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7 急展開の絶望
しおりを挟む部屋に戻った陽葵は、ベッドの上で膝を立てて枕を抱きしめる。枕に顔を埋めながら、今日のことを思い返す。
ものすごく、取り返しのつかない失敗をした気がする。蓮のことを好き、かもしれない。
あの時、気になると言われた時、正直に、私も気になると言うべきだったかもしれない。瑠奏に悪いと思ってしまった。瑠奏の想いを知っているのに、裏でコソコソ自分の気持ちを言うことは裏切りだとは思う。でも、それも含めて、蓮が瑠奏にしたように、蓮に待っていてもらえば良かったんじゃ。
せめて、瑠奏の気持ちを聞いた時に、実は私も本当は少し気になっていると、そう、正直に言うべきだった。瑠奏は、どうなっても友達でいたいと言ってくれたのに。
こんなことを考えても、もう遅い。今更、蓮にも瑠奏にも、私も気になっているとは言えない。そんなことをしたら、一番最悪な状態で、関係が壊れてしまうかもしれない。
もう、この気持ちは、押し込めて消してしまうしかない。
そう思いながら、うとうとして、少し寝入ってしまった。
「陽葵!陽葵ったら!」
あれ。お母さんに起こされてる。ご飯かな。
「起きなさい陽葵!」
目覚めた。もうすっかり夜だった。
「蓮くんが亡くなったって!」
「は?」
何が、起きているんだろう。
とりあえずリビングに降りてきたら、何故か瑠奏がうちにいる。蓮の家に押しかけたけど、今は邪魔になるからと、私の家に連れてこられたそうだ。
「夜ごはんの後で、いつもの走り込みに行くって家を出たらしいの。」
泣きながら、瑠奏が捲し立てている。
「車の前に飛び出したんだって。」
「……え?」
わんわん泣きながら瑠奏が喋る。
「蓮くんをはねた車を運転してた人も、その瞬間を見てた人も、蓮くんは自分から車の前に飛び出したように見えたって言うの。」
「……どういうこと?」
瑠奏、そんなに泣いたら干からびちゃうよ。
「蓮くん、自殺かもって。」
「そんなことあるはずがない!」
だって、あの時、ほんの数時間前に、蓮と喋った。吹っ切れたって、仲直りしてまたいっぱい喋ろうって。また月曜にって、手を振って別れた。
「陽葵……?」
「私、私、今日、夕方に、蓮と会って、」
「え?」
「自殺なんて、そんな、」
「何を話したの?教えて陽葵!」
ガチャ
扉を開けてお母さんが入ってきた。
「2人とも、今夜このままお通夜だから、着替えていらっしゃい。瑠奏ちゃん、遅いからお家に送るわね。着替えてからお通夜に出ましょう。」
「はい。お願いします。陽葵、準備ができたら、LINするね。一緒に行ってくれるよね。」
「え、うん。」
お母さんと瑠奏が出て行った。
とりあえず、制服に着替えて、制服で良いんだよね。とか考えながら、部屋に向かうはずが、何故か私は、外へ走っていた。
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