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しおりを挟む「タイムリミットは明日ってことだね。」
私の声は震えていた。
「一緒に考えよう」
蓮が寄り添ってくれる。
どうしよう。決められるかな。でも決めるしかない。決められなくて、何となくで残ったら、きっと、ずっと後悔する。と、一生懸命考えていると、
「そこまで時間はないかも。」
と、瑠奏が言った。
泣きそうになりながら瑠奏を見ると、どうも手を広げて大きさを体で測っているようだ。
「今、この時間だけでも、少しずつ小さくなってる。人魂は夜に現れる。実際、私達が来てすぐにはなかったし、それは間違いないと思う。正確に測れないから目分量だけど、もしも、この縮小が、見えない時間も進んでいるんだとしたら、明日の夜には現れないかもしれない。」
「え?てことは何?今ここで決めなくちゃいけないの?帰るか残るかを?」
「うん。」
足がガクガク震えている。
むしろ全身が震えている。
どうしよう。どうしたらいい?
帰る?残る?もう、ゆっくり考える時間はない。この機を逃したら帰れない。
「私達は何も言わない。これは陽葵が自分で決めないと。その決断を私達は尊重する。」
今まで見たことのない強い目線で瑠奏が私を見る。蓮くんを見ると、蓮くんも頷いた。
どうしたら良いのかわからない。どうするのが良いのかわからない。でも、どうしたいかなら、
「……ごめん。私、帰る。ね。」
そう、呟いた。
そして、一気に捲し立てる。
「ごめん。蓮くんと一緒に居るって言ったのに、帰れなくなるって思ったら怖くて仕方ないの。私の家族が、あっちの瑠奏が泣いてるのを思ったら、私の大切な人はこの亀裂の向こうに居るんだって、実感が湧いてきたの。ごめん。帰る。」
「瑠奏も、ごめん。こんな風に、協力させて、無責任に混乱させてごめん。会えて、すっごい嬉しかった。心強かったのは瑠奏が、親友の瑠奏が来てくれたから、いつも助けてくれてありがとうって思ってる。」
瑠奏は笑って答えてくれた。
「ううん。私も会えて良かった。私ね、最後に陽葵に嘘をついちゃったんだ。部活だからって、別れたの。あれが最後にならなくて良かった。こっちの陽葵と、あなたは同じ思考なんでしょ?じゃあ、陽葵の本当の気持ちを知ることができたのはあなたのおかげ。元気でね。こっちの陽葵の分も、長生きしてね。」
笑いながら泣いている瑠奏が、瑠奏らしいと心から思った。
そして、私は、亀裂に手を伸ばした。
その手に、蓮くんが手を重ねてきた。
「え?」
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