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4 友人の気持ち

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 「で、何の話してたっけ?」
 
 「蓮くんが陽葵を見てるって話でしょ。」
 「そうだ。で?その怪我がどうして?」

 「あの時、綱を引っ張ったのが蓮くんらしくてね。持ち直そうとした時にグイって。」
 「ふうん?」

 「それで、後で保健室に泣きながらやってきてね。俺のせい?って。」
 「へえ。泣きながら……。知らなかったなあ。」

 「だって、陽葵はもう、熱出て寝てたから。」
 「ああ、うん。」
 「先生が大丈夫だから今は帰りなさい。って言うんだけど、蓮くんはおさまらなくて。陽葵のご両親も蓮くんのご両親も迎えにきて、それでも帰ろうしないから、顔にキズが残ったらお嫁に貰ってくれたらいいよって、陽葵のお父さんが言って、蓮くんのお父さんが陽葵ちゃんを貰えるなら役得だなあ。って笑って、蓮くんは、わかったって。」

 「何それ。」
 「だから、最初は傷跡を気にしてたんだと思う。陽葵、退院して復帰登校した時もいっぱい包帯巻いてたし。」
 「それが癖になったってことかあ。」
 「うーん。今はどうなんだろうね。」

 「だって、そんなの子供の頃のことだし。」
 「年数にしたらまだ2年前のことだよ。」
 「うーん?でも、挨拶すらしないしなあ?」
 「陽葵と蓮くん、全く喋らないもんね。」

 「瑠奏は話すことあるの?」
 「うん。ほら、私と蓮くん、小学生の頃から杉の子塾に行ってるでしょ。中学生になると行くのも帰るのも遅くなるから、時々送ってくれたりするんだ。」

 ちょっと驚いた。そんなの、何か性別を感じる。
 「ええ?そんなことしてるの?」
 「帰る時は真っ暗になるから……。」
 「いやっ責めてるんじゃないよ。何か瑠奏が女の子に見えて驚いただけ。」
 「何それ。失礼ね。」
 
 ふと、女の直感が働いた。
 「え、もしかして。」
 「うん。ちょっと格好良いなって思うこともあって、その……」
 「えぇぇええ!?」
 「そんなに驚かないでよ。」

 好き、なんだ。ここで恋愛が絡んでくると思わなかった。いつのまにそんなことに。そういえば、最近の瑠奏は色づいて見える。急に、目の前の親友が、私と泥んこになって走り回っていた瑠奏とは別人のように見えた。

 「へ、へえ……。」
 「あ、でも、まだ何も伝えたりしてるわけじゃないんだ。でも、ほんのちょっとだけ、陽葵と蓮くんが仲良くなくて安心してる部分もあって。ごめんね。」
 「いや、それは別に良いんだけど。もっと早く教えてくれれば良かったのに。」
 「だって、陽葵、蓮くんのこと愚痴ばっかり言ってたじゃない。それに、蓮くんは、陽葵のことが気になるみたいだし……」

 何この可愛い生き物。瑠奏ってこんな可愛かったかな。
 
 「さっきの話だと、気になるのは傷跡なんでしょ?」
 「うーん……。もしも、蓮くんが陽葵のことを好きなんだったら、どうしよう。陽葵は、蓮くんのこと……。」
 「いや、ないないない!」
 「うん。でも、もし、」
 「しつこいよー」
 「聞いてよ。もしも、それで、蓮くんと、どうなっても、私と友達でいてね。」

 「え、それはもちろん。」

 なんとなく、気まずい感じで会話を終えて、昼休みを終えた。

 今日は金曜日。
普段は6限まである授業だが、金曜日だけは5限で終わり。

 放課後、帰宅部の陽葵は、手芸部に顔を出すから、夜 LINするね、という瑠奏と別れて、まだ昼間な空気感がある中をひとりで帰った。

 LINとは、文字でも声でも話せるスマホの便利アプリだ。

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