僕がどこにいても、君をいちばん愛してる

彩柚月

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30 僕がどこにいても、全部の君を愛してる

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 それを見て、れんくんは亀裂の側に行く。そして言った。

 「ねえ陽葵ひまりちゃん。たくさんのマルチバースの中で、どこかの僕達は、きっと一緒に居るよ。どこに居ても、どの僕もきっと、全部の陽葵ひまりをいちばん愛してる。」
 
 「私も。どこに居る私も、全部のれんを愛してる。」

 最後はとびっきりの笑顔で。
 「「さよなら」」

 蓮が亀裂に入った。

 亀裂が閉じた。
 バキッパキパキパキカシン
 何かがハマる音がした。

 瑠奏には聞こえなかったようだ。

 嘘みたいに、周囲は静かになった。
 世界が修復されたということなのだろう。

 「すっごい、究極の遠距離恋愛だね。」
 瑠奏るかなが感心したように言う。

 「ふふ。しばらく恋人は諦めるしかないな。新しく恋愛できる気がしないや。」
 「あら?私と結婚するんじゃなかったの?」
 「あ、そうだ。瑠奏るかなをお嫁に貰うために稼げるようにならなくっちゃ。」
 「期待してますよ。お婿さん。あれ?2人共お嫁さんになるの?どうなの?」

 
 いつものように話せる。大丈夫だ。瑠奏るかなが居てくれるから、私は大丈夫。

 「ねえ瑠奏るかな。今から一眠りして、起きてからで良いんだけど。一緒に行って欲しい所があるんだ。」
 
 「うん?何処に?」
 「れん、多分、自殺じゃないよね。」
 「ああ、なるほど。うん。行こう。」



 それからそれぞれうちに帰って、シャワーをしてから眠った。起きてから瑠奏るかなとLINして、隣家のれんの家に行った。

 れんが、交通事故の前に、お寺の遊具から私を助けてくれたことを伝えた。その時に頭を怪我していたことも。

 おじさんとおばさんは、静かに私の話を聞いてくれた。

 「そうか……れん陽葵ひまりちゃんを守ったのか。」
 「れんは、陽葵ひまりちゃんのことが好きだったのよ。どうしたら仲直りできるかよく悩んでたもの。」
 「知らない間に男になってたんだな。」

 2人は少しだけ笑っていた。そして、
 「教えてくれてありがとう。」
 と、言ってくれた。

 瑠奏るかなと私の部屋に行って、私はたくさん泣いた。
 「よしよし。よく頑張った。」
 と、瑠奏るかなが慰めてくれる。

 
 その後、すぐに、ご両親は、お葬式を延期して、れんの体の司法解剖の手続きをした。その結果、自殺ではなく、昏倒した可能性が示唆された。

 これが両親の慰めになるかどうかはわからない。でも、起きたことは変えられないから。

 この数日がなければわからなかったことがたくさんある。何処かの世界にいるれんもきっと、同じ思いでいる。

 「ねえれん。私、今、笑えているよ。れんも笑えていると良いな。」

 今を受け止めて一生懸命生きていく。


——終わり——

次回、最後にちょっとだけ説明。
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