乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

文字の大きさ
上 下
3 / 115
新しい世界

第3話 手にした力

しおりを挟む
ママの説明を思い出しながら、無事目的地の教会へたどり着いた。というか、大勢の同世代の男女の波があったので、それに着いて行ったら着いた。そのまま列に並ぶと、どんどん流れ作業で列が進んで行く。どうやら神の啓示は、年に一度みんなまとめてやるようだった。ちなみに今はリアムール歴1198年6月らしい(リアムール歴は、リアムール王国の建国日から数えていることを除き、概ね太陽暦と同じようだ)。

そうこうしているうちに、列は教会の中へと入っていった。

「○○○・○○、魔力75、属性土、傾向弱光!」

「△△・△△△△、魔力60、属性火、傾向強闇!」

「ジーク・ロバン、魔力220、属性風、傾向極光!」

他の少年・少女への啓示が聞こえてくる。これを聞いて魔力量が数字で示されることと、傾向には極・強・弱という程度の違いがあることも思い出した。ヒロインは魔力750、極光だったはずだ。ちなみに魔力量の平均はおよそ80、歴代最高値は750でヒロインは1位タイである。

「カナ・ベルナール、ここへ。」

私の番だ。優しいが威厳のある男性の声が私を呼ぶ。恐らく司教だろう。私は言われた通りに前へでる。司教が言葉を続ける。

「緊張するかい?」

「いいえ、大丈夫です」

これは嘘ではない。なぜなら私は知っているからだ。彼の口からでる単語は「水」と「極光」である。だが理由のない不安感にも襲われる。

「では神の啓示を伝える。」

「カナ・ベルナール、魔力270、属性水、傾向極闇!」

教会中が一瞬静まり、そしてどよめきが起こる。平均の3倍以上の魔力量、しかも珍しい水属性だ、当然と言える。だが私が驚いたのはそこではない。

魔力が「ヒロイン」の約3分の1、そして何より傾向が極闇だ。何故だ?

考えられることは1つ。「私」が介入したからだ。恐らく「私」の魔法適性が「ヒロイン」より無いことと、「私」が「ヒロイン」の極光を打ち消してあまりある程の闇の傾向を持っていたのだろう。魔力の方は知らないが、傾向の方は何となく心当たりがある。

「これは『神』ではなくあくまで私の言葉だが」

司教が続ける。

「おめでとう、カナ・ベルナールよ。魔力量、属性共にとても稀有なものです。その才大事にするといいでしょう。……その才にも、心にも潰されぬようお気をつけなさい。神の御加護がありますように。」

見透かされている。そのように感じた。私は恐怖とも感動ともつかない感情を感じながら、司教に答える。

「ありがたいお言葉をありがとうございます。これから精進していく所存です。」

「ハハ、そう固くする必要はありません。さあ、帰ってママにこの話をして差しあげなさい。」

そこは「ご両親」じゃないのか。片親だと言った覚えはないが…まあきっと名簿にでも書いてあったのだろう。「ママ」とは書いてないと思うが。

………私は言われた通りお礼を言ってその場を立ち去る。教会の門を出た。そして私は思う。早速運命が変わってきている。だがそれは私の本望だ。「ねえ君!」 ヒロインの劣化版と化している気がしないでもないが、まあ究極的には死ななければ割と何でもいい。「ねえ!!」前よりはマシなはずだ。



「ねえってば!!!」



そこで私はハッとし声の方を向く。

「あ!やっとこっち向いた!さっきからずっと声掛けてたんだよ??」

「あ、ごめんなさい、えっと…」

「自己紹介がまだだったね!僕はジーク・ロバン、君の1つ前に啓示を受けてた人だよ!」

「ロバン君か、よろしく。私は…」

「カナ・ベルナールさんだよね?僕のことはジークでいいよ、僕も君のことカナって呼ぶね!」

「えっと…うん、よろしくジーク」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―  “賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。  だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。  当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。  ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?  そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?  彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?  力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜

ネリムZ
ファンタジー
 唐突にギルドマスターから宣言される言葉。 「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」  理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。  様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。  そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。  モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。  行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。  俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。  そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。  新たな目標、新たな仲間と環境。  信念を持って行動する、一人の男の物語。

僕と精霊 〜魔法と科学と宝石の輝き〜

一般人
ファンタジー
 人類が魔法と科学の力を発見して数万年。それぞれの力を持つ者同士の思想の衝突で起きた長き時に渡る戦争、『発展戦争』。そんな戦争の休戦から早100年。魔法軍の国に住む高校生ジャン・バーンは精霊カーバンクルのパンプと出会いと共に両国の歪みに巻き込まれていく。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...