僕がどこにいても、君をいちばん愛してる

彩柚月

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 しばらくして、瑠奏が口を開いた。
 「……わかった。陽葵は死んだけど陽葵ちゃんは生きていて、陽葵ちゃんは陽葵と同じなんだね。」

 早口言葉みたいなことを言うので、理解するのに時間がかかった。

 「そして、どっちの蓮くんと陽葵も両想いってことだね。」

 今度はわかりやすかったので、返事ができた。そして蓮も返事をする。
 「……うん。」
 「僕は瑠奏を友達だと思ってるから、嘘は吐きたくない。これが原因で、もう僕とは友達で居られないっていうんなら、それでも仕方ないと思ってる。」
 
 「……あーあ。失恋かあ。」
 瑠奏は急に明るい声を出して、姿勢を崩した。そして
 「なんとなくそうかなって思ってた。でも、だからこそ、言わずに終わるのが嫌だったから、告白したの。うん。大丈夫。私も、友達で居たいから、自分の気持ちにけりをつけようとしたんだ。」

 「瑠奏……」
 瑠奏のその言葉を、どこまで信じて良いのかはわからない。強がっている部分もあると思う。それでも、友達で居たいと、そう言ってくれたことが嬉しかった。

 「それで?どうするの?残るって言っても……。陽葵のお家に帰るなら、お葬式は日曜だよ。早く方針を決めないといけないよね?」
 すぐさま、今、しなくてはいけないことを理解できる瑠奏は頭がいい。切り替えることで心の痛みを誤魔化しているのかもしれないけど。でも、その痛みは誰もが自分で消化するしかないものだから、私は何も言わずに、瑠奏の気遣いに感謝した。

 「理解が早くて助かりマス。」
 と言った私の言葉は置き去りに、蓮はすぐさま瑠奏に答えて、
 「僕は全力でサポートするつもりだし、このまま陽葵として生きていけば良いと思う。」
 と言う。瑠奏も
 「うーん……死んだことになってるし、もう死に顔を見せちゃってるから、成り代わるのは難しい、と思う。」
 と、何やら現実的な話をする。
 この2人、頭いいな……。私はこっちの世界に来て、既に1日が経っているのに、具体的なことは何も考えられなかったというのに。

 当人は何も何も考えることができていないのに、2人はどんどん意見を出して、討論している。

 「ご両親にきちんと話せば、わかってくれると思う。」
 と、蓮くん。
 「それはどうかな……」
 と、瑠奏。

 意見が割れているようだ。

 「瑠奏は陽葵に居てほしくないのか!?」
 「そういうことじゃないの!」

 「ちょ、ちょっと待って、喧嘩みたいになるのはやめようよ。私のためにごめんね。」
 慌てて止めに入る。

 「うん。ごめん。今いちばん不安なのは陽葵ちゃんだもんね。」
 と、瑠奏。

 「でもね。わかって欲しい。大切に思えば思うほど、陽葵ちゃんを受け入れるには時間がかかると思うんだ。」
 「うん。説明してくれる?」
 
 「陽葵は死んだんだよ。昨日お通夜で明日お葬式って決まってるの。」
 「だからその葬式を止めれば!」
 蓮くんが割り込む。
 「だから、そうじゃなくて。そもそもお通夜とお葬式っていうのは、死んだ人の為の儀式でもあけど、何より生きてる人のために行う儀式なんだよ。」
 「え。そうなの?」
 「うん。友達はもちろん、お父さんとお母さんも、お通夜で陽葵が居なくなったことをきちんと悲しんで、お葬式できちんと見送ることで、陽葵はもう居なくなったっていう心の整理をするための儀式。既にお通夜は終わってしまった。心の整理を始めているご両親に、今、陽葵ちゃんを会わせたら、心を乱してしまう。それって、良いことかな?」

 「え、でも、じゃあ、整理が終わる前に会いに行ったほうが良いんじゃ、」
 「私なら怒る。ていうか、ここへ来た時、事情を聞く前、湯沸かし器みたいに怒りが湧いた。こんな時にタチの悪い悪戯をするなんて!って。」

 
 
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