに争ってるという感覚は無いだろうが。
「しかしそれでもやはり……」
「ええい面倒だ!……それなら今度の魔術大会の個人戦、そこで俺がジーク・ロバンに勝ったら生徒会に入れ。」
魔術大会というのは、クラスの代表者が団体もしくは個人で戦う、剣あり魔法ありの武闘会のようなものである。その開催が早くもあと1ヶ月半に迫っていた。最初より譲歩してくれたのはありがたいが、ジーク本人がいないのにその約束はでき兼ねる。
「ジークではなく、私に勝ったらにいたしませんか?」
「何?」
「私と殿下の話なのですから、我々で勝負するのが筋ではないでしょうか?それに下手に他の人を巻き込むより、そっちの方が手っ取り早くていいでしょう。」
「……ふん、面白い。いいぞ。そうしようじゃないか。せいぜい頑張るんだな、カナ・ベルナール。」
「はい。それでは失礼致します。」
色々勢いで言ってしまったが、まあどうにかなるだろう。たぶん。
――――――――――
「あ、カナ!大丈夫だった?何の話されたの?」
「生徒会役員に勧誘された。断ったら魔術大会で勝負することになったけど」
「そうなの!?すごいことになったわ!」
「しかし、なんで断っちまったんだ?」
「それは……うーん、なんとなく?」
「適当かよ!」
「ハハッ、そうだね、我ながら何してるんだか。」
「でも、そういう割には楽しそうに見えるよ?」
「……!うん、確かにそうかも。理由は自分でもよくわかんないけど。」
そう、前世ではとことん保守派な私だったが、今は意外にもこの状況を楽しんでいる。
「さて、部活見学行かなきゃ。みんなどこまでまわった?」
「ちょうどダンス部と調理部が見終わったところだよ!」
「よし、じゃあ行こうか」
―――――――――――――
結局色々まわって、何となく行きたい場所に目星はついた。ただ王子に負けたら生徒会役員をやらなくてはならないので、何となくその旨をその部活に伝え、とりあえず保留してもらうことにした。その部活についての詳細は後日話すとしよう。
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