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4.サビ

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栞の歌はとても上手かった。渚は栞の後ろ姿をボーッと見ては、時々手拍子をして盛り上げた。

(意外とノリノリだな)

そういえば、こういう風に栞の後ろ姿を見ることがよくある。

高校1年生の時、栞とは同じクラスで席が近くだったことが多かった。栞が視野に入るたびに目で追ってしまう癖はいつ頃ついたのだろうか、栞の視界に入ろうとできるだけ近くにいたのは気づいているのだろうか、栞と少し会話できただけで1日の気分があがるのは俺だけなのか…

「ねぇ、聞いてる?早く次の曲いれてよ」

栞がそう言うまで考え事は収まらなかった。

「あー、ごめん。どーしようかな」

「デュエットやってみる?」

「できるかなぁ…」

「いいじゃん、簡単なやつやろうよ」

2人であれこれと探した結果、無難な選曲に落ち着いた。男女のデュエットの曲だけあって番人受けする恋愛系の曲だった。

サビが近づいた頃、栞の歌声が一瞬、感極まった風に聞こえた。釣られて自分もつい感情が入ってしまう。2人とも歌詞と自分たちを照らし合わせるような気持ちで歌っていた。本当に楽しかった。相手も楽しんでいたのもすぐに分かって嬉しかった。

サビは音程がバラバラだった。でもそんなことどうだってよかった。気にせずに歌い続けた。

点数は80点だった。
点数が表示された画面を気づけばスマホのカメラにおさめていた。

「そんなに高い点数じゃないでしょ笑」

「別にいいんだよ」

「変なの」

「またこようよ」

「歌うの苦手じゃなかったの?笑」

「気が変わった」

2人は満足した顔でカラオケ屋を後にした。
栞と駅で別れた後、渚は電車に揺られながらさっき撮った写真をじーっと見つめていた。
渚にとってその写真は80点以上の価値があった。






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