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しおりを挟むてっきり、明日って言われると思ったのに、意外にも瑠奏は、すぐ行くと返信をしてきた。
遊び場で待ち合わせをして、早目に行って待とうという蓮くんに従って、私達はお寺の遊び場にやってきた。
心無しか、亀裂はさらに大きくなっているような気がした。
待ってる間、手持ち無沙汰になるかと思ったけど、蓮くんが言う。
「ここで、みんなで遊んでいた頃が懐かしいな。」
「うん。あの頃はみんな仲良かったしね。」
「陽葵ちゃん。抱きしめさせて。」
「外だよ!?」
「ダメ?」
「う……わかった。」
そっと、抱きしめくれる蓮くんは、心無しか震えているようだった。
「蓮くん?」
「キスもさせて。」
「え……。」
返事を待つ前に、蓮くんは唇を重ねてきた。
「どうしたの?」
「陽葵、僕が、陽葵を好きだってこと、ずっと忘れないでね。」
「——?うん。」
「蓮くん!?」
突然瑠奏の声がした。
「え!?どうして!?生きてたの!?」
私は慌てて瑠奏に駆け寄って、
「落ち着いて。ちゃんと話すから。ね。」
と、宥めるも、
「蓮くんが逝っちゃって、陽葵が心配で、だからこんな夜中でも走ってきたのに、なんの冗談なの!?こんな悪戯、悪質すぎるよ!」
と、ボロボロ涙を流す瑠奏を見て、私は、
(あっちの瑠奏も言っていた。悪質な悪戯だと思うのは、正常な反応なんだ。やっぱり瑠奏って頭良いんだな。)
と、トンチンカンなことを考えていた。
そして、ようやく落ち着かせて、私の、この数日のことをなるべく詳しく話した。そして
「この人が、あっちの世界から来た蓮くんです。」
と、紹介した。
「……わかった。蓮くんは死んだけどマルチバースが現実で、しかもパラレルで、そこの蓮くんは生きていて、蓮くんはあなたと同じなんだね。」
早口言葉みたいなことを言うので、理解するのに時間がかかった。
「そして、どっちの蓮くんと陽葵も両想いってことだね。」
今度はわかりやすかったので、返事ができた。そして蓮くんも返事をする。
「……うん。」
「私は瑠奏を友達だと思ってるから、嘘は吐きたくない。これが原因で、もう私とは友達で居られないっていうんなら、それでも仕方ないと思ってる。」
「……あーあ。失恋かあ。」
瑠奏は急に明るい声を出して、半タイヤに腰掛けた。
「なんとなくそうかなって思ってた。でも、だからこそ、言わずに終わるのが嫌だったから、告白したの。うん。大丈夫。私も、友達で居たいから、自分の気持ちにけりをつけようとしたんだ。」
瑠奏のその言葉を、どこまで信じて良いのかはわからない。強がっているのかもしれない。
「それで?どうするの?来たって言っても……。お葬式は日曜だよ。早く方針を決めないといけないよね?」
すぐさま、今、しなくてはいけないことを理解できる瑠奏は頭がいい。
「理解が早くて助かりマス。」
と言った私の言葉は置き去りに、蓮はすぐさま瑠奏に答えて、
「僕は戻ろうと思ってる。」
と言った。
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