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新しい世界
第11話 番外編:メルシエ伝説
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魔術学院は全寮制を取っている。平日は学院内にいることが義務づけられているが、土日は実家に帰ることが許されている。帰る人と帰らない人両方いるが、私は特に用事がなければ帰るようにしている。そして今日は丁度帰宅の日である。
「ただいま」
「おかえりカナ!元気にしてた?」
「うん、元気だよ。ママは?」
「ママはいつも通り絶好調よ~!」
ママはいつでも変わらずこのほんわかした雰囲気のままだ。ただ前から気になることができた。魔法実習の先生が言っていた「メルシエ伝説」ついてだ。
話は少し前に遡る。
―――――――――――――――
「あ、おいベルナール!今暇か?」
「はい、大丈夫です。」
「なら、この荷物運びたいんだが手伝い頼めるか?」
「わかりました」
「それなら私もやります!」
「いや、スオーロは大丈夫だ。じゃあベルナール、ついてきてくれ。」
突然魔法実習の先生、カルロス・ロペス先生に突如手伝いを頼まれた。あの場には暇そうで私よりガタイのいい生徒もいたのに指名してきたので、恐らく私になにか話があるのだろう。そして他の生徒にはあまりに聞かれたくないのだろうが、少々マリーへの断り方が雑すぎやしないか。
「いやー悪いな。実は手伝いついでに話したいことがあるんだが。いや大したことではないんだがな?」
やはり。
「はいなんでしょう?」
「お前の母さんのことだ。」
前は「母上」とか言ってた気がするが、ママと知り合いなのとこっちの方が素に近いのだろう。
「いいか、メルシエに魔法を教わるのはいいことだ。どんどん教われ。ただな、あいつの言う『常識』を世間の『常識』だと思わない方がいい。」
「それは……まあ普段の雰囲気とこの前の件で何となく察しはしましたが……母はどのような人だったのでしょう?」
「あいつは良くも悪くも異端だった。教わったことは途端に吸収して、自分のもんにしちまう。特に魔力操作の技術はピカイチで、高くない魔力量に見合わない実力を持っていた。あまりにすごいんであいつの武勇伝を『メルシエ伝説』つって皆で語ってたくらいだ。」
「……二重人格か何かで?」
「ハハッ!あの普段の感じから想像出来ないのは仕方ねえ。ただあいつはどこまでもあいつだよ、あのままでこんな感じだったんだ。まあ要はあれだ、メルシエから吸収できるもんはどんどん吸収していくんだな。それがお前にとっての糧となる。」
「はい、頑張ります。」
「おう!じゃあ荷物運びご苦労さん、帰って大丈夫だ!」
「失礼します」
なんというか、興味深いようなショッキングなような話を聞かされてしまった。だがここ3ヶ月と少しのママしか知らなかった私にとって大変有意義な情報だった。
――――――――――――――――
という訳だ。
何となく話を振ってみる。
「ねえママ、カルロス・ロペス先生知ってる?」
「?あら!懐かしいわね~私の部活の先輩だったのよ~!先生……てことはもしかして魔術学院の先生やってるの??」
「うんそう。魔法実習の授業の担当の先生だよ」
「あらそうなのね!いい人でしょー?」
「うん、気さくな先生だよ。『メルシエ伝説』の話とかしてくれた。」
「あら恥ずかしいわ~そういえばそんなのがあったわね~」
「すごかったんだね、ママ」
「そんなことないわよ~私ができるようになったのは先輩たちのおかげだし」
「そっか……」
どうやらあれらの話は本当らしい。
「……ねえママ?」
「うん?なあに?」
「……ママはなんでパパと結婚して以降、魔法を使った職業に就かなかったの?いや、今も土人形は使ってるけど、なんというか、もっとその才能が生かせる場所もあったんじゃない?」
「そうね~なんでかな?やっぱりパパと一緒に居ることが1番幸せだったからかな?元々はやりたいこともあった気がするけど、パパと一緒にいられるならどうでも良くなっちゃった。それに商店の仕事もやりがいあって好きだしね!」
「そっか……教えてくれてありがと」
幸せ……か。
「なあに?もしかして悩みごと??」
ママがにこにこしながら私のほっぺたをつんつんしてくる。
「ああいや、そういう訳じゃないんだけど……何となく?」
「ほんと~?何かあるならちゃんと言うのよ?だって私たち家族なんだから!」
「……うん、そうするよ」
友達だから、家族だから。残念ながら、今の私にはこれらの言葉をすんなり受け入れるのは難しそうだ。ただ、前とは違い受け入れたいと思えるようになっただけ、少しは前進しているだろうか。
「ただいま」
「おかえりカナ!元気にしてた?」
「うん、元気だよ。ママは?」
「ママはいつも通り絶好調よ~!」
ママはいつでも変わらずこのほんわかした雰囲気のままだ。ただ前から気になることができた。魔法実習の先生が言っていた「メルシエ伝説」ついてだ。
話は少し前に遡る。
―――――――――――――――
「あ、おいベルナール!今暇か?」
「はい、大丈夫です。」
「なら、この荷物運びたいんだが手伝い頼めるか?」
「わかりました」
「それなら私もやります!」
「いや、スオーロは大丈夫だ。じゃあベルナール、ついてきてくれ。」
突然魔法実習の先生、カルロス・ロペス先生に突如手伝いを頼まれた。あの場には暇そうで私よりガタイのいい生徒もいたのに指名してきたので、恐らく私になにか話があるのだろう。そして他の生徒にはあまりに聞かれたくないのだろうが、少々マリーへの断り方が雑すぎやしないか。
「いやー悪いな。実は手伝いついでに話したいことがあるんだが。いや大したことではないんだがな?」
やはり。
「はいなんでしょう?」
「お前の母さんのことだ。」
前は「母上」とか言ってた気がするが、ママと知り合いなのとこっちの方が素に近いのだろう。
「いいか、メルシエに魔法を教わるのはいいことだ。どんどん教われ。ただな、あいつの言う『常識』を世間の『常識』だと思わない方がいい。」
「それは……まあ普段の雰囲気とこの前の件で何となく察しはしましたが……母はどのような人だったのでしょう?」
「あいつは良くも悪くも異端だった。教わったことは途端に吸収して、自分のもんにしちまう。特に魔力操作の技術はピカイチで、高くない魔力量に見合わない実力を持っていた。あまりにすごいんであいつの武勇伝を『メルシエ伝説』つって皆で語ってたくらいだ。」
「……二重人格か何かで?」
「ハハッ!あの普段の感じから想像出来ないのは仕方ねえ。ただあいつはどこまでもあいつだよ、あのままでこんな感じだったんだ。まあ要はあれだ、メルシエから吸収できるもんはどんどん吸収していくんだな。それがお前にとっての糧となる。」
「はい、頑張ります。」
「おう!じゃあ荷物運びご苦労さん、帰って大丈夫だ!」
「失礼します」
なんというか、興味深いようなショッキングなような話を聞かされてしまった。だがここ3ヶ月と少しのママしか知らなかった私にとって大変有意義な情報だった。
――――――――――――――――
という訳だ。
何となく話を振ってみる。
「ねえママ、カルロス・ロペス先生知ってる?」
「?あら!懐かしいわね~私の部活の先輩だったのよ~!先生……てことはもしかして魔術学院の先生やってるの??」
「うんそう。魔法実習の授業の担当の先生だよ」
「あらそうなのね!いい人でしょー?」
「うん、気さくな先生だよ。『メルシエ伝説』の話とかしてくれた。」
「あら恥ずかしいわ~そういえばそんなのがあったわね~」
「すごかったんだね、ママ」
「そんなことないわよ~私ができるようになったのは先輩たちのおかげだし」
「そっか……」
どうやらあれらの話は本当らしい。
「……ねえママ?」
「うん?なあに?」
「……ママはなんでパパと結婚して以降、魔法を使った職業に就かなかったの?いや、今も土人形は使ってるけど、なんというか、もっとその才能が生かせる場所もあったんじゃない?」
「そうね~なんでかな?やっぱりパパと一緒に居ることが1番幸せだったからかな?元々はやりたいこともあった気がするけど、パパと一緒にいられるならどうでも良くなっちゃった。それに商店の仕事もやりがいあって好きだしね!」
「そっか……教えてくれてありがと」
幸せ……か。
「なあに?もしかして悩みごと??」
ママがにこにこしながら私のほっぺたをつんつんしてくる。
「ああいや、そういう訳じゃないんだけど……何となく?」
「ほんと~?何かあるならちゃんと言うのよ?だって私たち家族なんだから!」
「……うん、そうするよ」
友達だから、家族だから。残念ながら、今の私にはこれらの言葉をすんなり受け入れるのは難しそうだ。ただ、前とは違い受け入れたいと思えるようになっただけ、少しは前進しているだろうか。
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