1 / 4
1.栞と渚
しおりを挟む
「お前ってほんと不器用だよな、渚」
光彦はいつもと同じ口調で俺にそう言った。
光彦とは幼馴染で高校2年の今もずっと仲がいい。いつも頼りない自分を助けてくれる面倒見の良さには本当に頭が上がらない。
「それなりにやってるつもりだよ」
言われ慣れた言葉に、捨て台詞を残して教室を出た。
「おい、今日一緒に帰らないのかよ」
「あー、今日ちょっと寄るとこあるから先帰ってて」
俺はそう言うと、バレないぐらいの早歩きでその場を後にした。
「どーせしおりだろ…」
渚が見えなくなるまで、光彦はその言葉を呟いたりはしなかった。外は少し暑かった。
〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎
栞は違うクラスの女子だった。真面目でしっかり者。背は俺とさほど変わらず、少しドジだが人に流されたりせず、自分を持っている。そして俺と会った時、いつもこう言う。
「あれ、光彦君と一緒じゃないんだ。」
「あいつは、ほっといていいんだよ」
「でも、いっつも2人一緒にいるよね」
「そーか?まぁ面倒見てもらってるって感じかな」
「なにそれ笑」
こんな会話を飽きずにいつもしている。栞とはたまに放課後コソッと会って、ゆっくり歩きながら学校を出て、帰り道の途中にある自販機でジュースを買い、公園でジュースを飲みながら日が暮れるまでダラダラと他愛のない話をしていた。
「ねぇ、今度の日曜日カラオケ行かない?」
「えー、俺歌うの苦手なんだけどなぁ」
「いいじゃん、12時前に駅に集合ね」
「昼も食うの?」
「当たり前でしょ、じゃーね」
そう言うと、栞はすぐに帰ろうとした。口調は落ち着いていたが階段でこけかけた。今さらになって気づいたが、あの時の栞は本当に勇気を出して言ったのだと思う。
(意外とバカだよなー、あいつ)
何も知らない俺はというと、ただひたすらにオレンジ色の空を眺めて、心の中で喜びを噛み締めていた。
光彦はいつもと同じ口調で俺にそう言った。
光彦とは幼馴染で高校2年の今もずっと仲がいい。いつも頼りない自分を助けてくれる面倒見の良さには本当に頭が上がらない。
「それなりにやってるつもりだよ」
言われ慣れた言葉に、捨て台詞を残して教室を出た。
「おい、今日一緒に帰らないのかよ」
「あー、今日ちょっと寄るとこあるから先帰ってて」
俺はそう言うと、バレないぐらいの早歩きでその場を後にした。
「どーせしおりだろ…」
渚が見えなくなるまで、光彦はその言葉を呟いたりはしなかった。外は少し暑かった。
〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎
栞は違うクラスの女子だった。真面目でしっかり者。背は俺とさほど変わらず、少しドジだが人に流されたりせず、自分を持っている。そして俺と会った時、いつもこう言う。
「あれ、光彦君と一緒じゃないんだ。」
「あいつは、ほっといていいんだよ」
「でも、いっつも2人一緒にいるよね」
「そーか?まぁ面倒見てもらってるって感じかな」
「なにそれ笑」
こんな会話を飽きずにいつもしている。栞とはたまに放課後コソッと会って、ゆっくり歩きながら学校を出て、帰り道の途中にある自販機でジュースを買い、公園でジュースを飲みながら日が暮れるまでダラダラと他愛のない話をしていた。
「ねぇ、今度の日曜日カラオケ行かない?」
「えー、俺歌うの苦手なんだけどなぁ」
「いいじゃん、12時前に駅に集合ね」
「昼も食うの?」
「当たり前でしょ、じゃーね」
そう言うと、栞はすぐに帰ろうとした。口調は落ち着いていたが階段でこけかけた。今さらになって気づいたが、あの時の栞は本当に勇気を出して言ったのだと思う。
(意外とバカだよなー、あいつ)
何も知らない俺はというと、ただひたすらにオレンジ色の空を眺めて、心の中で喜びを噛み締めていた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。
真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。
そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが…
7万文字くらいのお話です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
ずぶ濡れで帰ったら置き手紙がありました
宵闇 月
恋愛
雨に降られてずぶ濡れで帰ったら同棲していた彼氏からの置き手紙がありーー
私の何がダメだったの?
ずぶ濡れシリーズ第二弾です。
※ 最後まで書き終えてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる