乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

文字の大きさ
上 下
10 / 115
新しい世界

第10話 魔術学院の授業④

しおりを挟む
さて本日最初の授業は剣術実習である。この授業では他の演習とは違い魔法は使用禁止だ。内容は基本的に丸太に向かって練習→授業の最後に対人で3本勝負の実践という流れである。対人と言っても当たるとふにゃふにゃ曲がる固めのスポンジのような素材の剣で行うので危険性はない。

正直私はこの授業があまり得意ではない。一応クラスの平均くらいはなんとかキープしているが、毎回「筋は良いが動きが遅い」と言われる。これは純粋に運動不足のせいだろう。前世からの運動に対して怠惰な姿勢がそのまま残ってしまっている。運動せねば。

一方他の生徒はと言うと

「えい!」

「1本!勝者ジーク・ロバン!」

「わーい!」

まずジークは相変わらず優秀だ。今のところ3本勝負で1本だけ取られることはあっても負けているところをほとんど見たことがない。

次にマリー。

「はっ!」

「うが!」

「勝者、マリー・スオーロ!」

「また勝ったわ!」

見かけによらず彼女もなかなかの実力者である。小柄な体を活かして素早く確実に攻撃を入れていく。聞くところによるとお家柄英才教育を徹底されているらしく、剣術は小さい頃から習っていたようだ。


そして最後、


「3本目、初め!」

バシッ!!
「うわ!」

「勝者、アラン・アゴーニ!」


「あいつすげーな」
「スオーロさん以外に1本でも取られてるとこ見たことないぞ」
「マジでどうなってるんだ…」

これが意外なことに、アランはこのクラス1、いや学年トップクラスの実力を有していた。彼は魔力量100、属性火、傾向弱闇だ。魔力量はこの学院の生徒にしては低くく、遠距離攻撃は苦手だ。丸太攻撃では表面が少し焦げた程度だった。だがそれとは対象的に剣術勝負では対戦相手を瞬殺していく。私も1度戦ったが手も足も出なかったし、ジークですら善戦はしたものの1本も取れずに終わった。一方マリー相手になると恥ずかしいのかなんなのか急に動きが鈍って1本だけ取られていたが、それでも勝ってはいるのだから凄い。



「皆すごいね、私は全然出来ないから尊敬するよ」

「そ、そうかな?」

「照れるわ~」

「(照れてるマリーさん可愛い…)」

「僕で良ければ教えるよ!」

「あ、ずるい私も!」

「お、俺も!」

「ありがとうみんな、お願いしようかな」



ちょうど教わりたいと思っていたので嬉しい申し出だ。



「しっかしアランはほんとに強いよね!全然歯が立たなかったよ!」

「いや、そんなことねえって、俺も結構ギリギリだったし…はあ…」

「ん、何か気にかかることでも?」

「いや、なんて言うか…今は魔法無しだからまだ良かったけどよ、魔法ありになったら全然勝てねえんだろうなーと思って。なんならカナさんと戦ったらあの丸太みたいに一瞬で粉々だろ?」

「いや、人間の場合魔法抵抗があるからまんまあんなことにはならないと思うよ、見た感じアランの魔法抵抗値は特に高そうだしね」



魔法抵抗とは、読んで字のごとく魔法に対して抵抗(防御)することである。電子回路につける抵抗と似たようなもので、魔法抵抗値が高いほど相手の魔法の影響を受けづらくなる。魔法抵抗値は先天的なものの他に、体を鍛えたり魔力により上げることができる。



「それにアランは遠距離攻撃は苦手だけど手元での魔法操作は得意でしょ?パイをあんなに綺麗に焼いてたし。弱闇傾向なら光寄りのこともそれなりにできるはずだし、例えば身体強化しつつ刀身に炎纏わせて近接特化型にしたりすればかなり渡りあえるんじゃないかな、もちろん立ち回りの難しさはあると思うけど。何も苦手分野で人の真似事をする必要は無いよ。」

「!!なるほど、皆みたいにできねえからって焦ってたけどそういう見方もあんのか…ありがてえ、やってみる!」

どうやら剣で無敵な彼にも彼なりの苦労があるようだ。

…今思ったが、私の魔力の高さと属性は先天的なものだし、ある意味1番 "実力" がないのは私なのではないか?

……これから努力していくとしよう、まずは体力作りと筋トレだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜

ネリムZ
ファンタジー
 唐突にギルドマスターから宣言される言葉。 「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」  理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。  様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。  そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。  モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。  行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。  俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。  そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。  新たな目標、新たな仲間と環境。  信念を持って行動する、一人の男の物語。

僕と精霊 〜魔法と科学と宝石の輝き〜

一般人
ファンタジー
 人類が魔法と科学の力を発見して数万年。それぞれの力を持つ者同士の思想の衝突で起きた長き時に渡る戦争、『発展戦争』。そんな戦争の休戦から早100年。魔法軍の国に住む高校生ジャン・バーンは精霊カーバンクルのパンプと出会いと共に両国の歪みに巻き込まれていく。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

処理中です...