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新しい世界
第1話 乙女ゲームの世界へ①
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「カナ!カナ!!」
ふと重い瞼を開くと、見慣れた深緑の瞳から大粒の涙が零れてくる。
「……ジークか。怪我はない?」
私は確認するように彼の頭を撫でる。
「……なんでっ!なんで僕の心配なんかするんだよ!!このままじゃ…このままじゃカナが!!」
「いや…私はいいんだよ。それより……ジー…が無事…良かった…」
手から力が抜ける。いよいよ潮時らしい。このゲームに転生した当初の予定とは違うが悔いはない。今度こそ救えたのだから。前回からは随分進歩したじゃないか。
「…カナ……?カナ?ねえってば!!カナっカナ!!!」
私の意識はここで途絶えた。
――――――――――――
ふと目を開けると、そこはベッドの上だった。
普通寝るときはベッドで寝るものだ。それはなんらおかしくない。
問題は、天井に見覚えがないということである。白いレンガに木の柱が通してある。これは明らかに私が昨日まで大学生として生きていた日本のそれではない。
――ではここはどこだ?
周りを見渡す。同じくレンガと木でできた内装、木製のドアと家具たちが目に入る。夢にしては鮮明すぎるし、あの世にしては質素すぎる。あの世を見たことはないが。とすると可能性としては……
コンッコンッ!
「カナ?起きてる??」
突如ドアを叩く音と、私の名前を呼ぶ声が聞こえる。だれだ?なぜ私の名前を知っている?なぜ慣れた雰囲気なのか?と考えるうちに声の主が部屋に入ってきた。
「あら、カナったら起きてたのね!朝ごはんできたから食べましょう! 」
声の主は茶髪に紫の瞳をして、エプロンを身につけた女性だった。既視感はあるがまず間違いなく初対面だ。しかしこの問いかけは、まるで私の母親であるかのようではないか。だが私の記憶の中の母親とは似ても似つかない。
「ねえねえ?ずっと黙ってるけど具合悪いの?大丈夫??」
そう言われてハッとする。なにか返事をせねば。
「……いや、なんでもないよ。えっと、お母さん?」
「なんで疑問符なのよ!それにいつもお母さんじゃなくてママって呼んでるでしょ?もうカナったらねぼすけさんね~ ささっ!ご飯にしましょ!」
「ハハハ…ごめんって。うんそうだねママ、着替えてすぐ降りるよ」
私がそういうと、彼女は満面の笑みで私に笑いかけたあと、先に下に降りていった。私はタンスから適当に漁り出した服に着替えながら考えを巡らせる。
どうやらあの女性が私の母親らしい。やや賭けだったが当たっていたようだ。そして先程思いついた可能性が、より現実味を帯びてきた。
――それはここは21世紀日本とは違った異世界であり、私は最近流行りの異世界転生をしたということ。
さらに言えば、私はこの女性を見たことがあることを思い出した。
……3次元の人間ではなく、2次元のキャラクターとしてだが。
ふと重い瞼を開くと、見慣れた深緑の瞳から大粒の涙が零れてくる。
「……ジークか。怪我はない?」
私は確認するように彼の頭を撫でる。
「……なんでっ!なんで僕の心配なんかするんだよ!!このままじゃ…このままじゃカナが!!」
「いや…私はいいんだよ。それより……ジー…が無事…良かった…」
手から力が抜ける。いよいよ潮時らしい。このゲームに転生した当初の予定とは違うが悔いはない。今度こそ救えたのだから。前回からは随分進歩したじゃないか。
「…カナ……?カナ?ねえってば!!カナっカナ!!!」
私の意識はここで途絶えた。
――――――――――――
ふと目を開けると、そこはベッドの上だった。
普通寝るときはベッドで寝るものだ。それはなんらおかしくない。
問題は、天井に見覚えがないということである。白いレンガに木の柱が通してある。これは明らかに私が昨日まで大学生として生きていた日本のそれではない。
――ではここはどこだ?
周りを見渡す。同じくレンガと木でできた内装、木製のドアと家具たちが目に入る。夢にしては鮮明すぎるし、あの世にしては質素すぎる。あの世を見たことはないが。とすると可能性としては……
コンッコンッ!
「カナ?起きてる??」
突如ドアを叩く音と、私の名前を呼ぶ声が聞こえる。だれだ?なぜ私の名前を知っている?なぜ慣れた雰囲気なのか?と考えるうちに声の主が部屋に入ってきた。
「あら、カナったら起きてたのね!朝ごはんできたから食べましょう! 」
声の主は茶髪に紫の瞳をして、エプロンを身につけた女性だった。既視感はあるがまず間違いなく初対面だ。しかしこの問いかけは、まるで私の母親であるかのようではないか。だが私の記憶の中の母親とは似ても似つかない。
「ねえねえ?ずっと黙ってるけど具合悪いの?大丈夫??」
そう言われてハッとする。なにか返事をせねば。
「……いや、なんでもないよ。えっと、お母さん?」
「なんで疑問符なのよ!それにいつもお母さんじゃなくてママって呼んでるでしょ?もうカナったらねぼすけさんね~ ささっ!ご飯にしましょ!」
「ハハハ…ごめんって。うんそうだねママ、着替えてすぐ降りるよ」
私がそういうと、彼女は満面の笑みで私に笑いかけたあと、先に下に降りていった。私はタンスから適当に漁り出した服に着替えながら考えを巡らせる。
どうやらあの女性が私の母親らしい。やや賭けだったが当たっていたようだ。そして先程思いついた可能性が、より現実味を帯びてきた。
――それはここは21世紀日本とは違った異世界であり、私は最近流行りの異世界転生をしたということ。
さらに言えば、私はこの女性を見たことがあることを思い出した。
……3次元の人間ではなく、2次元のキャラクターとしてだが。
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