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 今、横にいる蓮は、私の知っている蓮ではない。でも、なんとなく、私の知っている蓮も、同じことを考えていたんじゃないかな、と思った。
 「お父さんが余計なこと言ったせいで、私の傷跡を気にしてるんだと思ってた。」
 「嫁にもらうってやつ?」
 「うん。」
 「確かにそれもあったけど、それよりも、僕自身が陽葵を気にするようになったんだ。もう、気がついたら陽葵を見てた。」
 「言葉にするとなんか……。」
 「ストーカーみたいだね。」
 
 あはは、と2人で笑った。蓮は続ける。
 「瑠奏に告白されたことは、そっちの僕は言ったかな?」
 「うん。」
 「瑠奏には悪いけど、告白されて初めて、僕は陽葵が好きなんだって気付いたんだ。」
 「そう、なんだ。」

 「どうしようか考えてたら、タイミング良く陽葵に会えたからさ。僕としては今言わなきゃ後悔する!って、それで、やっと言えたのに、陽葵は瑠奏が僕に告白することを知っていたって聞いて、絶望したんだよね。」
 「え?なんで?」

 「瑠奏が僕のことを好きって知って、応援してたってことでしょ。陽葵は僕のこと何とも思ってないってわかったから。」
 「それは、違うよ!」
 「え?」
 「違うんだよ。私も、少し前から蓮のことが気になり始めてたんだ。でも、瑠奏が蓮のことを好きって知ったのも最近で、なんとなく、気持ちに素直になったらいけない気がして。」
 「ああ、そうか。友情と天秤かけて悩んだのか。あー失敗したなあ。」
 「失敗?」
 「うん。僕あの時、絶望もしたけど、陽葵は瑠奏と僕が付き合うことを望んでるのかと思ったら腹が立ったんだよ。それで、心にもないのに、吹っ切れたから、明日瑠奏にOKするって言ったんだ。」
 「え、心にもなかったの?」
 「うん。なかった。瑠奏のことは嫌いじゃないけど、好きなのは陽葵だからさ。OKするも何も、告白されてすぐに、気になる子がいるって断ってたんだ。」
 「ひど……。」
 「誰がだよ。男の気持ちを弄んだ陽葵が悪い。」
 「いつ弄んだって!?」
 また2人で笑い合った。

 「でも、本当の絶望は、その後にあったんだ。陽葵は死んでしまった。僕が瑠奏と付き合うと信じてたんだろうな。僕は、子供の時と同じ失敗を、またやっちゃったんだ。」
 「……っ!」
 
 蓮は泣いているようだった。
 私も泣けてきた。

 「意地を張らずに、好きだって、伝えれば良かった。」
 「うん。私も、こんな風に、蓮と話していたら良かった。」

 「だいたい同じ会話をしたんだね。てことはやっぱり、そっちの僕も、陽葵ちゃんのこと、すっごい好きだったと思うな。」
 「こっちの陽葵も蓮のこと、あ、呼び捨てはまずいのか。蓮くんのこと好きだったと思うよ。」

 もう叶わない。どうしようもないその現実が、のしかかってくる気がした。それでも、まだ、私は、ここが別世界だと、本当の意味ではわかっていなかったんだ。


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